新部門長に聞く/伊藤忠商事 金属資源・石炭部門
中村 一郎氏/優良案件掘り起こす
伊藤忠商事の金属資源・石炭部門の2006年3月期の連結純利益は前年比倍増の260億円だった。06年度は最大で2倍の400億円を投資して権益基盤を拡充する。中長期の布石を打ちながら、収益目標を一段引き上げたいという中村一郎部門長に方針を聞いた。
―― 05年度の成果は。
「過去最高の利益だった。石炭、鉄鉱石とリサイクルの金属原料、非鉄と3つのセグメントそれぞれいい業績だった。今年度は石炭の値下げが効いて落ちる」
―― ロールストン炭鉱などの数量効果は。
「600万トンの生産だが、原料炭ではないので収益力はさほどではない。(豪鉄鉱石拡張計画)RGP3は始まったばかりで今年度は若干増えるが、効くのは先だ。アルミナは325万トンから340万トンくらいの増産になる。さらに430万トンは最終FSの段階だ」
―― 今期の課題は。
「単年だけではなく、中長期の布石を打つのが最も大きなテーマ。石炭ではアジアを見据えて近距離ソースの開拓。インドネシアで持っているMGMというプロジェクトをテコに次の布石を打とうとしている。中国黒龍江省への投資案件が引き続き課題だ。モンゴルの原料炭のプロジェクトをリオドセと組んでスタディしている。山東省でリオドセと?礦(集団)との(合弁)コークス炉で200万トンのうち100万トン分が今年稼働を始める。鉄鉱石はRGP3を推進する。非鉄はワースレーの拡張があるが、新規案件を検討している」
―― アルミ地金は権益を持っていないが。
「チャンスがあれば考えたいが、今のところ具体的な案件はない」
―― 銅はやらない。
「基本的な興味は常にあるが、優先順位が落ちている。将来にわたってやらないということではない」
―― 他の分野は。
「時間をかけていく。今やれば必ず高買いになる。あとリサイクルだ。収益貢献度は少ないが、需要も重要度もある。去年設立した子会社、アイ・リサイクルを中心に、会社全体で持っているネットワークから出てくる廃棄物の処理とか再生に取り組んでいる」
―― 鉄スクラップの比重が大きい。
「250万トンくらいだが、アジアレベルで需要は強い。定量的な目標はないが、日本からアジア域内への輸出を積極的に伸ばしたい」
―― 投資予定は。
「優良案件次第だ。今年は案件を掘り起こすのが課題。従来的な取り組みに加えて、3、4年後に開花させるプロジェクトがある。一つが環境ビジネス。排出権の取得を部門で取り組もうと石炭部の中に環境新プロジェクト開発室を作った。数量的なターゲットはこれから定める。自ら案件に投資して排出権を取り込んで、顧客に供給する。それと代替エネルギーだ。一つには石炭のガス化、液化。もう一つは太陽光発電。必要になる太陽電池が非鉄のビジネスと重なる。この2つを大きな目玉で取り組む」
―― 長期の目標は。
「これまでに安定的、持続的な収益基盤を作り、最低で基礎収益の目標を150億円としていた。路線は踏襲だが、既にいい数字が足元で出ているので、ハードルを上げたいと思っている。それが50億円なのか100億円なのかはこの1年くらい見極めたい」
―― 金属・石炭資源事業をどう見ているか。
「顧客に対する安定的な資源の供給に貢献したいというのが第一だ。我々の視野は日本はもちろん重要だが、アジア圏だ。商品、地域、相手にする会社もバランスの取れたポートフォリオを持つ必要がある。エネルギーの構造が大きく変わるという認識から、ネットワーク、情報をフルに利用して新しい資源とサービスを供給する。商社のDNAはトレードにある。そこから取れる知識経験を事業に生かさないといけない。トレード、すなわち量に固執したい」
―― 強みと弱みは。
「強みは資産効率がいい。連結ベースの総資産は約1800億円、ROA(資産収益率)も高い水準にある。課題は絶対値を増やすこと。非鉄のアルミナ以外の資源開発が相対的に弱い。ただニッケルとか銅に参入することが正しいのか、太陽光事業とかで補っていくのがいいのか、選択肢はある。案件に柔軟に対応し、結果として効率、絶対値を良くする」(正清 俊夫)
▽中村一郎(なかむら・いちろう)氏=一橋大社会卒後、79年入社。豪州駐在を含めてほぼ一貫して石炭を担当し、02年石炭部長。04年から部門長代行を兼任し、06年4月に現職。55年8月5日生まれ。
発改委、発展する石炭液化プロジェクトに抑制措置
中国は躍進する石炭液化プロジェクトの抑制を始めた。中国国家発展・改革委員会(発改委)は14日、各級の主要部門に対し石炭液化プロジェクトを一時中断するよう要求したと発表した。 対象となるプロジェクトは以下の3種である。(1)年間生産規模が300万トン以下の石炭液化油(CTL)プロジェクト。(2)100万トン以下のメタノールとジメチルエーテル製造プロジェクト。(3)60万トン以下の石炭からのオレフィン製造プロジェクト。 中国の石炭から製造するメタノールやジメチルエーテルなどの石油に代わる製品は、石油価格高騰の影響を受け発展傾向にある。 だが発改委は、石炭から製造する石油製品やオレフィンには依然として技術や工程面に大きなリスクが存在すると見ている。現在建設中の十数万トン規模の石油製品やオレフィン製造装置の多くはスケールメリットが不十分で、技術においても未熟なだけでなく、これらの装置への投資額も巨額であり、非常に大きなリスクを伴うという。(編集NS)(日中グローバル経済通信07月18日)
中国、資源の「大食漢」
海外からのエネルギー調達の動きが加速
中国が、海外からのエネルギー調達の動きを加速させている。石油の輸入先を広げ、LNG(液化天然ガス)の初の輸入にも踏み切った。資源外交にも積極的で、原油高騰の根っこにある、中国のエネルギー大量消費に拍車がかかることに、他国は警戒を強めている。15日からのロシアでのG8サミット(主要国首脳会議)では、北朝鮮をめぐる国際情勢と並んでエネルギーが主要議題になっている。ゲストとして出席する胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席はどちらでも「主役級」の注目を浴びそうだ。
(北京=吉岡桂子)
◆膨らむ石油消費、国外依存5割 広がるパイプライン網
高速道路のわき、湿地の草原のなか、アパートの裏手――。中国東北部、黒竜江省大慶市には、キツツキのような上下運動を繰り返す石油掘削機が数万台も点在する。中国最大の「大慶油田」は、国産原油の約4分の1にあたる年4500万トンを生産する。
59年の発見以来、「工業は大慶に学ぶ」と称賛されてきた優等生油田は、02年までの27年間、年5千万トン余を生産し、中国経済を支えてきた。だが、3年前から減産。日本への輸出もやめ、油田の寿命もとりざたされるようになった。「いつまでもつか? まんじゅうはゆっくり食べれば長くもつんだよ」と市政府関係者はけむに巻く。
90年代後半まで20%台にとどまっていた中国の石油消費に占める輸入の割合は5割前後に達した。中国が検討しているシベリアからの石油輸入。そのパイプラインの最終地は「自力開発」の象徴だった大慶になる予定。ロシアからはガスのパイプラインも計画している。
●5年後は倍増
一方、交渉からわずか3年で完成した石油パイプラインが中国西部にある。中国と中央アジア・カザフスタンを結ぶ。5月にカザフスタンからの輸送が始まった。当初は年間1千万トンを輸入、5年後は倍増させる。
両国が90年代半ばに合意したパイプラインの敷設は、原油の値下がりで一度白紙化されたが、3年前に復活した。「シベリアルートが遅れるなか、需要は予想以上に伸びている。コストも原油高で吸収できるようになった」(潘志平・新疆社会科学院中央アジア研究所長)からだ。
中国政府は06年からの新5カ年計画に、パイプライン網の計画・建設を推進する方針を盛り込んだ。中央アジアのトルクメニスタン、ミャンマー、パキスタンなどからのパイプライン構想も動いている。
●LNG初輸入
カザフルートで中国初のパイプラインを使った原油が輸入された翌日。オーストラリアからは広東省・深セン市の港に、中国が初めて輸入したLNGを載せた専用船が着いた。年370万トン以上のLNGを25年間にわたって同国から輸入する。20年までに30基(百万キロワット級)の原発を建設する中国は、ウラン資源の輸入でも4月、合意した。イランやインドネシアからもLNGを輸入する方針。輸入量は15年後、現時点で世界最大の日本を上回るとの予測もある。
◆援助で囲い込み、外交戦略過熱 他国は警戒
中国は「エネルギーにとりつかれている」(日系石油会社幹部)とあきれられるほどの積極的な資源外交を繰り広げている。今年に入って胡主席や温家宝(ウェンチアパオ)首相がオーストラリア、中東、ロシア、アフリカなどの資源国を立て続けに訪問。エネルギー分野での協力合意を取り付けた。
米エネルギー省によると、30年の中国の石油消費は03年の2・7倍にもなり、世界平均の47・3%増を大きく上回る。天然ガスは5・8倍、石炭は3倍になる見込み。経済が「ガス欠」しないよう、資源を囲い込んでおこうというわけだ。
こうした中国の「資源暴食」に、各国は警戒を強めている。資源確保と援助を組み合わせたやり方には「新植民地主義」との声が上がっている。
中国は「04年の石油の輸入量は世界の6%、消費量は8%。1人当たりの輸入量なら世界平均の3割に過ぎない」(外務省の姜瑜副報道局長)と反発する。一方で、エネルギーの大量消費を前提とした経済成長方式の転換を急いではいる。
10年までの5カ年計画でGDP(国内総生産)の単位あたりエネルギー消費量を05年と比べて2割減らす方針を打ち出した。
胡主席はG8との会合でも、中国が省エネを進める過程で先進国に商機があることも強調し、理解を促す見通しだ。
神華寧煤公司、シェルと石炭間接液化事業を本格スタート
石炭大手の神華寧夏煤業集団有限公司(神華寧煤公司)とシェルの中国現地法人・殻牌天然気・電力開発有限公司はこのほど、寧夏回族自治区で石炭間接液化事業を共同実施していくことで合意、共同研究協定に調印した。神華寧煤公司はシェルの石炭間接液化に関するコア技術を導入、年産約300万トンの石炭液化油(CTL)事業が2007年には本格スタートする見込みである。神華寧煤公司は内モンゴル自治区でも石炭直接液化事業を実施している。同公司の張玉卓・董事長は、全国のCTL年間生産量は2020年までに5000万トンに達すると予測、このうちの3000万トンを神華寧煤公司が提供していくとしている。
シェル、神華寧夏煤業と石炭間接液化事業で提携強化
英蘭系石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェル傘下の「シェル天然ガス・電力開発有限公司」が11日、寧夏回族自治区の銀川市で石炭大手の神華寧夏煤業集団有限公司と、同自治区における石炭間接液化事業で提携を強化することで合意した。同社が同事業に石炭間接液化の中核技術を提供する。 合意によれば、2社は中国政府が承認した13カ所大型石炭拠点の1つである寧東石炭基地で、石油製品と化学工業製品の1日当たりの生産高が7万バレルに達する石炭間接液化工場を建設するという。現時点ではその技術面、商業面での実用性の検討を進めている模様だ。(編集LG)
中国で石炭液化相次ぐ
輸入依存の石油代替
【北京=宮沢徹】中国のエネルギー大手が石炭をガソリンや軽油に加工する石炭液化事業に相次いで参入している。高コストで敬遠されていた石炭液化だが、石油価格高騰で採算が合うようになった。外資の技術を導入して2010年前後から本格生産を始める。計画が順調に進めば、20年には年産約5000万トンと国内石油消費量の約1割に達する見通しだ。国内埋蔵量が豊富な石炭を活用し、輸入依存が高まる石油の消費を抑える。
石炭大手の神華集団(北京)は南アフリカの石油会社サソールの技術を導入し、12年までに陝西省と寧夏回族自治区でそれぞれ年産300万トン強の工場を建設する。投資額は合計50億ドル(約5700億円)。神華は英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルと寧夏で事業化調査をしているほか、内モンゴル自治区でも計画を進めている。
石炭大手の伊泰集団(内モンゴル)は08年に年産16万トンの設備を完成させ、10年に同150万トンへ拡大する。発電会社、大唐国際発電(北京)は日本の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの技術導入で7月に石炭液化の実証試験を始める。
中国紙によると、中国で建設計画が具体化している石炭液化設備の年産能力は合計500万トン近い。各社の中長期計画を合計すると20年には年産5000万トンに拡大する見込みで、総投資額は4000億―5000億元(約5兆8000億―7兆2500億円)になりそうだ。
石炭液化のコストは1バレル当たり約25ドル。価格が同70ドル前後と高水準で推移している原油を原料にガソリンや軽油を生産するよりも、高い競争力が期待できる。各社は今後、原油価格が下がった場合でも、エネルギー調達を多様化させるため石炭液化事業を進めていく考えだ。
中国は今年からの第11次5カ年計画で、安定した経済成長を維持するには資源エネルギーを有効利用する経済構造への転換が不可欠と強調。石炭液化やアルコール系燃料など、石油代替燃料の開発や普及を重点的な政策に掲げた。
中国ではエネルギー需要の拡大で石油の輸入比率は4割を超えた。一方、石炭生産は年間約20億トンと世界最大で、国内埋蔵量は豊富。中国の石炭液化設備が本格稼働すれば、石油の輸入依存度を抑えられそうだ。
中国で石炭液化相次ぐ、輸入依存の石油代替、外資の技術導入。
2010年から本格生産
【北京=宮沢徹】中国のエネルギー大手が石炭をガソリンや軽油に加工する石炭液化事業に相次いで参入している。高コストで敬遠されていた石炭液化だが、石油価格高騰で採算が合うようになった。外資の技術を導入して2010年前後から本格生産を始める。計画が順調に進めば、20年には年産約5千万トンと国内石油消費量の約一割に達する見通しだ。国内埋蔵量が豊富な石炭を活用し、輸入依存が高まる石油の消費を抑える。
石炭大手の神華集団(北京)は南アフリカの石油会社サソールの技術を導入し、一二年までに陝西省と寧夏回族自治区でそれぞれ年産3百万トン強の工場を建設する。投資額は合計50億ドル(約5千7百億円)。神華は英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルと寧夏で事業化調査をしているほか、内モンゴル自治区でも計画を進めている。
石炭大手の伊泰集団(内モンゴル)は08年に年産16万トンの設備を完成させ、10年に同150万トンへ拡大する。発電会社、大唐国際発電(北京)は日本の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの技術導入で七月に石炭液化の実証試験を始める。
中国紙によると、中国で建設計画が具体化している石炭液化設備の年産能力は合計500万トン近い。各社の中長期計画を合計すると20年には年産5千万トンに拡大する見込みで、総投資額は4千億―5千億元(約5兆8千億―7兆2千五百億円)になりそうだ。
石炭液化のコストは一バレル当たり約25ドル。価格が同70ドル前後と高水準で推移している原油を原料にガソリンや軽油を生産するよりも、高い競争力が期待できる。各社は今後、原油価格が下がった場合でも、エネルギー調達を多様化させるため石炭液化事業を進めていく考えだ。
中国は今年からの第十一次五カ年計画で、安定した経済成長を維持するには資源エネルギーを有効利用する経済構造への転換が不可欠と強調。石炭液化やアルコール系燃料など、石油代替燃料の開発や普及を重点的な政策に掲げた。
中国ではエネルギー需要の拡大で石油の輸入比率は四割を超えた。一方、石炭生産は年間約20億トンと世界最大で、国内埋蔵量は豊富。
中国の石炭液化設備が本格稼働すれば、石油の輸入依存度を抑えられそうだ。
▼石炭液化 粉末状の石炭に溶剤を混ぜ、高温・高圧にしてガソリンや軽油を精製する技術。エネルギー換算では六割がガソリンと軽油、四割が重油やガスに転換され、自動車や発電用の燃料として利用できる。
1バレル25ドルという生産コストがネックになってきたが、原油価格の高騰で世界的に事業化の機運が高まってきている。中東地域に埋蔵量が集中する石油とは違い、石炭はアジアや欧州など広い地域に埋蔵されており、エネルギー調達の安定化にもつながるとみられる。
中国国内都市一覧 <日本語・簡体漢字・英語・中国読カナ表示・略称コード>
| ひらがな | 漢字名 | 英語名 | CITY | CODE |
|---|---|---|---|---|
| あもい | 厦門 | XIAMEN | シャ-メン | XMN |
| あんざん | 鞍山 | ANSHAN | アンシャン | AOG |
| いかい | 威海 | WEIHAI | ウェイハイ | WEH |
| いぼう | 濰坊 | WEIFANG | ウェイファン | WEF |
| うるむち | 烏魯木斉 | URUMQI | ウルムチ | URC |
| うんじょう | 運城 | YUNCHENG | ユンチョン | --- |
| えんあん | 延安 | YANAN | イエンアン | ENY |
| えんきち | 延吉 | YANJI | イエンジ | YNJ |
| えんじょう | 塩城 | YANCHENG | イェンチョン | YNZ |
| えんたい | 煙台 | YANTAI | イェンタイ | YNT |
| おんしゅう | 温州 | WENZHOU | ウェンジョウ | WNZ |
| かいこう | 海口 | HAIKOU | ハイコウ | HAK |
| かいなんとう | 海南島 | HAINANDAO | ハイナンダオ | --- |
| かいふう | 開封 | KAIFENG | カイフォン | --- |
| がくよう | 岳陽 | YUEYANG | ユエヤン | --- |
| かしゅがる | 喀什 | KASHI | カーシー | KHG |
| かよくかん | 嘉峪関 | JIAYUGUAN | チァユークワン | JGN |
| ぎこう | 宜興 | YIXING | イーシン | --- |
| ぎしょう | 宜昌 | YICHANG | イーツァン | YIH |
| きつりん | 吉林 | JILIN | チーリン | JIL |
| きゅうかざん | 九華山 | JIUHUASHAN | チウホァシャン | --- |
| きゅうこう | 九江 | JIUJIANG | チウチン | JIU |
| きよう | 貴陽 | GUIYANG | クィヤン | KWE |
| きょくふ | 曲阜 | QUFU | チューフー | --- |
| ぎょくもん | 玉門 | YUMEN | ユイメン | --- |
| きんしゅう | 錦州 | JINZHOU | ジンジョウ | JNZ |
| ぎんせん | 銀川 | YINCHUAN | インチョワン | INC |
| くちゃ | 庫車 | KUCHE | クチャ | KCA |
| けいとくちん | 景徳鎮 | JINGDEZHEN | チントーチェン | JDZ |
| けいりん | 桂林 | GUILIN | グイリン | KWL |
| こうざん | 黄山 | HUANGSHAN | ホワンシャン | TXN |
| こうしゅう | 広州 | GUANGZHOU | グワンジョウ | CAN |
| こうしゅう | 杭州 | HANGZHOU | ハンジョウ | HGH |
| ごうひ | 合肥 | HEFEI | フーフェイ | HFE |
| こうよう | 衡陽 | HENGYANG | ヘンヤン | HNY |
| こんめい | 昆明 | KUNMING | クンミン | KMG |
| さいなん | 済南 | JINAN | ジーナン | TNA |
| さし | 沙市 | SHASHI | シャーシ | SHS |
| さんあ | 三亜 | SANYA | サンヤ | SYX |
| しゃんはい(にじはし) | 上海(虹橋) | SHANGHAI(HONGQIAO) | シャンハイホンチャオ | SHA |
| しゃんはい(ほとう) | 上海(浦東) | SHANGHAI(PUDONG) | シャンハイプートン | PVG |
| じゅうけい | 重慶 | CHONGQING | チョンチン | CKG |
| じゅかい | 珠海 | ZHUHAI | ジュハイ | ZUH |
| しょうこう | 紹興 | SHAOXING | シャオシン | --- |
| じょうしゅう | 常州 | CHANGZHOU | ツァンジョウ | CZX |
| しょうとく | 承徳 | CHENGDE | チョンドゥ | --- |
| じょうはん | 襄樊 | XIANGFAN | シャンファン | XFN |
| じょしゅう | 徐州 | XUZHOU | シューチョウ | XUZ |
| しんせん | 深圳 | SHENZHEN | シェンジェン | SZX |
| しんのうとう | 秦皇島 | QINHUANGDAO | チンホワンダオ | SHP |
| しんよう | 瀋陽(沈陽) | SHENYANG | シェンヤン | SHE |
| せいあん | 西安 | XIAN | シーアン | SIA/XIY |
| せいこうざん | 井岡山 | JINGGANGSHAN | チンカンシャン | --- |
| せいと | 成都 | CHENGDU | チョンドゥ | CTU |
| せいねい | 西寧 | XINING | シーニン | XNN |
| せっかそう | 石家荘 | SHIJIAZHUANG | シーチャツウワン | SJW |
| せんしゅう | 泉州 | QUANZHOU | チュアンチョウ | JJN |
| せんとう(すわとう) | 汕頭 | SHANTOU | スワトー | SWA |
| そしゅう | 蘇州 | SUZHOU | スゥーチョウ | SZV |
| たいあん | 泰安 | TAIAN | タイアン | --- |
| たいけい | 大慶 | DAQING | ターチン | --- |
| たいげん | 太原 | TAIYUAN | タイユアン | TYN |
| だいどう | 大同 | DATONG | タートン | DAT |
| だいり | 大理 | DAILI | ダーリ | DLU |
| だいれん | 大連 | DALIAN | ダーレン | DLC |
| たんこう | 湛江 | ZHANJIANG | チャンチィアン | ZHA |
| ちちはる | 斉斉哈爾 | QIQIHAR | チチハル | NDG |
| ちゃむす | 佳木斯 | JIAMUSI | ジャムス | JMU |
| ちょうかかい | 張家界 | ZHANGJIAJIE | ジャンジャジエ | DYG |
| ちょうけい | 肇慶 | ZHAOQING | ツアオチン | --- |
| ちょうさ | 長沙 | CHANGSHA | チャンシャ | CSX |
| ちょうしゅん | 長春 | CHANGCHUN | チャンチュン | CGQ |
| ちんたお | 青島 | QINGDAO | チンタオ | TAO |
| ていしゅう | 鄭州 | ZHENGZHOU | チョンチョウ | CGO |
| てんしん | 天津 | TIANJIN | テンチン> | TSN |
| とるふぁん | 吐魯番 | TULUFAN | トルファン | --- |
| とんけい | 屯渓 | TUNXI | トゥンチィ | TXN |
| とんこう | 敦煌 | DUNHUANG | トゥェンホゥァン | DNH |
| なんきん | 南京 | NANJING | ナンチン | NKG |
| なんしょう | 南昌 | NANCHANG | ナンツァン | KHN |
| なんつう | 南通 | NANTONG | ナントン | NTG |
| なんねい | 南寧 | NANNING | ナンニン | NNG |
| ねいは | 寧波 | NINGBO | ニンポー | NGB |
| ばあんざん | 馬鞍山 | MAANSHAN | マアンサン | --- |
| ぱおとう | 包頭 | BAOTOU | パオトウ | BAV |
| はみ | 哈密 | HAMI | ハミ | --- |
| はるぴん | 哈爾浜 | HARBIN | ハルビン | HRB |
| ぶいさん | 武夷山 | WUYISHAN | ウーイーシャン | WUS |
| ぶかん | 武漢 | WUHAN | ウーハン | WUH |
| ふくしゅう | 福州 | FUZHOU | フウチョウ | FOC |
| ぶこ | 蕪湖 | WUHU | ウーホウ | WHU |
| ぶじゅん | 撫順 | FUSHUN | フーシュン | --- |
| ぶっざん | 仏山 | FOSHAN | ホウシャン | --- |
| ぶとうざん | 武当山 | WODANGSHAN | ウタンシャン | --- |
| ふふほと | 呼和浩特 | HOHHOT | フホハォート | HET |
| ぺきん | 北京 | BEIJING | ペイジン | BJS/PEK |
| ほうでん | 和田 | HETIAN | ホータン | HTN |
| ぼたんこう | 牡丹江 | MUDANJIANG | ムータンジャン | MDG |
| むしゃく | 無錫 | WUXI | ウーシー | WUX |
| ようしゅう | 揚州 | YANGZHOU | ヤンチョウ | --- |
| らくざん | 楽山 | LESHAN | ローシャン | --- |
| らくよう | 洛陽 | LUOYANG | ルォヤン | LYA |
| らさ | 拉薩 | LHASA | ラサ | LXA |
| らんしゅう | 蘭州 | LANZHOU | ランジョウ | LHW |
| りこう | 漓江 | LIJIANG | リジャン | --- |
| りゅうしゅう | 柳州 | LIUZHOU | リウジョウ | LZH |
| りんぎ | 臨沂 | LINYI | リンイ | LYI |
| りんふん | 臨汾 | LINFEN | リンフン | --- |
| れいこう | 麗江 | LIJIANG | リジャン | LJG |
| れんうんこう | 連雲港 | LIANYUNGANG | レンユンカン | LYG |
| ろざん | 廬山 | LUSHAN | ルゥシャン | LUZ |
| わいあん | 淮安 | HUAIAN | ホワイアン | --- |
| http://www.bigchina.jp/ngo/schedule/3code.htm | ||||
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電力中央研究所、液化DME利用で石炭水分脱水プロセスを考案
電力中央研究所は高含水石炭の水を液化したジメチルエーテル(DME)を使い室温で脱水するプロセスを考案した。ベンチスケールの実証で53%の水を含む褐炭の水分を4%まで低減することに成功。今後はDME開発を進める企業などと共同で連続石炭脱水装置を製作した上で、液化DMEを再利用して石炭を脱水する試験に乗り出す。
DMEは天然ガスや石炭などから合成ガス化して生産するクリーン燃料。性状は液化石油ガス(LPG)と似ており、中国では燃料用としての実用プラントが各地に建設されている。国内でも三菱ガス化学グループが新潟に実用プラントを設置する予定のほか、JFEエンジニアリンググループは直接法によるパイロットプラントの運転を終了し、実用フェーズに入ろうとしている。
このDME実用化の一環として、電中研は石炭の水分をDMEで抜くプロセスを開発した。DMEは常温常圧下ではガス状で5―6気圧に昇圧すると液化。液化DMEは水を吸う働きがある。この作用を利用し、高石炭中の水分を抜き取る。
従来の石炭の脱水ではエネルギー消費が大きい。これに対し、加熱した有機溶剤で石炭中の水分を置換する溶剤置換法は、水の溶解量が多い有機溶剤を使用することで非常に有望な省エネ手法となることを把握した。
5000種の有機溶剤からDMEを有力な置換剤として選択。加熱した液化DMEで石炭中の水分を置換する実証を行った。液化DMEに石炭をそのまま投入。石炭とDMEが接触する物理作用により石炭中の水分が抜け、石炭と水・DMEの混合液体ができる。
石炭中の水分はDMEの量でコントロールする。DMEの圧力を4気圧以下にするとDMEはガス状になり、水と分離する。DMEガスは再び液化して再利用できる。
今後は実用化に向けた連続試験を計画。このためDMEの実用化を進める企業などとの実証も目指している。石炭は化石燃料の中で最も多くの賦存量がある。特に安価で賦存量が豊富な褐炭や亜瀝青炭は高水分炭。このため、同システムは日本で微粉炭火力を利用していくための低コストでエネルギー消費の少ない水分除去法として、DME普及との両面から実用化への価値は大きい。
05年度海外プラント成約33%増の257億ドルに
大型案件好調/経産省調べ
経済産業省は、海外プラント・エンジニアリングの05年度成約実績をまとめた。総額は前年度比33・0%増の257億7千万ドル、件数では同12・6%減の927件となった。総額は4年連続の増加、件数は6年ぶりに減少に転じた。地域別では中東が51・9%、アジアが30・9%、西欧が5・6%で上位を占めた。中東地域ではカタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、アジア地域ではベトナム、マレーシア、中国での成約が多かった。
機種別ではエネルギープラント(100億1千万ドル)、交通インフラ(53億7千万ドル)、発電プラント(52億6千万ドル)が上位3機種となった。特に、エネルギープラントはカタールの液化天然ガス(LNG)プラントやサウジアラビアの石油精製プラントといった成約額が10億ドル以上の超大型案件を3件含んでおり、前年度比で58・1%増となるなど好調だった。
超大型案件は発電プラントでマレーシアの石炭火力発電プラント、交通インフラではアラブ首長国連邦の新交通システムがあり、エネルギープラントの3件と合わせて05年度は計5件だった。また、成約額1億ドル以上の大型案件は同60・7%増の198億1千万ドルで、件数は38件。一方、成約額1億ドル未満の中型・小型案件は同13%減の59億6千万ドル、件数は889件で、成約額・件数とも減少した。
05年度の海外プラント・エンジ成約実績、過去最高の258億ドルに
経済産業省製造産業局国際プラント推進室がまとめた「2005年度の海外プラント・エンジニアリング成約実績」によると、成約実績総額はこれまでの過去最高だった九六年を大きく上回る258億ドルに達した。成約件数は逆に13%減となっており、プロジェクト規模の大型化を裏付けた。中東でのガス関連、石油精製、石油化学プラントの成約が好調で、交通インフラでも大型案件を受注した。アジア、北米での発電プラントも総額増加に貢献した。
総額は前年度比33・0%増と大きく伸び、調査以来、初めて2百億ドルに乗せた。超大型案件(十億ドル以上)が5件あり、全体の3分の1を占めている。件数は927件(同12.6%減)。
地域別では中東、中南米、大洋州などで成約額が増加し、アジア、アフリカ、北米で減少した。アジアを抜き首位となった中東は、カタールの液化天然ガス(LNG)プラント二件、サウジアラビアの石油精製プラントの超大型案件、エネルギー、交通インフラ、化学の大型案件(1億ドル以上)により、前年度比2.6倍の134ドルとなった。
アジアは、超大型案件となったマレーシアの石炭火力発電をはじめ規模の大型化はあったが、化学、情報通信以外で減少したため、全体としては2割減の80億ドルにとどまった。前年度倍増したアフリカは4割減、西欧、中南米は着実に成約額を増やした。
機種別ではエネルギー、交通インフラ、化学、生活関連・環境、情報通信で成約額が増加し、一般プラント、鉄鋼、発電で減少した。成約額上位三機種はエネルギー(百億ドル)、交通インフラ(54億ドル)、発電(53億ドル)。化学プラントは26億ドルで44%増となった。
エネルギーではカタールLNG2件、サウジ石油精製の計3件の超大型案件のほか、大型案件にはサウジ天然ガス液回収、イエメンLNG、ベトナム石油精製、インドLNG受入基地、インドネシア・ガスパイプライン2件があった。全体では前年比58%増。
発電はほぼ前年並みの成約額。マレーシアの超大型案件のほか、メキシコ、オーストラリア、ベトナム、タイ2件、中国で大型案件の成約があった。
化学は中東で成約額が大きく伸びた。サウジのメタノール、石化2件、イランの石化、化学繊維、シンガポールの石化が大型案件となった。
業種別では、商社(100億ドル)、エンジ専業(94億ドル)、メーカー(54億ドル)が上位3業種。商社、エンジ専業は大幅に成約額を伸ばした。
海外調達比率は51%で年度ベースでは過去最高となった
中国、初のLNG基地稼働、輸入を本格化――10ヵ所以上整備
【深圳=菅原透】中国で初めての液化天然ガス(LNG)の輸入受け入れ基地が28日、広東省深?で稼働した。発電用や都市ガスなど向けに年370万トンのLNGを広東省内や隣接する香港に供給する。今後、中国は各地にLNG基地を整備し輸入を本格化していく計画だ。
1000億円投資
稼働したのは中国海洋石油総公司(CNOOC)や英BPなどが設立した「広東大鵬液化天然気」。16万立方メートルの容量を持つ3基のLNGタンクや四基の発電所、広東省内に送り込む全長約380キロメートルのパイプラインなど、第一期プロジェクトとして71億元(約1千億円)を投じた。
同基地ではオーストラリアから今後25年間、年約370万トンのLNGを輸入。ガス化して深?や広州など広東省内の主要都市や香港に供給する。供給量の65%を発電用に、残りを都市ガスとして利用する。
28日午前に開いた稼働式典には温家宝首相のほか、LNG輸入元である豪州のハワード首相も出席した。ハワード首相は「中国へのLNGの供給開始を歓迎する」と表明。温家宝首相は「豪州とのエネルギー協力を発展させていきたい」と抱負を述べた。
中国では経済成長と共にエネルギー消費量が急増している。エネルギー源は石炭や石油が主力で、エネルギー消費量に占める天然ガスの比率は約3%にすぎない。中国政府は大気汚染物質や温暖化ガスの排出量を抑える天然ガスを今後、積極活用し、エネルギー消費量に占める割合も今後5年内に6―8%に引き上げる方針を打ち出している。
争奪戦激しく
このため、国内では稼働した深に加え、福建省や山東省、上海市など10カ所以上でLNGの輸入受け入れ基地を整備する計画。中国石油天然気(ペトロチャイナ)、中国石油化工(シノペック)も事業参入し、豪州のほか、イランやインドネシアなどからLNGを調達する見込み。中国のLNG輸入量は2020年には世界最大規模の年4千5百万―6千万トンに達する見通しだ。
LNGは原油高の影響もあって各国で利用が進んでいるがエネルギー消費大国の中国が輸入を本格的に始めたことで世界需要の約4割を占める日本や、需要を急増させる米国などとのLNG争奪戦も激しくなりそうだ。
終わらない話-オピニオン-日本に欠ける地球規模の視点
丹羽 宇一郎[伊藤忠商事会長]
先頃、政府は「新・国家エネルギー戦略」をまとめた。原油価格の高止まりが続くなど、資源問題がクローズアップされていることを受け、石油への依存度を下げる、資源開発に乗り出す企業の支援を強化する、といった方針を打ち出した。
中国を筆頭とする新興国の経済発展を背景に、資源の需給逼迫が続いている。日本が安定的にエネルギーを確保していくためにも国家戦略は必要だ。重要なテーマであることに疑問を挟むつもりはない。
ただ、資源問題の議論では、大切な視点が置き去りにされていると思うことがある。それは地球規模でどうエネルギーを有効活用していくかという視点だ。我々は自国の都合ばかりを並べるのではなく、世界の中で日本が果たせる役割をもっと考えるべきではないか。
日本は技術で世界貢献を
一般論として資源の確保には、対価となる資金、エネルギーに関する技術、外交のバックグラウンドとなる軍事力の3つが必要とされる。すべてを兼ね備えているのは米国くらいだ。最近、積極的に資源確保に動いている中国には米国ほどの力はない。
日本はと言えば、まずカネはある。技術もそこそこだが、エネルギーに関する探査や掘削といった技術は、石油メジャーを有する米英などに比べ、やや劣るといったところか。したがって、当面はカネの面でしか競争力を発揮できないのが現状だが、技術を磨くことで世界に貢献できる。
石炭を例に挙げよう。可採埋蔵量が40年と言われる石油に対して、石炭は約230年分もあるという。仮に日本がその石炭を液化するなどクリーンに使える技術を中国などの海外で生かすことができれば、効率的な資源の活用が進むだろう。省エネ技術でも貢献の余地は大きい。1970年代以降、2度の石油ショックで苦しんだ教訓を生かし、日本の省エネ技術は大きく進んだ。燃料電池、太陽光発電など新エネルギーの開発についても先行グループと言える。資源の囲い込み競争に加わるだけでなく、より長期的な視野に立って、世界をリードしていくべきではないか。
地球規模の視点がより重要になっているのは、食料や水についても同じだ。最近、ある漁業関係者からこんな話を聞いた。技術が大幅に上がった魚群探知機とヘリコプターを駆使し、巨大な底引き網で魚を根こそぎ捕っているという。稚魚までもだ。「将来を考えるといけないことだと思いつつも、自分が捕らなければ、ほかの人が捕ると思うとやめられない」という。乱獲に歯止めがかからなければ、我々が口にできる魚は、やがていなくなってしまう。やはり一国の利害を超えた取り決めが必要になっている。
牛肉1kgに20トンの水
水については、もっと真剣に考えなければならない。地球上の水の約97%は海水であり、淡水は約3%しかない。これには氷山の氷なども含まれており、実際に人間が利用できる水はほんのわずかだ。
水の豊かな日本で暮らしていると、実感はあまりわかないだろうが、日本人は決して世界の水問題と無縁ではない。我々が日頃口にする食べ物を作るのに、どれだけの水が使われているかご存じだろうか。
輸入に依存している小麦であれば、収穫までに重量ベースで2000倍の水が必要とされる。牛肉ならもっと多く2万倍にもなる。海外産の牛肉を1kg買うことは、それだけで20トンの水を輸入しているに等しい。「外国で起きている水不足は他人事」では済まされないのだ。
エネルギー、食料、水と、あらゆるもので世界がつながっている以上、日本だけが繁栄を謳歌するということはあり得ない。地球規模の平和と協調が大きな課題になっていることを、今こそ強く認識する必要がある。地球温暖化は本当に二酸化炭素の排出が原因なのか。科学的にはいまだに実証されていないとの見方もある。人間の力で、自然をそこまで変えることができるのかとの疑問もよぎる。
NEDO、石炭の高度利用に弾み、海外社への技術供与など機に
原油価格の高止まりを背景に、石炭の高度利用技術が脚光を浴びている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は液化、ガス化、高効率燃焼技術など多岐にわたるテーマで開発を進めており、一部の技術は実用化に向けて急展開している。石炭は中国や東南アジアでは今後も重要な一次エネルギー源とみられており、日本はこれらの国に技術協力することで、エネルギーセキュリティーの安定化や地球環境に貢献することができる。また、日本の機械・エンジニアリング会社への事業機会提供にもつながりそうだ。
NEDOは中国の大唐国際発電(北京)、新〓鉱業集団(山東省)と今年四月に瀝青炭液化技術(NEDOL)を供与する契約を締結した。NEDOLは、サンシャイン計画の一環としてNEDOと民間十九社が共同開発した技術で、日量150トンプラントの実証が完了している。今回の契約は、中国の煤炭研究総院に設置した0.1トン級プラントで中国産石炭を用いた実証実験を行い、そのデータを中国二社に提供するというもの。
中国2社は2010年をめどに3千トン級の石炭液化プラントを建設する計画で、1千億円規模の事業となる。その受注にはNEDOL開発事業に参加し、技術パッケージを有する千代田化工建設、東洋エンジニアリングが有力視される。
また、NEDOは、水分を多く含む低品位炭である褐炭の液化技術(BCL)も有している。資源エネルギー庁は現在、インドネシア政府と同技術供与に関し交渉に入っている。BCLに関しては神戸製鋼所が技術パッケージを有している。
NEDOL、BCLとも開発に20年前後を費やし、00-02年までに技術を完成させていたが、実用化のめどは立っていなかった。原油価格が60ドル超で推移する状況となって陽の目を見たといえる。汚染物質の排出が少ない循環型常圧流動床ボイラー(CFBC)なども、アジア諸国への普及が現実的な課題となっている。
NEDOは現在、電源開発と多目的石炭ガス製造技術(EAGLE)、神戸製鋼所とハイパーコール利用高効率燃焼技術の開発に取り組んでいる。両技術とも環境に優しく、高効率で石炭を利用できる次世代技術として期待が大きい。
EAGLEは高効率で合成ガス(水素、一酸化炭素)を製造する技術で、発電に応用すれば30%のCO2削減が実現できるほか、化学プロセスへも応用できる。ハイパーコールは石炭から灰分を溶剤で除去した超低灰分石炭で、複合発電システム燃料として利用できるほか、高騰している製鉄原料炭(強粘結炭)の一部代替用途も見込まれる。
日本の04年石炭消費量は98年比で2割増加しており、日本にとっても利用技術を確立させることの必要性は高い。エネルギー需要が増大しているアジア諸国に石炭利用技術を普及させることができれば、双方に大きなメリットをもたらすことができる。
九州電と西部ガス、燃料の安定調達やコスト低減
原油や液化天然ガス(LNG)などの需要が世界的に高まる中、九州電力と西部ガスは燃料の安定調達やコスト低減に取り組んでいる。九州電は安価な燃料の導入や輸送船の確保を推進。一方、西部ガスはこのほどロシアのサハリン2からLNGの調達を決めた。燃料の調達先を分散して輸送工程の管理を強化することで、燃料調達のリスクを軽減する考えだ。(西部・敷田寛明)
【収益を圧迫】
原油価格は高止まりを続けているほか、LNGや石炭は中国など新興工業国で需要が急増し、価格は上昇傾向にある。このため原子力による発電比率が高い九州電でも影響が出始めている。05年度の燃料費は前年度比25・5%増の1797億円となり収益を圧迫した。
そこで九州電は燃料コストの低減に取り組んでいる。例えば苓北発電所(熊本県苓北町)など火力発電所では亜歴青炭と呼ばれる安価な石炭を試験導入している。亜歴青炭は通常使用する歴青炭に比べて熱量は低いものの、コストを抑制できる利点があり「評価が良ければ本格的に導入する」(九州電)という。
【輸送船確保に力】
安定調達の点では輸送船の確保に力を注いでいる。東京電力と共同でLNG船を建造・保有することを決めており、07年5月に着工して09年度には完成する予定だ。また、海外炭の輸送用として自社専用船を2隻確保。05年度には1隻就航しており、残る1隻も06年度中に就航予定だ。「自社で輸送をコントロールできて安定供給につながる」(同)と話す。
一方の西部ガスでは産業向けの需要が急増し、LNGの確保が喫緊の課題となっている。同社はマレーシアと北九州エル・エヌ・ジー(北エル、北九州市戸畑区)から調達しており、特に最近はコストの低い北エルからの調達量が増えている。だが北エルの親会社は競合相手である九州電であり、経営的なリスクを避けるために調達先の分散化を迫られていた。
【新たな調達先】
こうした中、新たな調達先として浮上したのがサハリン2だ。5月に事業主体であるサハリン・エナジー・インベストメント(ユジノサハリンスク市)と2010年から18年間にわたる売買契約を締結。調達量は年間8500トンと少ないものの、今回の締結で将来の需要増に対応できる道を開いた。さらに調達先の分散化による価格交渉力の向上も期待できる。
原油高騰は投機的な要因もあるが、新興国の興隆を考えると今後もエネルギーの需要が高まるのは必至。エネルギー会社にとっては燃料を確保し、安定調達する重要性が一段と高まっている。
神華集団が石炭石油化事業 07年にはテスト生産へ
中国最大の石炭企業である神華集団有限責任公司はこのほど、石炭石油化事業を進めていることを明らかにした。2007年に同事業はテスト生産に入る見通しだ。
具体的には、同社は傘下のモンゴル石炭液化事業の中核設備である「石炭液化化学反応機」の取り付け工事を17日に完了した。「石炭液化化学反応機」は石炭を石油に変える装置だ。同装置の取り付けに伴い、同事業は大きく進展したことを示す。(編集LG)
NEDO、大唐国際発電らと石炭液化油の共同実験
日本の経済産業省は独立行政法人、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じて中国をはじめとする途上国に石炭液化技術の普及を図り、これら諸国とエネルギー分野での協力を行っていく。7月にはNEDOと大唐国際発電(北京市)、新ブン鉱務局(山東省)が共同で実験を行い、2010年までに1日3000トンを処理できる工場を稼動させていく。日本企業が同工場に設備を提供し、NEDOに技術使用料が支払われるものとみられる。中国のエネルギーは現在のところ7割が石炭、2020年までに石油需要の7~10%を石炭液化油で代替していく計画である。
無触媒石炭乾留ガス改質技術
中国産炭地で事業化有望・・・・・・・NEDO調査
経済産業省が、クリーン・コール・テクノロジー推進事業の一環として研究開発を進めている無触媒石炭乾留ガス改質技術。同技術を中国で操業中の多くのコークス炉に導入すると、基礎化学品やメタノール、代替燃料油を高効率で製造でき、併せて環境対策が図れることが明らかになった。同省は、一方で中国に石炭液化技術の供与を決め、今夏から実証実験に入るが、「コークス大国」の同国では、導入までに長期間かかる液化よりも、コークス炉ガス(COG)を利用する方がより実際的。同国内で計画中の石炭ガス化に次ぐコスト競争力が確認されており、エネルギー不足を解消する近道とみられる。
無触媒石炭乾留ガス改質技術は、同省・新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が石炭の高度利用技術であるクリーン・コール・テクノロジー事業として推進しているもの。同プラントを中国に設置するケースのほか、COG処理方法が異なる北九州など国内に設置し、エネルギー・原材料を供給する「新複合型コンビナート」を形成するケースを想定した事業化可能性調査を行っていた。
中国は、急激な経済成長にともなってエネルギー不足が表面化する一方、省エネや環境対策の遅れが大きな課題。先月開かれた日中省エネルギー・環境フォーラムでも、わが国の技術支援がクローズアップされた。
NEDOの調査では、中国のコークス企業はCOGを大気中に放出するプロセスを採用しているケースが大半で、環境面でも課題を抱えている。このため環境対策とエネルギー、基礎化学品の供給を同時にカバーする技術は大きな可能性があるという。
バブコック日立などに委託した調査では、山西省のコークス専業メーカーや内蒙古の大規模な石炭化工基地などを対象に、無触媒石炭乾留ガス改質プロセスを導入するビジネスモデルが成り立つことが分かった。コークス炉から副生するCOGを原料にメタノールや基礎化学品、ガス・ツー・リキッド(GTL)、ジメチルエーテル(DME)などに転換。ガソリン、軽油などの代替燃料油の事業化も見込める。
NEDOによると、中国では、政府の燃料政策にもよるがメタノールとDMEが有望であり、産炭地に立地した場合、内蒙古の石炭ガス化に次ぐ競争力を有しているという。ガス化の後、さらに高度な技術とコストアップが予想される液化に比べ、有利で実際的なプロセスとして期待される。
無触媒石炭乾留ガス改質技術 コークス炉から発生するタール分を含む高温の石炭乾留ガスを、その顕熱を有効利用して改質し、メタノールなどの基礎化学品、GTLやDMEなどの液体燃料に工業的に転換できる合成ガスを製造するプロセス。従来プロセスは、副生される石炭乾留ガスを水によって急冷しタール分を除いて回収しており、顕熱は棄てられていた。
NEDOは、石炭乾留ガスを原料にして、ガス中の水素と一酸化炭素を改質前に比べて二倍以上に高める研究開発を推進中。今年度から四年程度かけて、通常のコークス炉の十分の一の実ガスを用いる試験装置を設置、省エネや二酸化炭素削減効果などを確認するとともに、反応炉形式や運転条件を確立、実証機計画の策定を図る計画。
新・国家エネルギー戦略と資源外交(社説)
2030年まで見据えた日本のエネルギー施策の骨格といえる「新・国家エネルギー戦略」が5月末にまとまった。注目すべきは、資源確保戦略を明記した点にある。この戦略では原子力発電を中核に据え、省エネルギー対策、運輸部門の石油依存度の低減策、新エネルギーの技術革新・普及などを進め、現在の石油依存度約50%を2030年には40%を下回る水準を目指すとしている。ただ欧米、中国などが資源確保に精力的に動くなか、資源国の思惑が絡み、原油の高騰や地政学的リスクの高まりなどで、将来的に日本にとって安定確保が難しくなる可能性もある。またウランなどの資源確保についても、今後のアジアなどでの原子力発電の普及によっては同様なことが懸念される。
同戦略で取り上げている自主開発油田の比率を2001年の約15%から2030年には引取量ベースで四〇%程度に引き上げることも重要であるが、海外における石油資源開発を通じて資源国との総合的関係強化を図り、エネルギー安全保障の確立に不可欠である世界全体のエネルギー市場の安定化に向けた役割、貢献が求められている。
日本のエネルギー事情をみると、一次エネルギーに占める石油依存度は、第一次オイルショック直後の1973年には77.4%だったが、石油代替エネルギーとして、石炭や液化天然ガス(LNG)、原子力の開発を進め、その依存度を徐々に下げてきた。現在では約50%だが、10年近く依存度の低下は進んでいないのが実情だ。また中東依存度は、1972年ごろの77.5%に対し、2005年度は約90%まで拡大しており、地政学的リスクは高まっている。
原油相場は、2001年9月11日の米国同時多発テロ、アフガン戦争、イラク戦争やその後のテロやハリケーンなどの災害などにより高騰し、現在も高止まりとなっている。また、ここ数年、石油メジャーのほか経済成長が著しい中国が資源外交を積極化し、イラン、サウジアラビア、ロシアなどで油田、ガス田開発の利権獲得に動いており、このことも高騰の要因の一つといわれる。
こうしたなか、日本が新戦略をベースに国際的な資源獲得競争に積極的に参入することになるが、ただ単に利権獲得の競争に走るのではなく、まずは緊密な関係を外交努力で築くべきだろう。そのためには政府開発援助(ODA)の弾力的運用や環境、エネルギーの最先端技術の提供なども求められよう。自主開発資源の取り組みは、世界のエネルギー市場安定化に貢献するという目的意識をもって進めるべきではないだろうか。
原油高と向きあう(下)省資源で「安保」――アジア需要抑制カギ
原油埋蔵量でサウジアラビアに次ぐ世界二位のイラン。資源開発大手の国際石油開発との共同プロジェクト、アザデガン油田開発が宙に浮いている。石油資源を盾にした核開発問題が国際社会の脅威となっているからだ。それでもイランでは、世界の石油の8%を消費する中国が新油田を調査、権益確保に動く。
熱帯びる争奪戦
原油高で高まる資源ナショナリズム、そして資源争奪戦も熱を帯びる。2030年の世界のエネルギー需要予測は現在の約1.5倍。増加分の半分近くをアジア・中国が占める。この地域の需要をどれだけ抑えられるかが、世界が原油高と共生するためのカギを握る。「日本はエネルギー活用と安全保障を単独ではなく、アジア一体で考えるべきだ」(日本エネルギー経済研究所の内藤正久理事長)
新日本石油の製油所では、重油・軽油を満載したタンカーが中国に向けて出航する光景が珍しくなくなった。余剰能力を使い、中国の石油大手から原油精製を受託する事業が3年目を迎える。中部電力は韓国ガス公社と需要変動に応じて液化天然ガス(LNG)を相互融通し、民間レベルの「広域安保」が広がり始めた。
東シナ海のガス田開発問題の会議に出席するため、小平信因資源エネルギー庁長官らが中国を訪れた3月6日。同庁の谷明人石炭課長らも北京入りし、熱烈な歓迎を受けた。目的は中国に対する炭鉱技術支援の協議だ。
「中国の石油消費を抑制するには、同国に豊富な石炭の生産性向上が不可欠」。こう見た経済産業省は東シナ海や靖国参拝でつばせり合いを繰り広げる相手とも、エネルギー問題では協調を模索する。今夏から中国企業と石炭からガソリンや軽油を精製する事業の実証実験にも取り組む。
資源獲得競争の緩和には、日本が培った省エネ技術・政策の輸出も有効な手段となる。今年度から、最も優れた省エネ製品を標準とする「トップランナー方式」などの制度や普及ノウハウをアジアに提供する。
「省エネなどを通じ社会の仕組みを変えるきっかけにもなる。原油高のプラス面に目を向けていい」。丸紅経済研究所の柴田明夫所長はこう指摘する。
高まる還流効果
05年の産油国の石油収入は6千億ドル(約68兆円)以上。物価上昇を考慮した実質価値で見て、第二次石油危機時にほぼ匹敵する膨大な富が流れ込む。日本の証券会社もオイルマネーを取り込もうと、公的資金を運用する各国の政府機関に足を運ぶ。サウジアラビア通貨庁は株式や債券など対外証券投資の残高が05年末で980億ドル(約11兆円)と、3年前の約8倍に膨らんだ。
1970年代の第一次オイルブーム時に、産油国は米国債や欧米銀行への貯蓄に資金を集中させたが、今回は「自国の債務返済や経済開発から、日本を含む先進国の証券市場、不動産まで分散している」(シンクタンクの国際開発センターの畑中美樹研究員)。オイルマネーは世界の市場や企業に還流し、それぞれの経済の血となっている。
足元では米の景気不安などから世界的に投資資金の動きが鈍り、オイルマネー停滞の可能性もある。だが、かつてオイルマネーが原油価格下落に伴って急速に収縮し、国際金融市場を揺さぶった激しさは、今はない
イランの核開発、ナイジェリアの政情不安など、原油高をあおる不安要素は尽きない。原油高が続くとすれば、日本は資源獲得に走るのではなく、省資源で世界の安定化に貢献する道もある。
環境性能で先頭を走る自動車、家電、プラント――。こうした産業にオイルマネーが染み込み成長を促せば、日本からアジア、世界に省エネの波が広がるきっかけになる。グローバルな省資源の好循環を生み出す。そんな息の長い取り組みが現実的かもしれない。
この連載は松尾博文、高橋徹、西村博之、鈴木大祐が担当しました。
石炭からガソリンや軽油精製、中国に液化技術提供
――経産省、原油消費抑制促す。
2010年メドに商用化
経済産業省はアジアで、石炭からガソリンや軽油を精製する「石炭液化」事業の普及に乗り出す。独立行政法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が持つ独自技術を活用。今夏から中国企業と実証実験を始め、2010年にも商用化する。インドネシアでもプラント建設で交渉を始めた。アジアで豊富に産出する石炭を有効活用し、世界的な原油需給の緩和につなげる。(石炭液化は3面「きょうのことば」参照)
石炭液化は粉末にした石炭を高温・高圧状態にしてガソリンや軽油、灯油をつくる技術。世界のエネルギー需要は今後30年で1.6倍に増える見通し。特にアジアでは近年、エネルギー需要が急増しており、原油高騰の一因になった。石炭は可採年数が160年強と豊富にあり、生産の半分はアジアで占める。石炭は取引価格も安定しており、石炭液化油が普及すれば原油需給が緩和し、日本のエネルギーの安定確保にもつながる。
日本は1980年代から石炭液化技術の研究を進めてきた。コストは一バレルあたり25―30ドルで、これまでは割高だった。だが、原油価格が同70ドル台にまで高騰。石炭の輸入コストが高い日本での実用化はなお困難だが、アジアでの商用化には道が開けた。
普及支援の第一弾として、経産省所管のNEDOが七月をめどに、中国のエネルギー会社、大唐国際発電(北京市)と新〓鉱業集団公司(山東省)と共同で、どれだけ効率的に液化できるかの実証実験を始める。
共同実験する2社は2010年をめどに、1日当たり3千トンの処理能力を持つ液化プラントの運転を始める計画。プラント建設は1千億円規模の大型事業になる見通しで、日本のプラント会社の参画が見込める。技術移転に伴いNEDOには技術使用料が入る。
中国はエネルギー供給の7割を石炭で占めており、原油高騰に対応して2020年には石油需要のうち7―10%を石炭液化油でまかなう計画をたてている。
インドネシア政府とも石炭液化事業の協力で交渉に入った。実験プラントを来年度にも立ち上げ、商用化につなげる。インドやモンゴル、フィリピンとも事業協力に向けた検討を始めた。
経産省は5月に「アジア省エネルギープログラム」をまとめており、石炭液化事業はその一環。中国とは東シナ海のガス田開発などで対立しているが、日本の技術を使って省エネや環境政策を後押しし、日中関係を強化・改善する狙いがある。
石炭液化(きょうのことば)
▽…石炭を粉末状にしてから溶剤と水素を混ぜ、高温・高圧状態にすることでガソリンや軽油をつくる技術。エネルギー換算で石炭から6割分のガソリン・軽油がとれる。残る4割は重油やガスなどで、発電用燃料などに活用できる。精製技術の開発では日本が一歩リードしているとされる。
▽…石炭生産量は中国が約20億トンと世界一で、インドやインドネシアなどを加えるとアジアで5割に達する。中東に偏在する石油に比べ、アジアや欧州などで幅広く採取できるのも特徴だ。ただ、固体燃料のため輸送用などに使えなかったのが弱点だった。
天然ガス 固形化し利用 中電、NGH実証研究
来月から 実用化に向け世界初
中国電力が七月から、三井造船(東京)と共同でクリーンエネルギーとされる天然ガスを固形化した「天然ガスハイドレート(NGH)」を製造し工場や家庭に供給する世界初の実証研究に乗り出すことが八日、分かった。パイプラインが敷設されていない地域では、従来の液化天然ガス(LNG)で運ぶよりコストがかからず、利用が飛躍的に広がる可能性がある。2011年度を目標に事業化を目指す。(9面に関連記事)
パイプラインがない地域への天然ガス輸送はこれまで、氷点下162度の超低温でLNGにしてタンクローリーで運ぶのが一般的だった。
NGHは、天然ガスを水と混ぜ合わせ凍らせた直径数センチの粒状で、氷点下20度。一度に運べる量はLNGより少ないが、扱いやすく簡単な設備のトラックで輸送できる。天然ガスに戻す気化装置もLNGより簡易化できるなどの利点があり、消費量が少ない小規模工場や団地単位の家庭でも利用しやすい。
NGHの製造装置は既に三井造船が開発済み。実証研究では、NGHをトラックに積み、輸送後に天然ガスに戻す機能を備えた容器を開発する。中電の柳井発電所(柳井市)を拠点に進め、研究費は十五億円。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が3分の2を補助する予定。
国は地球温暖化防止に向け、石油や石炭などと比べ二酸化炭素(CO2)排出量が少ない天然ガスへの転換を促している。中電は天然ガスの利用拡大に向け取り組むことにした。(金谷明彦)
クリック 天然ガスハイドレート(NGH)
天然ガスを水の分子が取り囲んだシャーベット状の固体物質。氷点下20度で貯蔵できる。自然界でも、天然ガスの主成分であるメタンは世界各地の深海底で、NGHと同様な形の「メタンハイドレート」になっている。
ペトロチャイナ、LNGの調達へ10社以上と交渉
【北京=宮沢徹】中国の英字紙、チャイナ・デーリーは国有石油最大手の中国石油天然気(ペトロチャイナ)が十以上の液化天然ガス(LNG)供給者とLNGの調達へ向けた交渉を進めていると報じた。
同社は河北省、遼寧省、江蘇省の3カ所でLNG受け入れ基地の建設計画を進めている。中国政府は石炭に比べて排ガスが少ないクリーンエネルギーとして天然ガスを普及させる計画。
中国海洋石油(CNOOC)は5月、豪州からLNGの輸入を開始。中国石油化工(シノペック)もLNG事業に参入する計画で各社は豪州やインドネシア、イランなど産ガス国からのLNG調達を目指している。
エネルギー大手、新疆自治区での資源開発など続く
2004年以降、山東魯能、中国華電、国投集団、徐礦集団、河南義馬集団などのエネルギー大手が新疆ウイグル自治区で資源開発、化学事業を相次いで展開している。石炭最大手の神華集団は現在、新疆黒山礦区で石炭探査を実施中。今後も375億元を投じて、炭鉱(1600万トン)開発、石炭液化油(CTL。320万トン)事業を展開していく計画である。新ブン礦業集団も今後5年内に300億元を投じて、新疆自治区で石炭生産(1000万トン)、メタノール生産(540万トン)などの事業を実施していく。新疆石炭工業管理局によると、同自治区の石炭埋蔵量は2兆1900億トン、炭層ガスは6兆8000億立方メートルに達するが、低品質石炭が全体の90%を占めるためCTL生産に適しているとされている。
(新戦略を求めて 第2章 エネルギー安全保障:2)
中東依存、減らすには
日本で消費されるエネルギーの半分は石油に頼っている。省エネや原子力利用を進めてきたが、中東の石油頼みの体質は急には変えられない。中東の危機などで輸入がむずかしくなった時に備え、どうすべきか。自主開発によって、日本向けの「囲い込み」をしても限界がある。大事なことは、各国と協力しながら新たな油田を開発し、原油市場全体を膨らませること。そして、日本周辺にある天然ガスをもっと利用して、少しでも石油依存を減らすことだ。(編集委員・安井孝之)
73年の第1次石油ショックのとき、日本に輸入されていた石油のうち78%は中東からのものだった。省エネ努力や原子力発電などの増加で石油依存度は下がった。だが、輸入原油のうち中東からやってくる分は逆に増え、今では90%に上る。
90年以降、中国、インドネシアなどからの輸入がそれぞれの自国需要の増加から減り、その分を中東に頼ったからだ。
だが、イラン核問題や混乱が続くイラク情勢が原因で、中東の危機感は強まっている。中国など新興国の需要も急増した。今後も原油を十分確保できるかどうか分からない。
どうすれば石油を安定的に確保できるのか。
「従来の市場メカニズム中心のエネルギー政策を国家戦略的なエネルギー政策に変える」。自民党の尾身幸次エネルギー戦略合同部会会長は5月23日、同党の総合エネルギー戦略・中間報告の記者会見で語った。
中間報告を貫く現状認識は、石油が市場で自由に買える商品ではなくなり、再び、特定の資源国と消費国が取引する戦略商品としての性格を強めているというものだ。石油獲得に政府が関与しなければならないという危機感がにじんだ。
自民党の中間報告や経済産業省が5月末にまとめた「新・国家エネルギー戦略」には、政府も関与して資源国との協力関係を強化し、「日の丸油田」と呼ばれる自主開発油田を増やす方針が盛り込まれた。2030年には原油輸入量のうち、自主開発油田から産出される量を40%とする目標が掲げられた。
現在、自主開発原油の比率は輸入原油全体の約15%。向こう20年余りで2.6倍以上に伸ばすというわけだ。
石油連盟の渡文明会長(新日本石油会長)は「石油をはじめとしたエネルギーや資源はずっと戦略物資だった。石油価格が安い時代が続いたために、市場で欲しいだけ確保できる商品だという発想が生まれたが、それは幻の発想だ」と語り、政府が資源確保に乗り出す意思を持つことが重要だと強調する。
原油価格の高騰や、中国の積極的な石油獲得戦略、産油国・産ガス国の資源ナショナリズムの台頭などで、石油の戦略商品性が高まっているのは事実だろう。しかし、石油は市場で自由に買える商品か、自由に買えない戦略商品か、という命題に明確な解答があるわけではない。
これまでのエネルギー政策は対立する二つの考え方の間で揺れてきた。
日本は石油メジャーが市場を支配した60年代と産油国が支配した70年代に、石油獲得で苦労した。石油の戦略商品性が強かった時代で、石油公団を通じて自主開発に活路をさぐった。
しかし、80年代後半から90年代は湾岸戦争時を除き、石油価格は1バレル=13~19ドル前後で安定した。安値が続き、開発に投資したお金を回収するだけの利益が得られず、石油公団は01年、6千億円の累積損失を抱え、廃止が決定した。
石油が市場に潤沢に存在し、価格が安定していた時代には、政策の重心が自主開発路線から市場調達路線に移ったのも当然の成り行きだった。
日本への持ち込みが義務づけられていた自主開発原油も、00年度から持ち込み義務は緊急時に限られた。今では約3分の1の自主開発原油が日本以外に売られている。
緊急時の自主開発の限界もあらわになっていた。
90年夏にイラクがクウェートに侵攻した湾岸危機。日本の自主開発会社、アラビア石油の油田がサウジアラビアとクウェートの中立地帯にあった。危機の中で操業を続けた。
だが、多国籍軍の攻撃が始まった91年1月17日の未明、イラクのロケット弾が設備に撃ち込まれ、操業は不可能になった。自主開発油田も中東にある限り、完全無欠ではなかった。
ここに来て再び、石油の戦略商品性が強まっているとはいえ、自主開発原油が緊急時に全量、国内に持ってこられる保証はない。日本以外の国と長期契約している分を、緊急時に自分の都合だけで日本に持ち込めない事情もある。
それでも、自主開発は重要なのか。
経済産業省・資源エネルギー庁の小平信因長官は自主開発の効用をこう説明する。「開発プロジェクトに参加することで、石油を巡る情報を取り、ネットワークがつくれる。自主開発で支配下にある石油が増えれば、危機の時に、自分の持ち分をスワップ(他の国の石油との交換)などの形で日本に持ってこられる」
自主開発で物理的に資源を囲い込むのではない。資源国に欧米メジャーのように投資し、資源国と連携関係を築けば、緊急時に対応できる選択肢が増えるというのだ。
それには前提がある。緊急時にも原油を融通しあえる市場が円滑に機能していなければならない。市場が大混乱したり、市場に十分な原油がなくなったりする状態では、スワップも成り立ちにくい。
中東依存を急速に減らすのはむずかしいが、何とか輸入量を確保する――。
それが日本の至上命題なら自主開発を進めるにしても、資源の囲い込み戦略と位置づけるべきではない。むしろ自主開発は、市場により多くの石油を供給し、各国がパニックに陥らないような市場をつくる方策として活用すべきだろう。
日本の科学技術や政府の途上国援助(ODA)を使って、資源国に対して油田、ガス田の開発や生産性向上で貢献し、日本の存在感を高めることは、もちろん重要だ。
足元の危機感にせかされて、「日の丸油田」という一国主義に傾くのは、グローバル化時代にはそぐわない。自主開発と言っても、日本だけでなく欧米諸国と共同で進める「コンソーシアム」方式がすでに、カスピ海での石油開発などで進んでいる。こうした方式を生かして、産油国との対話を密にし、エネルギー安定供給の地盤を固めていく戦略が必要だろう。
市場で欲しいだけ石油を確保できるというのが「幻の発想」だとすれば、単純な囲い込みも現実的な選択ではない。
●天然ガス、対ロ関係に課題
日本のエネルギー利用の構成比率をみると、際だった特徴がある。国際エネルギー機関の調べ(03年)によると、石油の比率は49.7%と主要国で最も高く、天然ガスの比率は13.7%と主要国で最も低い。
天然ガス埋蔵量で中東が占める比率は40%と低い。その他は旧ソ連、アジア太平洋地域、北米、南米と広く分布する。
日本周辺では、サハリンにある。確認されている商業生産が可能な埋蔵量は、サハリンだけでも日本の現在の天然ガス消費量の15年分という。
日本の中東地域に偏った石油依存を変えるには、サハリンなどの天然ガスの活用が現実的だ。天然ガスは燃やしたときに発生するCO2の量が石油に比べて少なく、温暖化対策にも有効だ。だが、国内でガス利用の拡大に向けて体制が整っているとは言えない。
日本では、パイプラインが引けないインドネシアや中東などの天然ガスをいったん液化天然ガス(LNG)にして、タンカーで日本の需要地近くに持ち込み、その周辺で利用するという仕組みが定着している。
その裏返しで、国内には国土を縦貫する幹線パイプラインがない。現状は大都市圏を中心に国土面積の5・5%にガスが供給できるに過ぎない。
国内体制の未整備が、サハリンで進む開発計画にも影を落としている。計画のうちサハリン1プロジェクトは、天然ガスをパイプラインで日本に持ち込もうとしているからだ。せっかく開発に参加しながら、幹線パイプラインがないために国内の買い取り手が見つけられない。
サハリンよりも豊富な埋蔵量を持つとみられているロシアの東シベリアでは、ガス田と日本、中国、韓国の大消費地を結ぶ国際パイプラインが将来敷設される可能性がある。この構想が進んでも、このままでは、国際的な連携に乗り遅れる。
天然ガス利用では外交面でも課題が残る。日本への最大の供給国と想定されるのは、ロシアである。天然ガスの利用率を高めるには安定供給が不可欠であり、そのためにはロシアとの信頼関係の確保が必要となる。
一つの方法は、一対一でロシアと向き合うのではなく、天然ガスの輸入国が共同歩調をとって、安定供給を確かなものにしていくことだ。サハリン開発は欧米諸国も加わっており、これらの国の協力がロシアとの交渉力を強めるバネとなってきた。
東シベリアからの国際パイプラインでも同様だ。消費国である日本、中国、韓国などが北東アジアでの天然ガス利用のあり方を一緒に構想し、ロシアとの協力関係を強めていく方が果実は大きくなるだろう。
◆日本の課題
- 自主開発油田を増やすだけでは、緊急時の備えは十分ではない。
- 市場を通じた機動的な石油獲得へ、国際的な連携を進める必要がある。
- ロシア産天然ガスで石油依存は減らせる。ロシアとの信頼関係をどう築くかが鍵を握る。
◆新・国家エネルギー戦略 30年までの主な目標
- 現在は1次エネルギー供給の約50%が石油依存だが、40%以下に低減
- 総発電量に占める原発の比率を現在とほぼ同等の30~40%程度、あるいはそれ以上にする
- 省エネは過去30年で約37%進んだが、さらに30%改善
- 原油輸入量に占める自主開発比率を現在の約15%から40%程度に拡大
■9割の石油は中東から |
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| (経産省「資源・エネルギー統計」から。数字は万キロリットル) | |
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■天然ガス利用率の低い日本(数値は03年) |
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| (1次エネルギーに占める比率。資源エネルギー庁の資料から) | |
技術フロンティア - フューチャー ― 石炭ガス化
出遅れ日本、逆転の秘策―Jパワー、クリーンコールパワー研究所
割安な石炭を発電に使う際、ネックとなるのが環境負荷の大きさ。
その負荷軽減に役立つのが、石炭をガス化する技術だ。
独自技術を採用した日本製プラントの商用化も目前に迫っている。
原油価格の先行きが不透明な中、石炭の需要が世界的に拡大している。米エネルギー情報局は、世界の消費量は2003年の約50億トンから、2010年には約60億トン、2020年には約70億トンへ拡大するとの見通しを示す。
石炭の魅力は、豊富な埋蔵量と値段の安さにある。2006年時点で、原油や天然ガスの可能採掘年数が40~70年なのに対して、石炭は約200年に達する。原油高の中でも、同じ熱量当たりの石炭の価格は、重油や天然ガスの約3分の1にとどまっている。
伸びる需要とは対照的に、世界的に環境規制が強まっており、石炭利用が難しくなっている面もある。石炭を燃やすと発生する硫黄酸化物やすすは、既存の石炭火力発電所でも除去できるが、他の燃料を使う発電所に比べ二酸化炭素の排出量が多い。天然ガスを燃料にする発電所と比較すると、二酸化炭素排出量は約1.5倍に達する。こうした環境負荷の大きさが普及のネックになってきた。
海外の先行組を追う日本勢
石炭の弱点である環境負荷の大きさを緩和できる手段として、世界的に注目を集めているのが、石炭ガス化複合発電(IGCC)技術だ。従来の石炭火力発電所よりも、発電効率が約2割高くなる分、石炭消費量は少なくなり、二酸化炭素排出量を約2割減らすことができる。
昨年8月、米国政府は石炭ガス化複合発電の開発企業に12億6000万ドルの補助金を出すと表明した。こうした動きに押され、世界中で石炭ガス化複合発電施設の建設が計画されている。米国では商用機が既に運転を開始しており、中国でも欧米の石油会社やプラントメーカーが商用機の建設に着手した。石炭ガス化複合発電では、欧米勢が大きくリードしている。
対する日本勢は、独自技術を開発し、一気に先頭グループを追い抜こうとしているところだ。現在、国内では2つの企業グループが、新たな石炭ガス化炉の開発とそのガスを使った火力発電所の実験に取り組んでいる。
東京電力などが出資するクリーンコールパワー研究所と三菱重工業は、福島県いわき市で2007年までに石炭ガス化複合発電施設の実証機を完成させる。実証機の発電量は25万キロワット。既存の中規模火力発電所の発電量と同レベルで、商用機にかなり近いものになる。
Jパワー(電源開発)と日立製作所は、北九州市で実施中の「燃料電池用石炭ガス製造技術開発(EAGLE)」計画のパイロット試験を今年中に終了する見通しだ。こちらは商用機の10分の1ほどの規模になる。
クリーンコールパワー陣営の発電設備は、2段構えになっている。石炭から作り出したガスを燃焼させ、ガスタービンを回して発電するプロセスと、その廃熱で蒸気を発生させ、蒸気タービンで発電するプロセスだ。
Jパワー陣営は、この2段構えに、石炭から作り出したガスに含まれる水素を燃料にした燃料電池による発電を加え、3段構えにする計画だ。燃料電池は、水素分子から直接電気を取り出すので、燃料を燃やして発電する方法よりも、高い効率で電気に変換できる。しかし、非常に高価なので、どの程度の発電量にするかは、まだ議論の余地があるところだ。
独自技術で効率アップ
石炭ガス化の原理は、炭素と水素が結合した高分子化合物である石炭を、高熱で熱分解するというものだ。石炭の熱分解には、1500~1800度の熱が必要になる。従来も電気炉などで石炭を加熱し、発生するガスを利用することはあったが、最新のガス化炉は石炭自体を燃焼させる点が特徴だ。
とはいえ、ガス化炉に投入した石炭が全部燃えてしまっては意味がない。この技術のミソは、投入した石炭のわずか1~6%を完全燃焼させるだけで、残り94~99%をガス化するのに必要な熱を得られる点にある。欧米のガス化炉は、現時点では2~十数%の石炭を燃やす必要がある。
「日本のガス化炉が優れているのは、2つのバーナーを装着しているからだ。これにより石炭を効率よくガスに転換させられる」。バブコック日立プラント技術本部の木田栄次本部長はこう解説する。三菱重工のガス化炉も、この点では同様だ。
2つのバーナーは、左の図のように上下に並んで装着される。バーナーからは粉状の石炭と酸素が吹き込まれ、炉内に入ったところで着火する。その熱で炉内は、温度が1500~1800度、圧力が25気圧という高温高圧の状態になり、石炭は数秒間で一酸化炭素と水素になる。
上下のバーナーの役割には若干の違いがある。日立のガス化炉では、下段のバーナーの酸素吹き込み量を、上段よりも約1.5倍多くしている。下段のバーナーには、燃焼促進の役割があるからだ。また、バーナーが上下に2つあることで、炉内で最も理想的な「旋回流」を発生させることもできる。
2つのバーナーに加えて、日本勢に技術的優位性をもたらしているのが、火力発電所のボイラー技術の応用だ。ガス化炉の内壁の外側には、何本もの水冷管が取り囲むように覆っている。その中を水が流れ、炉内が1500~1800度という高温になっても、内壁の温度を約1000度以下に保つ。
内壁から熱を奪った水冷管の中の水は、高温高圧の蒸気になる。この蒸気は、ガスタービンの廃熱で生じた蒸気と合流して、発電用の蒸気タービンで使われる。内壁の過熱を防いで炉の寿命を延ばすとともに、廃熱を回収してムダなく利用する水冷管は、まさに一石二鳥の役割を担っている。
既に商業運転もされている海外企業のガス化炉の中には、内壁の耐火レンガを冷やすことができないため内壁が溶け出し、1年ほどで取り換える必要があるものもある。日本勢は水冷壁を採用することで、内壁の寿命を約10年に延ばした。
発電効率の限界を超える
燃料が持つエネルギーのうち、どれだけの割合を電気エネルギーに変換できたかを示す発電効率は、年々向上してきた。蒸気タービンを使う従来の石炭火力発電所は、蒸気をより高温高圧にすることで、現在、発電効率は39~41%まで上昇したが、「これ以上は厳しい」と専門家は口を揃える。
石炭ガス化複合発電の場合、ガス化炉で石炭を加工しなければならず、そこで多少なりともエネルギーを消費する。このため、石炭ガス化複合発電の発電効率は、ガス化炉のほか、酸素供給装置など周辺機器で消費されるエネルギーも含めて計算する。それでも従来の石炭火力発電所よりはるかに高く、欧米の先行組は発電効率47%を達成しようとしている。日本勢はこれを上回ることを狙う。ガス化炉の廃熱利用も、発電効率アップに向けた工夫の1つだ。
さらに、クリーンコールパワー陣営はガス化炉に吹き込む酸素に着目した。実は、三菱重工のガス化炉は、酸素の代わりに空気を使う。酸素を作り出すためのエネルギーも、無視できないからだ。「空気を使うのは技術的に難しい面もある。だが、発電効率は5%上がる」と三菱重工原動機事業本部の太田一広主席技師は説明する。Jパワー陣営は、前述のように燃料電池と組み合わせることで、発電効率55%の達成は可能だとしている。
石炭ガス化複合発電の利点として、意外に見逃されがちなのが、燃焼後の廃棄物の処理が簡便になることだ。現在、国内の石炭火力発電所では、年間1000万トン程度の灰が生じている。灰の成分は、ケイ素やアルミニウムの酸化物が中心だが、水銀やヒ素など有毒物質も含むので厄介だ。
これに対して、石炭ガス化炉の場合、炉内の温度が一定して高温に保たれているので、灰が流動性の高い溶けたガラス状の物質(スラグ)になり、下方から排出できる。溶けることで、密度が増し、同じ量の石炭を燃やした場合の灰の体積と比べると、約半分になる。しかも、有害成分の拡散が防げる。
燃料以外の用途も開発
ガス化した石炭の用途は、必ずしも発電だけに限られるわけではない。特殊な処理を施すことで、自動車燃料として使える軽油が合成できる。肥料用のアンモニア、ナノテクノロジー分野で用いられる炭素原料などを作り出すことも可能だ。
みずほ情報総研環境・資源エネルギー部の冨田哲也シニアマネジャーは、「米国は、国内の1日当たりの原油供給量の1割に相当する260万バレルの燃料を、石炭から作り出せると報告した。中国では、石炭から精製したDME(ジメチルエーテル)をLPG(液化石油ガス)の代替燃料として活用する開発が進んでいる」と話す。
今後、石炭ガス化技術を普及させるうえで重要な課題は、プラント建設のコストを下げることだ。三菱重工の太田主席技師は、「実証機で技術を証明することさえできれば、日本の技術力が明らかになり、普及は進むはずだ。商用化すれば、コストは劇的に下がるだろう」と期待する。
クリーンコールパワー陣営は、実証機を使った試験を2010年頃に終える。Jパワー陣営もこれに続く格好だ。海外勢は既に商用機を運用する段階にあるが、日本勢も世界市場に打って出る日は近い。
(星 良孝)
世界で建設計画が相次ぐ
石炭ガス化複合発電施設
Jパワーが、北九州市に建設し、今年中にパイロット試験を終える予定の石炭ガス化複合発電施設。手前が石炭ガス化炉で、煙突がある奥の建物が発電設備
従来の発電効率の壁を越える
火力発電の技術的な進化
火力発電の方法としては、石炭を使った蒸気タービン発電、天然ガスを使ったガスタービン発電が広く普及している。蒸気の温度や圧力、ガスの燃焼温度を高めるほど、発電効率は上がる。石炭ガス化複合発電は、ガスタービン発電と蒸気タービン発電を組み合わせ、発電効率を高める。石炭ガス化燃料電池複合発電は、これに燃料電池も追加する
石炭ガス化燃料電池複合発電
注:数字は送電端の発電効率。計画値を含む
点検 06年3月期決算 原油高や価格競争響く
外食・運輸が苦戦 非製造 事業開拓で成果も
中国地方の上場企業の2006年三月期決算で、銀行を除く非製造24社は、連結ベース(非連結は単独)で増益(黒字転換を含む)は四割弱の9社、増収も16社と六割台にとどまった。国内での競争が激化している外食産業や、燃料高騰が直撃した運輸など悪化が目立ち、輸出をけん引役に好業績が相次いだ製造とは対照的な結果となった。(境信重)
外食チェーンでは、サンデーサン(周南市)が03年3月期の連結決算導入後、初の赤字となった。要因の一つである固定資産を時価評価する減損会計について、林憲生執行役員管理グループリーダーは「過去から積み上がった不採算の業態が、会計基準の変更で浮かび上がった」と強調。積極的な業態転換で経営立て直しに挑む。
建設も厳しく
公共工事の抑制傾向が強まり、建設関連も苦戦した。2期ぶりの減益となった中電工(広島市中区)の加藤義明社長は「公共工事が少なくなる中、価格競争は激しい。今は耐える時期」と厳しい経営環境を説明する。
原油高は、ガソリンやエネルギー原料の高騰を招き、運送やガス、電力会社の利益を圧迫した。
福山通運(福山市)は前年度より十五億円増えた燃料費に加え、事業所の土地などへの減損会計適用に伴う特別損失も重なり、五期ぶりの赤字。業界で単価の下落傾向が続く中、桑本聡取締役経理部長は「運送料への転嫁は簡単ではない」と漏らす。岡山県貨物運送(岡山市)も車両償却費の増加に燃料費高騰が追い打ちをかけ、赤字に転じた。
予想超す急騰
「予想を超えた原料の急騰で減益を余儀なくされた」と説明するのは、広島ガス(南区)の深山英樹社長。厳冬などでガス販売が好調だっただけに、原料である液化天然ガス(LNG)の値上がりの大きさがクローズアップされた格好だ。業績改善へ役員賞与を全額返上する。
中国電力(中区)も、昨年四月の料金値下げと原油や石炭など燃料価格の高騰で2期ぶりの減益となった。一方、増益を確保した企業は、統合や新分野開拓、施設の新設など積極展開が効果を上げたケースが目立っている。
家電量販のデオデオ(同)の持ち株会社エディオン(名古屋市)は、昨年四月にミドリ電化(兵庫県尼崎市)をグループに収めた上、統合を生かした仕入れ価格の抑制や独自ブランドの拡充で最高益を実現。デオデオの友則和寿社長は「ダイエー広島店跡に今年オープンした玩具中心の専門店も予想以上に好調」と新業態効果も強調した。
メッセージ(岡山市)は介護付き有料老人ホームを直営、フランチャイズ計29カ所を新設し最高益を達成。主力の男性用スーツの販売着数が過去最高の青山商事(福山市)も、同じく最高益となった。
≪中国地方の非製造業(銀行を除く上場企業)の2006年3月期決算ランキング≫
| ●当期利益 | ●売上高 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 中国電力 | 45,166 | (減益) | 1 | 中国電力 | 1040,289 | |
| 2 | ベネッセコーポレーション | 16,039 | (増益) | 2 | エディオン | 714,697 | |
| 3 | 青山商事 | 13,328 | (最高益) | 3 | ベネッセコーポレーション | 333,766 | |
| 4 | エディン | 8,226 | (最高益) | 4 | 福山通運 | 252,488 | |
| 5 | アーバンコーポレーション | 7,868 | (最高益) | 5 | 青山商事 | 202,720 | |
| (単位:百万円、売上高はいずれも増収) | |||||||
経産省、日中省エネルギー・環境総合フォーラムを開催
経済産業省、中国・国家発展改革委員会などの共催で日中省エネルギー・環境総合フォーラムが30日、都内で開かれた。中国側は電力での環境・省エネへの取り組み、天然ガスや再生可能エネルギーの導入、電力の70%を占める石炭火力発電の現状と今後の環境対応を明らかにし、日本との協力の重要さを指摘した。
中国は、現在は米国に次ぐ世界2番目の電力生産・消費国で、05年末の発電容量は5億キロワットを超えた。2020年には00年の4倍に増強。石炭発電を最適化し、秩序ある水力発電の開発と原子力発電を積極推進する。
環境対応では石炭火力発電で60万キロワット級超々臨界圧の発電プラントをこれからの主流とする方針で、今後は石炭火力の25%をこれでまかなう。排煙脱硫装置を設置したユニットは3億キロワットを超える予定。ガスタービン発電は08年までに運転を始める三菱重工などから導入した機器が08年までに2000万キロワットになる。
再生可能エネの開発量は水力で1億1000万キロワット、風力発電は陸上で2億5000万キロワット、洋上で7億5000万キロワットが見込まれる。現在の立地規模は126万キロワット。太陽光発電は7万キロワットが立地。太陽熱は8000万平方メートルと世界ナンバーワン。バイオマスは発電で190万キロワット、液体燃料で100万トンを生産。再生可能エネの比率を1次エネの16%まで高める。
ガス事業は液化石油ガス(LPG)の需要が世界で最も伸びる。2010年時点で天然ガスの30%が発電、28%が都市ガス需要と予測する。石炭生産量は2010年に25億トンに達する。この石炭使用効率を上げ、燃焼での環境汚染を減らすためにクリーン石炭技術を積極導入。炭鉱3廃(廃液、廃ガス、固体廃棄物)の総合利用により低熱量燃料での流動床発電を200カ所で操業。石炭灰はセメント混合剤で600万トンを利用する。
今後13の大規模な石炭拠点に集約する構造改革では石炭、電力、建材の総合拠点を整備。大規模な石炭拠点鉱山区のクリーン生産を促進する。
シェル、中国で戦略事業に育成、CGLなどクリーンエネルギー
【香港=松岡克守】
シェルは中国でクリーンエネルギーを新たな戦略事業として育成していく。基幹技術は石炭ガス化・ガス液化で、中国の国家戦略の最重要課題であるエネルギー・環境問題への対応を強めていく。これまでの技術ライセンスに加え、このほど中国石油化工(SINOPEC)との合弁で、湖南省で進めていた肥料工場が石炭燃料へエネルギー転換し近く稼働するなど、石油系燃料からの代替プロジェクトとして石炭ガス化・液化事業を展開していく。さらに中国石油天然ガス集団(CNPC)と山西省で二〇〇八年開通を目指し天然ガス開発に乗り出しているほか、上海市政府・同済大学との連携で水素エネルギーの実用化研究に乗り出すなど、クリーンエネルギーの展開を加速している。
シェルはこれまで、石油部門で中国に三十五億ドルを投資、昨年、今年と年五億ドルを維持し事業を拡充している。すでにSINOPECと江蘇省に合計五百のガソリンスタンドを建設する計画を発表、「すでに半分を超えている」(林浩光シェル中国集団主席)という。
こうしたアップストリーム事業拡充の新たな戦略として、クリーンエネルギー育成を打ち出している。なかでも「ガス化では世界トップクラスの水準にあり、液化ではトップ技術を持つ石炭ガス化・液化の展開に力を入れていく」(同)方針だ。すでに技術ライセンスでは十五の実績を持ち、「第一弾として寧夏回族自治区でプラントが稼働する」(同)。さらにライセンスだけでなく、合弁でも展開していくことにしており、湖南省の中堅規模の肥料工場でナフサ高騰により稼働が不可能となっていた工場を、SINOPECとの合弁で地元の石炭を使ったエネルギー転換で再稼働するめどを得ている。
中国はエネルギーの七〇%を石炭に依存しており、この傾向が大きく変わる見通しはない一方、環境問題が深刻さを増している。こうしたことからシェルでは、ガス化・液化で中国の国策に沿ったクリーンエネルギー展開を目指している。とくに液化はガソリンなど石油製品の代替にもなることから、現状のような水準で原油高が続けば「十分に競争力を持ちうる」(同)としている。
さらに同社では、二〇二〇年までに再使用可能なエネルギーの比率を一五%までに引き上げたいという中国の方針に対応し、風力発電などのプロジェクトにも取り組もうとしている。このほか天然ガス、水素エネルギーなどの開発・研究など幅広くクリーンエネルギーを展開する方針。
〔エコノミストリポート〕
日本は原油の「上流権益」を増やせ-■原油調達戦略
[著者名]石井彰 岩間 剛一
第84巻 第25号 通巻3825号
エコノミストリポート
■原油調達戦略
原油70ドル超時代
日本は原油の「上流権益」を増やせ
空前の高値が続く原油市場。戦略なき原油調達はもはや許されない。原油の上流権益取得による調達を全体の3割程度に上げる必要がある。
いしい あきら 石井 彰
(石油天然ガス・金属鉱物資源機構首席エコノミスト)
周知のように、過去2年以上にわたって石油・天然ガスの価格は大きく上昇し、当面高止まりの様相を強めている(図)。ニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場の目安となるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)期近の6月物は4月21日、1バレル=75ドル台をつけ、史上最高値を更新した。
原油価格の不確実性が大幅に増大した状況のなかで、日本の石油精製、ガス、電力などのエネルギー企業が、いかに安定的に、安く調達できるのか。それは当該企業だけでなく、日本経済全体に関わる問題になる。すなわち、一般企業や消費者が購入する軽油などの石油製品、都市ガス、電気の価格に、その原料である原油の調達コストが反映されるからだ。日本のエネルギー企業の調達力が、いま問われている。
そもそもエネルギー資源の国際調達には、(1)スポット調達、(2)長期契約、(3)先物・先渡し契約、(4)権益(エクイティ)玉確保――の四つの方法がある。当然のことながら、それぞれの調達方法には、一長一短がある。
価格変動が大きいスポット調達
原油の調達は、世界的に元来、スポット・短期契約による調達が主流で、欧米の石油精製業者が取得する原油の半分以上はこれによる。しかし近年、原油のスポット価格は、急激な価格変動による上昇が目立つ。また、市場流動性が低いLNG(液化天然ガス)の場合、原油以上にスポット価格変動が著しく、価格リスクも極めて大きい。
もちろん、スポット依存は価格が下落局面ではメリットも大きい。油種間や地域間の微妙な価格差に機動的に対応すれば、少しでも安く調達することが可能なため、欧米では主流になっている。ただし、例えばイランの核問題に対し、米軍が限定空爆などを行い、イランが石油禁輸を行う事態になった場合、イラン原油の購入者がスポット市場に殺到して、価格が暴騰する可能性が高い。こうした際に、スポット調達比率が高いと、混乱に全面的に巻き込まれることになる。
過去の石油危機はこうしたパニック買いで引き起こされた。注意しなければならないのは、欧米の大半の石油精製業者は、メジャー(国際大手石油会社)に見られるように、垂直統合されており、「上流権益」、すなわち自前原油(エクイティ玉)の大量保有者でもある点だ。価格変動に影響なしに調達可能な上流権益が、安定化装置として働き、原油価格高騰にも耐えられる。
日本企業は長期契約中心
一方、日本のエネルギー企業の調達は、1年以上の長期契約が基本になっている。例えば、新日本石油などの石油精製業者が調達する原油の8割以上が、中東産油国と直接契約するか、メジャーなどを通じた間接的な長期契約という形をとる。また、東京ガスや東京電力といったガス・電力会社のLNG調達もほとんどが15年を超える長期契約に基づいている。
原油の長期契約は量的安定確保にはなるが、価格は毎月類似油種のスポット価格に準拠して変動するため、価格防衛策にはならない。また、LNGの長期契約は石油価格にスライドさせているが、上下限条項があるのが普通で、価格は比較的安定しているものの、石油スポット価格の下落時には逆ザヤが生じ割高になる。
先日、東京電力と三菱商事との間で、LNGの意図的な長期購入オーバーコミットメント(過剰契約)をして、余剰分をいつでも剥がせる欧米ガス市場へ持ち込むという取引がスタートした。これは、欧米ガス市場をバッファー(緩衝材)として利用し、数量・価格両面での安定化を図る策として極めて合理的な戦略だが、結果的にリスクを欧米にしわ寄せすることになるため、政治的観点からは余り大規模にはできない。
欧米向けLNGの供給が拡大するにつれ、LNGの取引形態も次第に石油のそれに近づいていくだろう。
日本エネルギー企業は大半がマージン産業
原油の長期先物・先渡し取引は、価格安定化に役立つが、現時点の先物・先渡しマーケットは、短期物と変わらない高価格となっている。これでは、コスト削減にならないだけでなく、97ページの囲みに記したようにファンダメンタルズとの価格整合性が低いため、大きな価格下落(逆ザヤ)リスクにさらされ、非常に危険である。LNGでは、そもそもこの種の取引はほとんど存在していない。
上流権益を自ら保有するエクイティ原油・ガス調達は、市況にかかわらず直接・間接にコストベースで安定的な調達が可能なので、製品価格の安定や低減に最も寄与する可能性が高い。もちろん、大規模・長期のリスク投資を伴うので、下手に行えば巨額赤字となり、結果的に高い調達手法になる可能性はある。
だが、日本のエネルギー産業の大半は、原料と製品価格が同じ方向に動くマージン・加工産業にとどまっている。上流産業や最下流産業ほどの価格リスクを抱えているわけではないが、個々の企業にとって価格競争力は重要だ。さらに日本経済全体として、高コスト体質は大問題である。
前述のように欧米石油産業の大半は、価格のナチュラルヘッジができている垂直統合型企業であるし、下流市場の本格的自由化に直面している欧州のガス・電力会社は、競争相手に対するコスト競争力を強化するために上流権益の拡大に本腰を入れ出している。例えば、ドイツのエオン・ルールガス、RWE、スペインのユニオンフェノサ、フランスのGDF、英国のセントリカなどは、CIS、中東、アフリカなどでの上流投資に邁進しはじめている。また、中国、インドの石油・ガス企業は元来国営の垂直統合会社である。
調達の3割は上流権益で
各調達手段には一長一短があり、調達手段のポートフォリオ化が重要だが、日本のエネルギー産業は長期契約に頼りすぎている。いまだ上流権益保有がポートフォリオとして不十分であり、改善の余地が大きい。できれば、全調達量の3割程度は欲しいところだ。
上流事業は価格水準によって収益が大きく振られるため、マージン産業がより大きな上流権益を持つと、原理的には収益の振れが大きくなる。しかし、その一方で、平均調達コストは大きく下がり、価格競争力は向上する。特に危機が起こった時にスポット物に殺到して、自ら価格暴騰を招く愚を予防する策にもなり、日本経済全体としても最も好ましい方向と考えられる。日本の一部大手石油精製企業やガス企業が最近、上流権益の獲得の意欲を示してきていることは大変好ましいが、欧州企業に比べると、まだ緒に就いたばかりと言うしかない。
上流専業企業に比べ、下流企業が上流権益獲得に乗り出すことは、購買力を生かして資源国から、より有利な条件を得られる可能性がある。また、製品価格の低減や安定化に直接結びつけることもでき、上流専業企業の権益獲得よりも、日本経済全体にとって好ましいとも言える。
ファンド資金に翻弄される市場
イランの核問題から派生する原油価格のさらなる高騰、暴騰の可能性も、現状では相当程度あると言わざるを得ない。この背景には、近年、石油の市場化が進展し、先物市場が整備されたため、かえって市場の不安定度が大きく増してきているという事情がある。
これは一般的な経済理論によって予測されるのと逆の結果だが、現実である。ここ2年以上の原油市場の経験では、在庫量と価格が正比例する、つまり、コンスタントに供給が需要を上回って在庫水準が上昇しているのに、それに比例して価格も上昇するという、素朴な経済理論では説明できない現象が継続している。
この一見矛盾をはらんだ現象の説明としては、世界的な精製能力の不足から、原油全体ではなく、WTIなど、白物製品(ガソリン、灯油、軽油など)が容易に大量精製できる軽質・低硫黄原油の需給が逼迫していることがひとつ挙げられる。また、世界の原油余剰生産能力が過去に比べて縮小してきているため、中東危機などにより、将来の需給逼迫が生じやすくなっているリスクプレミアムでも一応説明できる。
しかし実際には、原油全体の需給逼迫は、少なくとも過去2年以上の価格上昇期間中に全く生じていないにもかかわらず、中東産の重質・高硫黄原油価格もWTIに引っ張られる形で高騰している。また、今後についても、必ずしも実際の需給逼迫の可能性が、過去に比べ著しく高くなるとは言えない。例えば、重質・高硫黄原油産出国であるイランの核問題の深刻化が、直ちに軽質・低硫黄原油不足につながるわけではないし、直ちに原油全体の需給逼迫を呼ぶわけでもない。
なぜなら、実質的な世界の原油余剰生産能力は、実際の余剰分だけではなくて、生産量のうち実需要に対して現に供給過剰になっている分の合計であり、この合計分の実質余剰は、過去と比べて必ずしも劇的に減少していないし、また1970年代と比べても、膨大な戦略備蓄という危機時のバッファーも存在するからだ。90年以降にもイラクでの2回の戦争などで大規模な石油供給遮断が生じたが、大幅な価格上昇はなかった。
筆者は、この矛盾の正しい説明は、ヘッジファンドなどの短期資金だけでなく、むしろ長期の商品ファンド、年金ファンドなどの大量の資金流入が、原油市場の性格を根本的に変えてしまったためだと考える。まず、取引量の少ない長期先物(期先物)に大量のファンド資金が流れ込んだために、期先物価格が大きく上昇した。そして、その期先物を売って確実に利益を出すために、石油会社やトレーダーなどの実業家(すなわち石油のプロ)がせっせと原油在庫を積み上げた。この在庫積み上げのための現物買いによって、直近の原油価格が大きく上昇し、それがさらにファンドを強気にし、さらに期先物に走らせるという悪循環になったと考えられる。
ある米国石油専門家の推定によれば、日産40万バレルに過ぎないWTI先物へのファンド資金ネット流入量は、2004年半ばのほぼゼロから、現在の約600億ドルまで、一本調子のすさまじい勢いで膨らんできている。つまり、石油の玄人でない様々な思惑を持ったファンド筋が、将来の原油需給逼迫リスクを過大評価しているというわけだ。さらには、原油自体ではなく、製油所の環境規制に起因する米国の製品需給の逼迫が根本原因というのが、現時点での石油専門家の大方の見方である。
このように日本のエネルギー企業の予想が全く及ばないファンド筋、素人筋の様々な思惑が、実際の価格を大きく動かす構造は当分継続すると見られており、日本のエネルギー企業がそれに大きく振り回される構図が続くだろう。(石井 彰)
原油高で注目―カナダのオイルサンド
いわま こういち 岩間 剛一 (和光大学経済経営学部教授)
原油価格の歴史的高騰のなか、石油を代替するエネルギーとして一躍注目を集めているのが、カナダのオイルサンドである。
オイルサンドは非在来型石油と呼ばれ、油田に液体として埋蔵される在来型石油の原油と区別されている。一般的には原油の比重を表すAPI(米国石油協会)度が20度未満(高いほど、ガソリンや灯油がたくさん生産できる軽い原油を意味する)で、油田に埋蔵される状態がアスファルトのような固体、または粘性のものとされている。
中東原油などは生産コストが1バレル=5ドル以下と推定されている。だが、オイルサンドは固体のため、石炭のように露天掘りなどによって砂岩層を掘り出し、熱水抽出法によって砂と油を分離する作業が必要になる。原油に比べて生産コストがかかるうえに、ガソリンなど高値で販売できる石油製品を生産しにくいことから、原油価格低迷期には、ほとんど顧みられることがなかった。
サウジに匹敵する埋蔵量
しかし、原油価格の高騰によってオイルサンドも経済性を増し、石油に並ぶ化石燃料として評価されるようになった。石油埋蔵量評価で権威のある『オイル&ガスジャーナル(OGJ)』誌は2003年年初から、オイルサンドを原油埋蔵量に組み入れた。現在ではカナダのオイルサンドの埋蔵量は、中西部アルバータ州エドモントンのアサバスカ、コールドレーク、ピースリバーを中心に、原始埋蔵量2兆~3兆バレル、確認可採埋蔵量で1780億バレルあるとされる。世界最大の原油埋蔵国サウジアラビアの確認可採埋蔵量が2600億バレルで、それに次ぐ世界第2位の原油埋蔵量を誇っている。
オイルサンドは発見から既に100年以上の歴史を持ち、掘削から、重質油である合成原油(Synthetic Oil)を精製するまでの技術は完成している。生産コストは資機材の高騰という要素を加味しても、1バレル=25~30ドル程度であり、現在の原油高の状況においては、十分に経済性が確保できる。
現在の生産量はビチューメン(抽出性有機物)と合成原油を合わせて日量100万バレル程度あり、主として米国に輸出されている。カナダの原油生産量は同220万バレルと世界第9位であるが、50%近くをオイルサンドが占めていることになる。オイルサンドの生産は、原油価格高騰下、アルバータ州政府の積極的支援のもと、2010年には同150万バレル、2020年には同300万バレルにも達する見込みで、原油生産が伸び悩むなか、化石燃料の救世主的存在として期待されている。こうしてオイルサンドのランドリース(権益取得料)に人気が集まったため、カナダは現在、権益取得料が世界一高い国になっている。
また、パイプライン会社「エンブリッジ」は、アルバータ州から太平洋岸への「ゲートウェー・パイプライン建設計画」を進めている。2010年完成予定で、日本、中国をはじめとした東アジア諸国への輸出も視野に入れ、日量40万バレルのオイルサンドを太平洋岸に輸送しようというものである。
中国のSINOPEC(中国石油加工公司)、CNOOC(中国海洋石油公司)などがオイルサンドプロジェクトへの参加を表明している。日本からも石油資源開発、新日本石油などがオイルサンド開発事業に参加し、米国向けに合成原油の輸出を行っている。
先進国であるカナダにあるオイルサンドは、中東諸国の政治的・軍事的リスク、中南米、ロシアの政治的リスクを避け、エネルギーソースを多様化したい日本などの石油消費国に、重要な選択肢を与えている。核融合などの「未来の」新エネルギーと異なり、今現実にそこにあるエネルギーであり、その可能性は大きい。
[なるほど!経済]
原油高 企業努力そろそろ限界? 家計をジワジワ圧迫
原油高の影響で、石油元売り各社が1日からガソリンなど石油製品の卸価格の大幅な値上げに踏み切った。電力・ガス会社も7月から電気料金やガス料金を値上げする。これまで各種エネルギーの消費者価格の上昇は、原油価格などの高騰ぶりと比べ、緩やかなペースにとどまってきた。しかし、原油高などが長期化すれば、ジワジワと家計を圧迫してきそうだ。(梅津一太)
◆ガソリン、134円前後に値上がり
■過当競争
4月24日現在のレギュラーガソリンの店頭価格(全国平均)が、1991年の湾岸戦争後のピークだった昨年10月の1リットル=131・1円に並んだ。石油元売りの卸価格値上げを受け、都内のガソリンスタンドの多くは1日、134円前後の価格を表示した。
史上最高の原油高なのに、国内のレギュラーガソリン価格は湾岸戦争時の高値(142円)を下回っている。これは「近隣のスタンドの看板を見て店頭価格を決める」(業界関係者)という激しい価格競争のため、原油の上昇分を完全には小売価格に転嫁していないためだ。スタンドのコスト吸収努力も限界に近く、例年なら値下がりするはずの大型連休中に値上げせざるを得なくなった。
昨年1月から今年3月にかけて原油の輸入価格は、円換算で80%近く上昇したが、新日本石油のレギュラーガソリンの卸価格(1リットル当たり)の値上げは、今年5月までで26・8円にとどまる。店頭価格は、今年4月までで13・9円の上昇とさらに小幅だ。
石油元売り各社は1日、一斉に卸価格を追加値上げした。値上げ幅は1リットル当たり4・1~4・3円と湾岸戦争以降で過去3番目の大きさだ。全国各地のスタンドも連休前から3円前後の値上げに踏み切った模様で、原油高が長引けば、今後もガソリン店頭価格はジワリと上昇していきそうだ。
◆電気、値下げ幅縮小
■コスト削減
電力各社は、コスト削減などにより、相次いで電気料金の抜本的な値下げに取り組んでいるが、原油高によって、せっかくの値下げ効果が相殺されている。
東北、北海道、北陸、中国、四国、沖縄の電力6社は、7月からの電気料金が標準家庭(30アンペア、290キロ・ワット時)で1か月あたり3~32円上昇すると発表している。火力発電の燃料費(石油、天然ガス、石炭など)の変動を料金に反映させる「燃料費調整制度」によるものだ。半年前から3か月間の平均価格が、基準とする価格より5%超変動した時に料金を調整(値上げ・値下げ)する仕組みとなっている。
一方で、6社は7月から年度内にかけて、コスト削減など総原価を見直して抜本的な電気料金の引き下げに踏み切る予定だが、トータルの値下げ幅は原油高がない場合よりも縮小する見通しだ。
また、東京、関西、中部、九州の電力4社は7月からの値上げを見送った。4月に抜本値下げを実施した際に、基準となる価格も昨年10~12月に変更したため、直後の1~3月の変動が小幅にとどまったためだ。
これまで電力各社は、コスト削減のほか、原子力発電や水力発電を進めて石油火力発電への依存度を引き下げながら、原油高の影響による電気料金の値上がりを抑えてきた。東電の石油火力への依存度は、1970年代の石油危機前の約7割から、現在は約1割に低下している。
1年余りで8割近い原油価格の急激な上昇ぶりと比べて、東電の標準家庭の1か月の電気料金は累計2・1%の上昇にとどまる。7~9月も抜本値下げで、電気料金は1~3月より160円安い水準となる。
◆ガス、上昇率は低く
■4期連続
ガス料金も、原料費の変動を料金に反映する「原料費調整制度」に基づいて3か月に1度見直されており、東京、大阪、東邦、西部の都市ガス大手4社が7月から値上げする。
05年10~12月期以来4期(東邦ガスは3期)連続の値上げだ。値上げ幅は標準家庭(50立方メートル・一戸建て)で1か月あたり91~105円高、東京ガスは98円高い7087円となる。
ただ、都市ガスの主原料の液化天然ガス(LNG)の輸入価格の上昇率は、昨年1月から今年3月にかけて40%程度と、原油の約半分にとどまっている。LNGは産出地と長期の売買契約を結んでいるため、石油に比べて市況変動の影響を受けにくいためだ。
また、都市ガス各社は、電気や石油など他のエネルギーとの競争を意識しており、割安感を出すための値下げが相次いでいる。東京ガスが昨年1月、東邦が昨年4月、西部ガスが今年4月に抜本値下げに踏み切った。さらに、東京は今年2月、LNGに比べて割高な液化石油ガス(LPG)の混合比率を引き下げて料金を値下げした。
このため、東京ガスでみると、昨年1月から今年7月値上げ分までの標準家庭のガス料金の上昇率は3・4%にとどまる。
[エネルギー・21世紀の選択]
中国、原発大国へ加速 30基以上の新設計画
中国で原子力発電所の建設が急ピッチで進んでいる。経済の急成長により、エネルギー確保が国の至上命令になっているためで、現在運転中のものに加え、30基以上の新設が予定されている。中国はウラン燃料を有効利用する核燃料サイクル政策にも取り組んでおり、高速増殖炉の建設も進められている。(解説部・三浦潤一)
中国の原子力開発は、1955年の旧ソ連との原子力協力協定の締結に始まる。だが、中ソ対立もあり、その後は原子力の平和利用は進んで来なかった。
しかし、中国政府は82年に原子力発電計画を発表するとともに、原子力開発を担当する組織として、中国核工業総公司を設立し、原子力発電を積極的に進める政策にかじを切った。
その後、80年代半ばから原子炉の建設が進み、94年に大亜湾1号機と秦山1号機がそれぞれ営業運転を始めた。
現在、中国国内では9基(実験炉を除く)が運転中で、今年中の運転開始を目指し、田湾発電所での2基の建設が進んでいる。これらに加え、中国国務院は8基の建設を承認している。
だが、中国の2000年の電源構成は、石炭78%、水力16%などに比べ、原子力は1・2%と極めて小さい。このため、中国政府は今年3月に策定した「第11次5か年計画」(2006年~2010年)で、「原子力を積極的に発展させる」計画を打ち出した。長期計画として、2020年までに原子力による発電総量を4000万キロ・ワット、電力構成比率も4%に高める方針だ。
4000万キロ・ワットといえば、100万キロ・ワット級の原子炉約40基分に相当し、運転中の分を除いても、30基以上の増設となる。計画達成後は、中国はフランスや日本に次ぐ原子力大国となる。
◆核燃料サイクルも推進
原子炉には、仕組みの違いによって沸騰水型と加圧水型の二つのタイプがある。中国では圧倒的に加圧水型が多く、これまで多くの原子炉を、加圧水型の技術に強い米ウエスチングハウスや、フランスやカナダの企業などに依存してきた。
東芝は今年、54億ドルもの費用でウエスチングハウスを買収することを決めたが、この裏には中国の巨大な原子力市場がある。
ただし、中国では事業リスクも大きい。中国の原子力指導部内には技術の国産化を基本方針とする「堅実路線派」と、海外企業への開放を大幅に認める「拡大路線派」の二つがある。
第9次5か年計画(96年~2000年)以降は堅実路線派が強く、外国企業に技術移転を強く求める動きが目立っている。
現在計画中の三門発電所や陽江発電所では、落札企業の発表が大幅に遅れているが、これは技術移転について、企業側と中国政府との交渉が難航しているためといわれている。
また、今後15年足らずで30基以上もの原子炉を建設するためには、加圧水型だけでなく、沸騰水型も採用していくものと見られる。
一方、高速増殖炉は2万キロ・ワットの実験炉を北京市郊外に建設中で、2010年までには臨界に達する見込みだ。さらに、年間50トンの使用済み燃料を処理できる再処理工場も甘粛省で建設中。中国は核燃料サイクルの実現に向け、着々と布石を打っている。
◆省エネへ老朽施設など整理 汚染物質排出量も削減方針
中国の国内総生産(GDP)単位当たりのエネルギー消費量は、日本の11・5倍、フランス、ドイツの7・7倍、アメリカの4倍以上に達している。
これに対し、第11次5か年計画では、GDP単位当たりの2010年のエネルギーの消費量を、2005年に比べ20%削減させる計画を打ち出している。このための具体策が、奨励させるべき施設と、制限、淘汰(とうた)させるべき施設の厳しい選別だ。
エネルギー効率を高めるため、原子力発電や、出力60万キロ・ワット以上の高性能発電施設などが「奨励させるべき施設」とされた。
一方、30万キロ・ワット以下の通常タイプの石炭火力や、老朽化した施設などは、「制限すべき施設」に入れられた。さらに、年間精製能力が100万トン以下の石油精製設備などは、「淘汰すべき施設」とされた。今後はこの方針に沿って、エネルギー施設の選別が図られる見通しだ。
工場からの廃液など汚染物質の排出量も、2010年には、GDP単位当たりで2005年に比べ10%削減する方針を打ち出している。これは、省エネなどと並び「日本に最も協力を求めたい分野」(中国石油企業幹部)でもある。
ただ、計画がすべて達成できるとは限らない。第10次5か年計画(2001年~2005年)では、600万トンの原油の国家備蓄を目指したが、石油の需要増加により、ゼロにとどまるといったケースもあった。今後も、経済の過熱が計画の実現を阻む場合も考えられる。
◆原発の自主開発目指す
◇日本エネルギー経済研究所 郭四志主任研究員
中国の最近のエネルギー政策などについて、日本エネルギー経済研究所の郭四志・主任研究員に聞いた。
――第11次5か年計画をどう評価する。
郭 省エネルギーの重視と、原子力発電については、第10次5か年計画の「適度に開発」から、「積極的に発展」との表現で、加速させたことが特徴だ。原子力発電は、温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)を大量に排出する火力発電に代わるものとの位置付けもある。
――エネルギーの供給不足の懸念は。
郭 中国の2010年の石油消費量の予測は年間4億トン近くなのに対し、国内での石油生産は1億8000万トンで、膨大な不足が予想される。他方、電力設備容量は2006年には約1000万キロ・ワット分の不足が予想されるが、不足量は年々小さくなっている今後は石油に代わるエネルギー源をいかに広めていくかが重要になる。
――原子力を計画通り開発しても、総発電電力量の4%程度で、世界平均の16%に比べ低い。
郭 今の計画達成後のことはわからない。だが、石油の代替のためにも原子力の開発が減速することはないだろう。
――中国国内には原子力技術を国産化しようとする思惑もある。
郭 中国では「自主創新」の精神が重んじられる。自主開発と同じ意味だ。原子力はフランス、ロシア、カナダなどから外資を導入し、開発を始めた。現在は技術を吸収する段階で、いずれ自主開発を目指していくだろう。その過程で、外資との間で摩擦とはいわないまでも、意見の相違は出てくるだろう。
――電力網の整備も課題だ。
郭 電力は東部の海岸地域で不足が目立っている。これを補うため、内陸部の水力発電所などから、東部に電力を送る「西電東送」がネットワーク整備の重点に置かれている。また、南部と北部の電力網を連係する「南北互供」も推進テーマとなっている。
――省エネ推進についての具体策は。
郭 中国の発電は圧倒的に石炭火力が多い。だが、石炭火力は環境面で劣る。このため、石炭を液化し、CO2排出量を減らすクリーン・コール・テクノロジーに取り組んでいる。日本の石油大手の出光興産が、山東省でクリーン・コール・プロジェクトを行っており、大歓迎されている。日本の電力会社やメーカーは、同じような技術を持っており、中国政府は非常に期待している。
原油価格の上昇などを受け、世界各国は資源確保を重視する政策に転換している。今年度の「エネルギー21世紀の選択」は、こうした世界各国のエネルギー事情を中心に紹介する。
◇郭四志氏(かく・しし) 中国・大連市出身。経済学博士。著書に「中国石油メジャー」(文真堂)。
都市ガス大手4社、7―9月、100円近く値上げ――東電などは据え置き。
電力十社と都市ガス大手四社の七―九月の料金が二十七日まとまった。液化天然ガス(LNG)輸入価格の大幅な値上がりで、都市ガス四社がそろって百円近い値上がりになる。電力は四月に値下げした東京、関西など四社が据え置き。東北、中国など五社は七月に総原価の見直しによる料金の本格改定を予定しており、値下げになる見込み。七月から値上げになるのは沖縄電力のみとなりそうだ。
各社ごとに設ける原燃料費調整制度に基づいて、三カ月ごとに原燃料費や円相場の変動を自動的に料金に反映している。電気事業連合会によると、一―三月の平均原油価格は昨年十―十二月平均に比べ、一バレル二・二ドル(四%)上昇。LNGは五・五%、発電用石炭も二%それぞれ上昇した。
LNGの上げ幅が大きかったため、都市ガスの上げ幅は電力を上回る。都市ガスの価格上昇は昨年十月以来、四・四半期(東邦ガスは三・四半期)連続になる。
電力は七月からの値下げ方針を明らかにしている五社は、現行の料金制度では燃料費上昇による上げ幅が三―三十二円になる。各社とも値下げ幅を発表していないが、燃料費上昇の影響よりも値下げ幅は大きくなるとみられ、七月からは値下げになる見通しだ。
【表】7-9月の電力・都市ガス料金
単位円。標準家庭の1カ月料金。消費税込み。4―6月比は原燃料費調整による上昇幅
| 1ヶ月の料金 | 4-6月比 | |
| ▽電力 | ||
| 北海道 | 値下げへ | - |
| 東北 | 値下げへ | - |
| 東京 | 6,269 | 0 |
| 中部 | 6,302 | 0 |
| 北陸 | 値下げへ | - |
| 関西 | 6,355 | 0 |
| 中国 | 値下げへ | - |
| 九州 | 6,211 | 0 |
| 沖縄 | 7,274 | 27 |
| ▽都市ガス | ||
| 東京 | 7,087 | 98 |
| 大阪 | 7,756 | 94 |
| 東邦 | 8,526 | 105 |
| 西部 | 8,757 | 91 |
[特集]21世紀の総合エネ戦略
06年度供給計画 重み増す安定供給の使命
電力自由化による競争の進展と、需要の伸びの鈍化を背景に、抑制基調が続いていた電力各社の設備投資額に下げ止まり感が出てきた。05年度に10社計の投資額が12年ぶりに前年度比プラスに転じたのに続き、06~07年度の投資額も前年度と比べ増加する見通しだ。しかし、5兆円に近い水準だった93年度との比較では依然として低水準にとどまる。厳しい市場環境の中で各社とも一層の経営効率化を進めており、右肩上がりの設備投資が続く材料は見当たらない。一方、昨今の原油価格高騰、中国などアジア諸国の経済成長を背景にした資源需給のひっ迫感で、安定供給への使命感は重みを増している。電力各社の今後の事業戦略の道標となる06年度供給計画を報告する。
◆販売量の伸び年0.9%に「低位成長の時代」定着 公益的課題達成へ 弾力的な設備形成
電気事業は昨年4月、高圧需要(契約電力50キロワット以上)全体が小売り自由化の対象になる新たな競争のステージに突入した。
05年2月の総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)電気事業分科会で、段階的な小売り自由化範囲の拡大、系統利用の中立機関の創設、卸電力取引市場の整備、供給エリアをまたいで送電するごとに課金されていた振替供給制度の廃止などを柱とする報告書がまとめられ、ここで盛り込まれた諸制度・組織についても昨年4月から動き始めた。
一方、02年6月施行の「エネルギー政策基本法」では、「安定供給の確保」「環境への適合」と、この2点を十分考慮したうえでの「市場原理の活用」という基本原則が示されている。
この原則に沿い、03年10月にはエネルギー需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図るため、初の「エネルギー基本計画」が閣議決定。3年後の今年、政府は同計画の見直しに着手する方針だ。
現在の資源情勢は「第3の石油危機」と言われるほど切迫している。豊富にあると思われていた石油、天然ガスが、簡単に手に入らない事態が現実に起きており、このことから中国や米国、欧州をはじめ世界各国でエネルギー安全保障に力点を置いたエネルギー戦略立案が進んでいる。
原子力発電に使うウランも例外ではない。ウラン資源の可採埋蔵量は約85年分とされ、資源に乏しい日本としては、早い段階で原子燃料サイクルの足元を固めておく必要に迫られている。
加えて、05年2月に発効した地球温暖化防止のための京都議定書で日本は、08~12年までの「第1約束期間」に温室効果ガス排出量を90年比で6%削減する義務を負う。
同年4月に閣議決定された「京都議定書目標達成計画」も踏まえ、電力業界はみずから策定する「電気事業における環境行動計画」に沿って自主的な対応を急ぐ方針。行動計画で定めた目標である二酸化炭素(CO2)排出原単位20%程度の削減(10年度時点、90年度実績比)の達成に向けて、原子力発電の推進などを柱とした取り組みを進めている。
こうした社会的要請や、地球規模での問題への対応が迫られるなか、各電力会社レベルでは、さらなる経営効率化ばかりではなく、供給信頼度の維持、エネルギー安全保障の確保、地球環境問題への対応など、公益的課題の達成に向けて、効率的かつ弾力的な設備形成を行っていくことが、これまで以上に求められている。
3月末に出そろった電力各社の06年度供給計画は、各社とも経営効率化と安定供給確保を両立させるための方向性を強く打ち出した内容となった。
中央電力協議会のまとめによると、供給計画の前提となる電力需要は10社計の15年度時点の販売電力量を9430億キロワット時と想定。04~15年度中の年平均伸び率を過去最低の0・9%(気温補正後)と見込んだ。
また、15年度の8月最大電力は1億8690万キロワット。年平均伸び率は0・8%でやはり過去最低の伸び率になると予想している。
年負荷率は15年度時点で60・9%になる見込み。省エネ対策が浸透したことや、家電などの買い替え時に省エネ型機器を選ぶといった消費活動の変化などが負荷率改善の要因と見られ、ピーク(キロ・ワット)が立ちにくいここ数年の傾向が定着しそうだ。
◆10年後見据え電源開発原子力比率43%に拡大 CO2排出減など環境問題にも留意
電源開発を進めていくうえで電気事業者が常に念頭に置いているのは、国内のエネルギー資源が乏しく、大部分を海外からの輸入に依存しているぜい弱な日本のエネルギー構造という点だ。
長期的な安定供給確保が電源開発の基本であり、経済性や環境特性、運転特性など各種電源の特性を総合的に考慮して、供給力の増強を図ってきた。
具体的には将来の需要動向、立地地域の地元情勢、燃料情勢や電源開発にかかるリードタイムなどを考慮するとともに、CO2排出量の抑制など地球環境問題への対応にも留意して、原子力を中心とした電源の多様化を着実に推進することが求められている。
電力各社の電源開発量は、15年度までの10年間で2901万キロワット。将来の販売電力量の伸びの鈍化を反映し、過去25年間で最低水準の見通しとなった
電源開発量の内訳を見ると、原子力が1226万キロワット(構成比42%)でもっとも多く、LNG(液化天然ガス)火力が1070万キロワット(同37%)、石炭火力が358万キロワット(同12%)、揚水を含む水力が218万キロワット(同8%)と続いている。
これらの電源開発によって、15年度の8月最大電力の需給バランスは、最大電力1億8690万キロワットに対し、供給力は2億763万キロワット。供給予備力2073万キロワット、供給予備率11・1%となり、安定した電力の供給が確保できる見通しだ。
また、すでに着工している電源は1646万キロワット、着工準備中の電源は2816万キロワットで、06年度中には新たに508万キロワットの電源が着工する予定だ。
電源種別の開発計画を見ると、原子力発電は安定供給や地球温暖化防止といった観点からきわめて重い役割を果たすベース電源であり、安全確保を最優先に引き続き積極的な開発を進める方針だ。
向こう10年間に建設される1226万キロワット分を織り込んだ場合の15年度末の設備容量は6149万キロワットで、発電設備全体の24%を占める見通しになる。同年度の発電電力量ベースでは4585億キロワット時で、構成比は05年度(推定実績)の31%より12ポイント高い43%を占める見込みだ。
原子力に関してはMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料を一般の原子炉に装荷して発電するプルサーマル計画と、使用済み燃料の再処理を柱とした原子燃料サイクル事業を推進することが、ぜい弱な日本のエネルギー基盤の強化につながる。
プルサーマルは九州電力の玄海原子力発電所で地元の了解を得たほか、四国電力・伊方発電所での計画も国が原子炉設置変更を許可、中部電力も浜岡原子力発電所での実施を目指し、同許可申請を国に提出するなど、着実に進展し始めている。
一方、再処理工場(青森県六ケ所村)では3月末に実際の使用済み燃料を使って運転性能や安全機能などを確かめるアクティブ試験が始まり、「原子燃料サイクルの輪」が、いよいよ本格的に、その姿を現し始めた。
水力や地熱発電は、CO2排出抑制効果など環境特性に優れた純国産エネルギーとしての強みを持つ。ただ、開発可能な地点が限られているうえ、経済性などの面で制約があることから、自然環境に与える影響や開発コストの低減などにも配慮しつつ開発を進めていく。
向こう10年間に建設される一般水力は31万キロワットで、15年度末の設備容量は2086万キロワットになる見通し。揚水は負荷追従性や経済性などを考慮し、ピーク時における供給力として適正規模の開発を推進。今後10年間の開発量は187万キロワットで、15年度末の設備容量は2700万キロワットになると見込まれる。一般水力と揚水を合わせると、15年度末の設備容量は全体の18%にあたる4786万キロワット。15年度時点での発電電力量ベースでは全体の9%の997億キロワット時。
供給安定性や経済性に優れた石炭火力は、資源需給がひっ迫し、燃料価格の高騰が続くなかで貴重な戦力。熱効率の向上など環境面に配慮しながら今後10年間で358万キロワットを開発。熱効率が高く、環境特性に優れたLNG火力は1070万キロワットを開発する計画で、15年度末の設備容量は石炭火力が4012万キロワット(全体に占める構成比16%)、LNG火力が6403万キロワット(同25%)となる。同年度における発電電力量ベースでは、石炭火力が2024億キロワット時(同19%)、LNGが2322億キロワット時(同22%)を占める見込みになる。
一方、太陽光や風力発電などの新エネルギーは、クリーンな純国産エネルギーであることから、「グリーン電力制度」の活用など従来の普及促進に向けた取り組みを継続するとともに、03年度から施行された「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)」の義務の履行を通じて、国の新エネルギー利用目標の達成に協力する方針。さらに廃棄物発電についても、供給安定性やコスト面などを評価したうえで、適切な活用を図っていく。
◆広域開発も着実に大間、敦賀3など 設備投資11.4%増07年度もプラスに
電力の安定供給を将来にわたって確保するため、需給構造の差異など地域の特性を生かし、既存の設備を含め全国的な観点から電源の広域開発・広域融通が計画されている。
電力各社の供給計画で計上された、今後10年間に開発される広域開発電源は約506万キロワット。具体的には原子力がJパワー(電源開発)の大間(ABWR=改良型沸騰水型軽水炉、138万3000キロワット)、日本原子力発電の敦賀3号(APWR=改良型加圧水型軽水炉、153万8000キロワット)、同4号(同)を計画。火力ではJパワーの磯子新2号(60万キロワット)が計画されている。
これらの広域開発電源を含めた供給力の活用によって、広域融通電力は06年度で656万キロワット、10年度で424万キロワット、15年度で430万キロワットになると計画されている。
一方、中央電力協議会のまとめによると、06年度の電力10社計の工事資金(設備投資額)は前年度推定実績比11.4%増の1兆7134億円。07年度も前年度比8.2%増の1兆8537億円に回復する見通しだ。
93年度(4兆9340億円、10社計)を頂点に、設備投資額は一貫して減少基調にあったが、05年度には12年ぶりにプラスに転じ、07年度まで3年連続で前年水準を上回る見通しになる。
向こう10年間での原子力発電の新規建設基数は9基。このうちJパワーの大間が今年8月に着工する予定。
今年度はこのほか、関西電力の堺港1~5号機(LNG火力、計200万キロワット)、中部電力の上越1号系列(同、118万キロワット)などが着工する予定だ。
ディーエムイー開発、プラントの運転研究を終了
ディーエムイー開発(東京都港区)は、合成燃料のジメチルエーテル(DME)を直接合成法で商業化するための実証設備となる日量100トンプラント(北海道釧路市)の運転研究を終了した。03年12月から計2万トンのDMEを製造し、連続運転5カ月を実現。触媒の活性は商業規模で1年以上の耐久性を確認した。今後は商業ステップに入るが、時期と海外立地の場所は流動的。同社はJFEホールディングスを中心に出光興産、大陽日酸など10社が出資して設立した。
ディーエムイー開発、DME直接合成技術実証実験修了
ディーエムイー開発(大野陽太郎社長、東京都港区)は22日、ジメチルエーテル(DME)の直接合成技術の商用化を目指す実証試験を完了したと発表した。北海道白糠郡の実証プラント(100トンクラス)で03年12月からスタート、これまでに6回、累計346日の運転を行い、約2万トンのDMEを生産した。反応率や生産能力は、当初の目標を上回る水準に達したとしている。
同社は、JFEホールディングスや豊田通商、日立製作所、出光興産など10社が共同出資する研究法人。軽油の代替燃料として期待されるDMEを大量廉価に製造する技術開発を目的に設立された。
JFEなどのDME開発/生産実証試験を完了
JFEホールディングスなどが出資する次世代燃料の開発会社、ディーエムイー開発(本社・東京都港区、社長・大野陽太郎氏)は22日、北海道白糠町で行っていた日量100トンのDME(ジメチルエーテル)実証プラントの運転研究が終了した、と発表した。
同プラントは、03年12月に実証試験を開始した世界最大級のDME生産プラント。直接合成法による大量、安価なDMEの製造技術の確立が試験の目的。
06年5月までに計6回、累計346日稼動させ、約2万トンのDMEを生産した。
実験では、各回ともに安定的な品質の燃料を生産、総合反応率96%、日当たり生産量109トン、DME純度99・8%、連続運転5カ月間などを達成。いずれも目標を上回った。
また、プラントのスケールアップや最適化に必要なエンジニアリングデータを採取した。
JFEHDなど/DME研究/成功裡に完了
実証プラント 生産累計2万トン
JFEホールディングス、豊田通商、丸紅など10社が出資するディーエムイー開発(本社=東京都港区、大野陽太郎社長)は22日、同社研究所(北海道白糠郡)にある1日当たり100トン規模のDME(ジメチルエーテル)実証プラントの運転研究を成功裡に完了したと発表した。
同社はDME直接合成技術の商用化に向けた技術開発を推進する研究法人として2001年12月に設立された。02年7月から経済産業省資源エネルギー庁の補助事業として「環境負荷低減型燃料転換技術開発」を進めている。
実証プラントは稼働中のDME生産プラントとしては世界最大規模という。直接合成法による大量かつ安価なDME製造技術の確立をめざし、運転研究を03年12月に開始。本年5月まで計6回、累計346日におよぶ運転により、約2万トンのDMEを生産した。
6回の運転において全体的に安定した状態を実現、維持した上で、総合反応率96%、1日当たり生産量109トン、DME純度99・8%、連続運転5カ月間――を達成するなど、いずれも開発目標値を上回る実績をあげた。
またDMEの合成反応を促進し、プラントの経済性を大きく左右するDME合成触媒についても、触媒活性が安定し、商用プラントにおいて少なくとも1年以上の使用に耐えることを確認。
同時に実証プラントの運転を通じて、プラントのスケールアップや最適化に必要となる流動、伝熱、反応に関するエンジニアリングデータを採取することで、商用プラントの基本設計技術の確立に向けた情報も取得した。
DME開発は運転研究の結果を踏まえ、商用プラント技術として取りまとめ、出資各社における今後のDME実用化に向けた取り組みを通じて、エネルギー問題、環境問題の解決に貢献していく考え。
DMEは化学式CH3OCH3からなる最も簡単なエーテル。国内で年間1万トン、世界で15万トン程度生産され、そのほとんどがスプレー用噴射剤として使用されている。燃焼時に硫黄酸化物や煤の発生が全くない環境負荷の低いクリーンエネルギーであり、毒性もなく、優れたハンドリング特性から産業用燃料をはじめ、輸送用燃料(ディーゼル自動車、燃料電池自動車)、発電用燃料(火力発電、コジュネ発電、燃料電池)などの幅広い利用が見込まれている。
世界的な人口増加や経済活動の拡大によるエネルギー需要増大が予想される。こうした中、エネルギーの安定的な確保やエネルギー大量消費に伴い増大する地球環境負荷の低減が大きな課題となっている。DMEはこれらの課題に解決策を与えうる新エネルギーの一つとして注目を集めている
JFE子会社・ディーエムイー開発がDME日産109トンを達成
JFEホールディングス子会社のディーエムイー開発(東京都港区、大野陽太郎社長)は22日、環境負荷の少ない液体燃料であるジメチルエーテル(DME)を合成する実証プラント(北海道白糠郡白糠町)で開発目標を上回る実績を上げ、実証試験を完了したと発表した。実証プラントは03年12月からDMEの生産を開始し、2年半で約2万トンを生産。当初は1日当たり100トンを生産し、最長3カ月の連続運転を5回実施する予定だったが、今年5月までに連続運転5カ月間を達成したほか、1日当たり109トンを生産することに成功した。同社は実証プラントで得たデータを基に、商用プラントの設計技術確立を急ぐ。
実証プラントは、稼働中のDME生産プラントとして世界最大規模。プラントが竣工した03年11月の段階では、1日当たり100トンの生産、合成ガスからDMEに転換できる割合(総合反応率)で95%以上、DME純度99%以上といった目標を掲げていた。
同社は03年12月~06年5月までに合計6回、累計346日にわたって実証プラントを運転し、約2万トンのDMEを生産。1日当たり109トンを生産できたほか、総合反応率96%、DME純度99・8%といずれも目標数値をクリアした。
DMEを生産する反応装置の中に入れる合成触媒も、実証プラントでは安定した状態を保った。同じ合成触媒を商用プラントで使用した場合、1年以上の使用に十分耐えられることを確認した。
今回の実証試験について同社は、「プラントの大型化に必要なエンジニアリングデータを得られた。商用プラントの基本設計技術を確立するために貴重な情報を入手できた」としている。
従来の技術では、水素と一酸化炭素の合成ガスからメタノールを生み出し、化学反応を起こしてからDMEを生産する。これに対し、ディーエムイー開発の実証プラントでは合成ガスから直接DMEを生産している。
このDME生産法は「直接合成法」と呼ばれ、大量のDMEを安価に生産する技術として注目されている。直接合成法はJFEグループが1989年から開発を続けている技術で、97~00年には1日当たり5トンのDMEを試験プラントで生産することに成功している。
ディーエムイー開発にはJFEホールディングスのほか、豊田通商、日立製作所、丸紅、出光興産、エルエヌジージャパン、石油資源開発などが出資している。
DME開発、DME100トン/日直接合成実証プラントの運転研究に成功
発表日:2006年6月22日
DME100トン/日直接合成実証プラントの運転研究を成功裡に完了
有限会社ディーエムイー開発※1(以下「DME開発」)は、DME(ジメチルエーテル)直接合成技術※2の商用化を目指し、技術開発を推進する研究法人として2001年12月に設立され、2002年7月より経済産業省資源エネルギー庁の補助事業として、「環境負荷低減型燃料転換技術開発」を進めており、この度、当社研究所におけるDME100トン/日直接合成実証プラントの運転研究を成功裡に完了いたしました。

本実証プラントは2003年11月に竣工し、現在稼動中のDME生産プラントとしては世界最大規模のものです。当社は、直接合成法による大量かつ安価なDME製造技術の確立を目指し、本実証プラントの運転研究を2003年12月より開始し、2006年5月まで合計6回、累計346日におよぶ運転により、約2万トンのDMEを生産※3してまいりました。
6回の運転において、全体的に安定した状態を実現、維持したうえで、総合反応率96%、1日当たり生産量109トン、DME純度99.8%、連続運転5ヶ月間を達成するなど、いずれも開発目標値を上回る実績※3をあげることができました。また、DMEの合成反応を促進し、プラントの経済性を大きく左右するDME合成触媒※2についても、運転に使用された触媒の活性は安定しており、商用プラントにおいて少なくとも1年以上の使用に耐えることが確認できました。
同時に、本実証プラントの運転を通じて、プラントのスケールアップや最適化に必要となる流動、伝熱、反応に関するエンジニアリングデータを採取することにより、商用プラントの基本設計技術の確立に向けての貴重な情報を取得することができました。
アジアを中心とした世界的な人口増加や経済活動の拡大により、更なるエネルギー需要の増大が予想される中、エネルギーの安定的な確保とエネルギー大量消費に伴い増大する地球環境負荷の低減が大きな課題となっています。DMEはこれらの課題に解決策を与えうる新エネルギーの一つとして期待されています。
DME開発は、成功裡に完了した実証プラントにおける運転研究の結果を踏まえ、これまでの成果を集大成し、商用プラント技術として取り纏め、出資各社における今後のDME実用化に向けた取組みを通じて、エネルギー問題、環境問題の解決に貢献してまいります。
(*2)DME関連用語について
DME:
化学式CH3OCH3からなる最も簡単なエーテルである。現在は日本で1万トン/年、世界で15万トン/年程度生産されており、そのほとんどがスプレー用噴射剤(化粧品、塗料、農薬用)として使用されている。
DMEは、多様な炭化水素系原料から製造が可能であると共に、燃焼時に硫黄酸化物(SOX)やすす(PM)の発生が全くない環境負荷の低いクリーンエネルギーであり、さらに毒性がなく、優れたハンドリング特性から、産業用燃料(ボイラーなど)をはじめ、輸送用燃料(ディーゼル自動車、燃料電池自動車)、発電用燃料(火力発電、コジェネ発電、燃料電池)および化学原料として幅広い利用が見込まれている。最近では、中国で小規模ながらLPG代替燃料として、商用化が始まっている。
DME直接合成法:
水素と一酸化炭素を主成分とする合成ガスからメタノール(CH3OH)を合成し、次に、メタノールの脱水反応によりDMEを製造する間接合成法(従来技術)に対し、メタノールを経由せず、合成ガスから直接DMEを合成する方法をいう。
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総合反応率:原料として供給された合成ガスがDME、メタノール、二酸化炭素などに転換した割合を示す。プラントの効率を示す重要な指標で、できる限り高いことが望ましい。
DME合成触媒:反応装置の中に装入され、それ自体は消費されないがDME合成反応を促進する作用を持つ物質で、活性(合成反応促進効果)が高く安定していることが望ましい。活性が極端に低下した場合は、交換する必要がある。今回開発、使用されたDME合成触媒は、反応成績、寿命の点で、既に工業化されているメタノール合成触媒と同等の性能を示しており、量産技術も確立されている。
(※3) 運転研究の実績概要













