DME特集
石油代替燃料DMEプラント、東洋エンジが中国で受注へ
東洋エンジニアリングは石油代替燃料の一つであるジメチルエーテル(DME)で、中国の石油化学大手、瀘天化集団が計画している世界最大の製造プラントを近く受注する。設備は年産100万トン規模で総事業費は800億―1000億円、東洋エンジの受注額は最大で100億円程度の見込み。中国では発電やディーゼル車向けに大規模DMEプラントの建設計画が相次ぎ浮上しており、今回の実績をテコに受注拡大を目指す。
石油代替燃料をめぐっては新日本石油など6社や日揮と大阪ガスが、天然ガスから生産するガス・ツー・リキッド(GTL)事業に参入している。DMEと合わせ開発、受注競争が本格化する。
東洋エンジは、同集団とプラント受注の前段階となる技術供与契約を結んだ。同集団は早ければ2010年の稼働を目指し内蒙古自治区で設備建設を計画、中国政府に認可申請中。認可は来年半ばの見通しで、東洋エンジは認可が出れば正式受注し、基本設計を担当するほか製造工程で必要な触媒も納入する。
生産するDMEはパイプラインで北京など都市近郊に運ばれ、発電や自動車向けの燃料として使われる見込み。DMEプラントではイランの国営石油化学会社が08年稼働予定の年産80万トン設備が世界最大だったが、今回の設備は生産能力でこれを上回る。
中国内陸部では大半のエネルギーを石炭や石油に依存しており、大気汚染が深刻になっている。このため環境負荷が少ない液化石油ガス(LPG)を導入してきたが輸送コストがかさむため、DMEに置き換える動きが出ていた。東洋エンジは今年3月、瀘天化集団向けに中国で初めてとなる年産11万トンのDME量産設備を稼働させていた。
原油価格の高止まりを受け世界的に石油代替燃料への関心が高まっている。新日石や日揮などがGTLの実用化や受注を急ぐ一方、JFEホールディングスなどはDMEに注力している。
東洋エンジニアリング
年産100万トン、石油代替燃料DME、最大プラント中国で受注
東洋エンジニアリングは石油代替燃料の一つであるジメチルエーテル(DME)で、中国の石油化学大手、瀘天化集団が計画している世界最大の製造プラントを近く受注する。設備は年産百万トン規模で総事業費は八百億―千億円、東洋エンジの受注額は最大で百億円程度の見込み。中国では発電やディーゼル車向けに大規模DMEプラントの建設計画が相次ぎ浮上しており、今回の実績をテコに受注拡大を目指す。
石油代替燃料をめぐっては新日本石油など六社や日揮と大阪ガスが、天然ガスから生産するガス・ツー・リキッド(GTL)事業に参入している。DMEと合わせ開発、受注競争が本格化する。
東洋エンジは、同集団とプラント受注の前段階となる技術供与契約を結んだ。同集団は早ければ二〇一〇年の稼働を目指し内蒙古自治区で設備建設を計画、中国政府に認可申請中。認可は来年半ばの見通しで、東洋エンジは認可が出れば正式受注し、基本設計を担当するほか製造工程で必要な触媒も納入する。
生産するDMEはパイプラインで北京など都市近郊に運ばれ、発電や自動車向けの燃料として使われる見込み。DMEプラントではイランの国営石油化学会社が〇八年稼働予定の年産八十万トン設備が世界最大だったが、今回の設備は生産能力でこれを上回る。
中国内陸部では大半のエネルギーを石炭や石油に依存しており、大気汚染が深刻になっている。このため環境負荷が少ない液化石油ガス(LPG)を導入してきたが輸送コストがかさむため、DMEに置き換える動きが出ていた。東洋エンジは今年三月、瀘天化集団向けに中国で初めてとなる年産十一万トンのDME量産設備を稼働させていた。
原油価格の高止まりを受け世界的に石油代替燃料への関心が高まっている。新日石や日揮などがGTLの実用化や受注を急ぐ一方、JFEホールディングスなどはDMEに注力している。
▼ジメチルエーテル(DME) 天然ガスなどを原料に改質した燃料。常温では気体だが圧力をかけると液体になる。大気汚染の原因となる硫黄酸化物(SOx)などが発生しない特徴がある。ただ、専用の輸送インフラが必要なため、液化天然ガス(LNG)などのインフラが整っていない地域で利用拡大が見込まれている。
【図・写真】東洋エンジは瀘天化集団向けで小規模のDMEプラントの納入実績がある
◆グリーン燃料[エネルギー問題]
東京都がうちだし、全国的に広がろうとしているディーゼル規制(粉塵、窒素酸化物の排出抑制)に対応する方法としては、粉塵除去器装備、石油会社の軽油脱硫の強化、燃料代替の三つがある。そのうち燃料の代替としては、天然ガス、LPG(液化プロパンガス)、DME(ジメチルエーテル:炭鉱のメタンガスからの合成品)、GTL(天然ガスを液化して軽油をつくる)、メタノール(燃料電池に用いることも含めて)などを用いることが考えられる。経済性や燃料供給インフラの整備の問題があり、コスト高になるが、資源量的な制約への対応も含めて、グリーン燃料の利用が検討されている。
中国がDMEを大増産へ
中国でDME(ジメチルエーテル)の大増産が始まる見通しだ。現在、計画中の主要プラントだけでも08年~09年の前後には年産1千万トンを超える規模に達する。民生用から自動車用燃料として、2010年前後には本格普及が始まりそうだ。日本ではようやく5万~10万トン/年の燃料用DMEプラントが動き出そうとしているところで、その差は大きい。
今年10月韓国で開かれた第3回アジアDME会議における中国側の報告によると、現在、DME製造プラントの建設が中国各地で進んでおり、内モンゴル地区の山東久泰化工技化、安徽省の新奥集団などの建設中のもの、四川省で稼働を始めた濾天化集団のプラントなど、主要プラントだけでも07年から09年にかけて350万トン程度のDME生産が始まる見通し。
日本の燃料関係者によると、このほかに各地で計画されているプラント建設の情報を集約すると、同じ時期に年産1500万トン程度に達すると見られる。また、明確に確認できないものまで含めると、2千万トン規模を超えるという数字もある。現在、中国国内のDME生産は、エアゾール用などで年25万トン程度と見られており、数年の間に60倍から80倍まで生産が拡大することになる。
中国側のDME会議参加者の発言によると、中国国内に石油、天然ガスの埋蔵量が十分でなく、それぞれの輸入価格も上昇している問題があるため、石油、天然ガスの輸入は継続するものの、埋蔵量が豊富な石炭と原子力を利用エネルギーの中心としていくことが、国策として決定しているという。
石炭利用を進める場合、環境問題、地球温暖化問題の観点からクリーンで、効率的な利用を進めるために、石炭をガス化しDMEへ転換することが利用技術として求められており、大規模プラント建設により生産コストが低下すれば「将来の可能性は大きい」と指摘する。特に自動車燃料としての期待が高い。輸入燃料の運搬が困難な内陸部ほど、この傾向が強いそうだ。
内モンゴル地区の久泰化工技化、寧夏回族自治区の寧夏煤業集団などの計画は、現地で産出する石炭を利用し、DMEを合成する。
日本では、技術的に優位に立つため、石炭ガス、天然ガスからDMEを直接合成するプラント開発と、その利用技術を中心に技術開発が進んできた。利用技術では神奈川県京浜臨海部DME普及モデル事業、北九州DMEモデルタウン構想などとしてプロジェクトが取り組まれ、コジェネレーション、ディーゼル代替の輸送用燃料として応用技術開発が取り組まれてきており、DMEバス、小型トラックなどが開発された。
また国土交通省関連でも、交通安全環境研究所でDME自動車実用化プロジェクトが取り組まれており、新長期排ガス規制をクリアしたDME大型ディーゼルトラックの開発を完了している。
DME自体がガス燃料で粒子状物質の発生がない。いくつかのプロジェクトのなかで開発されたコモンレール式DMEディーゼルエンジンでは、DMEを使うことで酸化触媒程度の簡単な後処理でポスト新長期規制をクリアした、という未確認情報もある。
DMEの応用技術は世界最先端ながら日本国内で本格的な普及プロジェクトへ発展しないのは、燃料供給の見通しがつかないからのようだ。
ただ、国内のDMEプロジェクトのひとつとして「新潟DMEメッカ構想」(新潟DME普及促進事業)があり、この一環で、三菱ガス化学新潟工場に年産10万トンのDME製造プラントを設置する計画が進んでいる。プラントは、輸入メタノールを原料に脱水法というプロセスを経てDMEを製造するもので、07年末には年産5万~10万トンの規模で生産を始める。
国土交通省のDME自動車の実用化プロジェクトも、すでにDME供給施設(スタンド)が設置されている横浜と新潟を結んで、DME自動車の実走行試験を進め、普及に弾みをつける計画だ。
DME自動車の本格普及が始まるのは中国か、日本か。燃料供給は確実に中国が先になりそうで、日本メーカーの技術開発も中国市場を視野に置いている。(論説委員 青山信一)
日本DMEフォーラムと開発技術学会が合同研究発表会
日本DMEフォーラム(JDF)、開発技術学会(IDES)による合同研究発表会が12月4日、東京都文京区本郷の東京大学山上会館で開かれた。「地域エネルギーとしてのDME(ジメチルエーテル)、BDF(バイオディーゼル)およびバイオ燃料」をテーマに、地域における新燃料に関する活動状況、利用技術の研究について報告された。
DMEに関しては、神奈川県京浜臨海部、北九州などで地域利用のプロジェクトが取り組まれ、技術開発が進んできた。これに伴い応用技術の開発が進んできたが、その一方でDMEについての供給見通しがなく、同時に「カーボンニュートラル」のバイオ燃料が注目されだしたことで、新燃料の利用プロジェクトも軌道修正されだした。
とくにガソリンエンジン用のバイオエタノール、ディーゼルエンジン用のBDFは「京都議定書目標達成計画」で政府による利用拡大が目標設定された。地球温暖化ばかりでなく、エネルギー安全保障の観点からも利用エネルギーの分散化が必要と見られており、植物由来のバイオ燃料の利用拡大が政策的に進められようとしている。
このため、従来DME利用をベースに取り組まれていた地域の新燃料利用プロジェクトも、バイオ燃料を利用する方向に動き出している。DMEがディーゼルエンジン用の燃料であることからDMEにBDFを混入する方向で利用技術の開発が進んでいる。DMEを加えることでBDFにとっても燃料性質が向上し、特にPM削減の効果があることがわかっている。
このため、北九州DME研究会では「サンフラワープロジェクト」として、ヒマワリの種から食用油を絞り、その廃油をエステル化しBDFにすること、同時にヒマワリの葉や茎をガス化してDMEを合成、最終的には両者を混合し、発電や輸送用のエコディーゼル燃料として利用するための企業化調査が進んでいることが報告された。東南アジアのタイでもパームをベースにした同様なプロジェクトが進んでいる。
また新潟DME研究会でも「新潟菜の花プラン」として、バイオ混合DME発電システムの実用化研究が動き出しているなどを報告した。DMEにとってバイオ燃料を加えることで、潤滑性と温暖化対策強化につながる。BDFにとってはDMEにより排ガス性能補強が可能になるという。
ただ問題は、国内で生産するBDFの生産コストで、北海道バイオマス・DME研究会の報告では、菜種から搾油した油をエステル化しBDFにするだけでは、採算が取れず、搾油量の3%程度をバージン食糧油として高額販売することで、どうにか採算をあわすことができるという計算モデルを発表した。
JDFとIDESの合同研究会は今回が初めて。来年、日本開催が予定されている第4回アジアDME会議に向けて、新燃料の研究論議を活発化させたい意向だ。
社説:急がれる二酸化炭素固定化技術の開発
中国では石炭資源の開発が急ピッチで進んでいる。国内に豊富にある資源である石炭を液化するCTL技術によって、メタノールを作ったり、さらにDME(ジメチルエーテル)を合成することで、化学工業の原料から家庭や輸送用燃料をまかなう方向のようだ。
とりわけ民生用、輸送用の新燃料として期待されているのがDMEで、主要プラントだけで、少なく見積もっても07年末には年産100万トンを超える規模に達する。
さらに計画を積み上げると、2010年過ぎには年産1500万トンという数字も見込まれる。
中国は石油輸入国に転じて久しく、経済発展にともない今後も石油の輸入量が拡大を続けることは間違いない。一方で、エネルギーセキュリティーの面で、国内に豊富にある石炭の利用を促進するということのようだ。石炭の利用促進は、地球全体で高まっている石油需要を緩和することにつながるから、石油を100%輸入する日本にとっては好材料の一面もあるが、地球温暖化の視点で安心できるのだろうか。
石炭は3億年ほど前の植物が原料である。つまり太古の時代に植物が吸収し、光合成により固定化したCO2であり、その石炭利用を進めることは固定化したCO2を再び大気に戻すことを意味する。使えば使うだけ、否が応でも大気中のCO2濃度は上昇することになるのだろう。
なるほど、植物由来のCO2だから、再び植物が吸収して石炭に戻すというサイクルで固定化すればよいのだが、その還元サイクルは人間の尺度で測るすべもない。植物由来の新燃料、エタノールやバイオディーゼルとは桁(けた)が違う。
現在、CO2の上昇により温暖化が進み、その影響で自然災害が発生していると言われる。石油とともに石炭の利用も進めば、大気中のCO2濃度の上昇に歯止めをかけるのは不可能に近い。
なるほど、日本をはじめ先進諸国は懸命にCO2の排出抑制に努めている。その他の地域では、先進諸国に追いつくために産業化のスピードを速め、都市化も進んだ。エネルギーを大量消費する都市社会があちこちに出現しているということだ。移動に対する要求も高まるから、自動車の需要も高まっている。
そして、こうして生じた需要が、日本車メーカーの好決算をもたらしている。世界的な需要の高まりの中でビジネスチャンスを広げることは、個々の企業努力である。その一方で、結果についての責任も世界の「企業市民」として問われることになるのだろう。
なるほど、商品力アップにつながる燃費性能向上や環境に優しいといわれる燃料への対応などに、各社懸命に取り組んでいる。しかし、燃費性能がいかに優れていようとも、総体的に数が増えれば、CO2の排出量は増えることになる。そして、都市生活への憧れや自動車の利用を止められないとしたら、排出した後のCO2を固定化するしか解決するための手段はないはずだ。
もちろんCO2固定化技術の開発は、種々の取り組みが行われている。その一方で、日本の自動車産業として開発に向けた明確な姿勢を示す時期に差しかかってきたようでもある。
エネルギーと食料
社説 :バイオマス燃料、導入目標の一人歩きは危険
輸送用バイオマス燃料の導入が目指されている。当面の目標として、05年4月に閣議決定した「京都議定書目標達成計画」の中で、2010年に原油換算50万キロリットルという数値を設定した。その目標達成の見通しが立たないうちに、「600万キロリットル」という導入目標が安倍首相から打ち上げられた。
植物由来のバイオマス燃料は、燃料として使用しても再び植物が光合成により二酸化炭素を吸収するということで「温暖化フリー」とされ、温暖化ガスの排出量にカウントしないでも良いとされている。石油依存度を下げることにも役立つことになり、総論的には使用量は多ければ多いほど良い、ということになるのだろう。
現在、世界的に導入が進んでいるのは、ガソリン車対策のためのバイオエタノールと、ディーゼル車のためのバイオディーゼル(BDF)だ。日本ではいくつかの地域で実証実験を進めているが、欧米先進国に比べると、大きく後れをとっていると、評される。
しかし、石油資源ばかりでなく食糧需給を大幅に輸入に頼る日本としては、遅れてしまっても仕方がない面はある。ガソリンスタンド側の問題もあるが、ガソリンに3%エタノールを混合するE3の規格は決まっても、原料の安定供給が見込めないために導入が具体化していない。
ある試算によると、糖蜜、規格外小麦、そして毎年30万トン程度余るとされるコメ、これに建設廃材などの木質から調達できるバイオエタノールを加えても、国内で調達できるバイオエタノールの量は、10年で原油換算2万5千キロリットルから3万キロリットル程度といわれており、導入目標との乖(かい)離は大きい。
調達を拡大する方策は3点ほどで、手っ取り早い対策がバイオエタノールの生産国からの輸入を拡大することである。中長期的には、農業・林業を振興し、資源作物の生産を拡大すること、それに応じたバイオマス燃料の新たな生産技術を確立することだ。
製品輸入を考えると、ブラジルなどからの調達が見込めるが、すでに米国、中国からの引き合いがあり、ブラジル国内の需要を考えると、日本に多くを回すだけの量的余裕はないようだ。本来、資源作物は気候変動に左右され、不安定な要素が多いもので、その多くを輸入に頼るのはエネルギーの安定供給に新たなリスクを持ち込むことにもなってくる。
また、世界にはすでに8億4千万人ほど飢餓に苦しむ人がいる。今後も人口は増え続けると見られており、食糧と資源作物とが世界的に耕地を取り合うことになれば、飢餓問題を一層深刻なものにする。
BDFの有力な供給材であるパームも食用油として供給されている。東南アジアから燃料用に輸入することも可能で、現地も生産拡大は可能だというが、パーム栽培の拡大が、すでに熱帯雨林の破壊につながることが指摘されだしている。オラウータンの生息地への配慮もさることながら、温暖化防止が温暖化を加速する結果になる恐れもでてきているのだ。
バイオマス燃料の導入拡大は進めなければならないことだが、燃料と自動車という関係以外にさらに複雑な問題を背負い込む、ということを心に留めておくべきだ。その意味で、目標数値の一人歩きは危険なのだ。
石油に代わる燃料としての利用拡大を考えるのであれば、できるだけ原材料を国内で調達し、生産することが重要になる。そのためには農業・林業の振興が必要なことは否定しない。同時に数字ばかりを追うのではなく、原料調達の足元を見ながらバイオマス燃料を効率的に生産する新技術の開発に力を入れるべきだろう。
(上)膨張する胃袋―魚の値上がり、食卓直撃
マグロやエビ、大豆やトウモロコシなど食糧の国際価格が高騰し、国内の食卓を直撃している。世界的な需要増に加え、原油高の影響で石油代替燃料などに穀物の用途が広がり、需給バランスが崩れたからだ。各国の資源保護の思惑も重なり、世界的な食糧争奪戦の様相を呈してきた。
「アメ横」に異変
年末のかき入れ時を迎えた京・上野の「アメ横」。鮮魚店の軒先に六百―八百グラムのマグロのかたまりが並ぶ。二十二日、メバチマグロの中トロの小売価格は一パック千円程度だった。昨年末とほぼ同じだが、重さは一割程度少ない。
ある鮮魚店店員は「高いイメージがつくと売れなくなるから」と小型化の理由を説明する。仕入れ価格は二割程度上がっており、利益確保のためやむを得ないという。
背景には世界的な需要増がある。国連食糧農業機関によると、二〇〇四年の世界のマグロ漁獲量は一九九〇年に比べ三割近く増えた。日本は最大の消費国で四分の一を占めるが、消費量は五十万トン前後でほぼ横ばい。漁獲量の増加分は日本以外の国が消費している。
欧米ではBSE(牛海綿状脳症)問題や健康志向で牛肉消費量が減り、代わってツナ缶やステーキ向けを中心にマグロ消費量が拡大している。双日の林弘二・水産担当バイスプレジデントによると、米国は刺し身やすし用の需要だけで五万トンと五年で倍増した。現在は年五千トン程度の中国の刺し身需要も五年後に米国並みの五万トン前後に増えるとの見通しもある。
需要増の一方で、漁獲量規制によって供給量は減る。十月から十一月にかけミナミマグロ、クロマグロの漁獲枠削減が決まった。メバチ、キハダの両マグロの漁獲量は一部海域で現状維持となったが、資源保護の高まりで価格が上昇する。マグロはその象徴だ。
〇四年の世界の水産物捕獲量(国連食糧農業機関調べ)は九〇年に比べ三五%増えたが、日本の消費量の比率は六・七%と九〇年より一・一ポイント低下している。世界的に買い付け競争が激しいのはマグロだけではない。
買い付けで劣勢
輸入タコにも異変が起きている。あるスーパーは足のぶつ切りだけを売っていたが、最近は加工食品に回していた頭の部分も細かく切り、足に混ぜている。それでも昨年より二割ほど高い一パック二百三十八円だ。
〇五年の冷凍タコの輸入量はピークだった〇〇年のほぼ半分の五万五千トンまで落ち込んだ。主要産地のモロッコが捕獲規制を強めたため、欧州の主要消費国スペインが輸入国に転じて「競合相手になった」(マルハ)。この結果、輸入タコの卸値は五年余りで二・四倍に上がった。
中堅スーパーのいなげやには今秋から「バナメイ」というエビが並び始めた。インドネシアやタイから輸入するが、価格は一尾当たり五十円と主力のブラックタイガーより約十円安い。現在のブラックタイガー卸値は前年同時期より一五%高いため、少しでも割安感を出そうとエビの売り場にバナメイを加えた。
ただエビの買い付けで日本は劣勢だ。九月末のブラックタイガーの買い付けで、日本企業の一キロ十一ドル台に対し、米国企業は十二ドルを提示した。「日本勢はついていけない」と、卸業者からため息が漏れる。
「欧米、アジアの水産物需要は明らかに伸びるが、日本が買い負けている」。ニチロとの経営統合発表の記者会見で十一日、マルハグループ本社の五十嵐勇二社長は危機感をあらわにした。
小麦の国際価格は新興国の需要増に豪州の干ばつが重なり、今秋十年ぶりの高値を付けた。大豆は豊作でも中国の輸入増で高値が続く。世界的な争奪戦は魚に限らず食糧全体に広がりつつある。
(下)砂糖より燃料―原油高、穀物に飛び火
米国やブラジルの穀物畑。丸紅の食糧担当者が商談に訪れると「こんな人が来た」と名刺を渡された。見ると「同じ丸紅のエネルギー担当の社員。びっくりした」。穀物の調達を巡り、丸紅では食糧とエネルギー部門が重なるケースが見受けられる。原因は原油高だ。
商社内で綱引き
ガソリン、軽油価格の高騰で注目を集めるのが割安で安定的に調達できるエタノールなどの代替燃料。その原料となるトウモロコシやサトウキビ、菜種を食糧とエネルギーとが奪い合う。
トウモロコシはかつては大半が食糧向け。だが米農務省によると今年度、米国産のエタノール向け比率は一八%に高まる見込みだ。この五年で三倍に膨らんだ。
サトウキビといえば砂糖の原料に使うのが一般的なイメージだった。それがサトウキビの主産地、ブラジルでは現在、エタノール向け比率が半分に達している。
原油高で穀物の需要構造が大きく変わり、食需給のバランスが崩れた。サトウキビ(砂糖)の国際価格は二月に二十五年ぶりの高値をつけた。トウモロコシは十年ぶり、菜種も二年ぶりの高値圏にある。
サトウキビ高騰で製糖各社は今春、上白糖の出荷価格を引き上げた。店頭価格にも浸透。農畜産業振興機構(東京・港)によると、十一月の東京地区のスーパーの上白糖の平均価格は一キロ二百六・六円。前年同月に比べ二十二・九円(一二%)上がった。
菜種などから造る食用油は来春、店頭価格が上がりそうだ。原料高騰などを理由に日清オイリオグループやJ―オイルミルズは四月、家庭用サラダ油やキャノーラ油で一本(一・五キロ入り)三十円の値上げを発表。両社は菜種高騰が収まらないことから、来年一月出荷から同三十円の再値上げを表明した。
需給構造の変化による食糧価格上昇は、決して一時的なものではない。
環境規制も影響
思わぬ代替品としてタラが注目されている。日本では鍋用食材として定着しているが、欧州ではBSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザの影響で、牛肉や鶏肉の代替たんぱく源として需要が生まれた。消費者の安全・安心志向が需給構造を変えた。
日本のマダラの輸入量(貿易統計)は一―十月の累計で前年同期を二〇%下回る。店頭価格(塩タラ切り身)は百グラム二百五十円前後と前年同期に比べ二五%高い。
旺盛な需要を満たすうえで、供給には様々な規制がある。代表的なのは環境だ。残留農薬の規制を厳しくしたポジティブリスト制度。五月末の導入から間もない六月に中国産サヤエンドウが初の違反事例となった。
中国からのサヤエンドウの輸入は急減し、一カ月後の中国産の卸値は前年同期の四倍近くに達した。外食チェーンは国産の調達に走り、国産の卸値が上がった。
フィリピン産マンゴーなども同制度に抵触、入荷が減り、店頭価格が上昇した。「規制の厳しい日本より、韓国やタイなどほかのアジア諸国に出荷先をシフトした方がよいかも」(中国野菜の大手商社フィールド=東京・江東=の馬海濤社長)との声も出始めた。
経済成長を背景に中国やインドが、より多くの食糧を必要とし始めた。世界の穀物の耕作面積は農林水産省によると、二〇〇六年は六億六千八百万ヘクタールとピークの一九八一年に比べて九%減る見込み。同期間に人口は四十五億人から六十五億人に増える。食糧も原油や金属と同じ「限りある資源」。国際マーケットで奪い合う構図も浮かび上がる。輸入に大半を依存する日本にとって、避けて通れない大きな問題となりつつある。
川崎満、笠原昌人、野沢康二が担当しました。
自動車業界の動き
社説:トヨタ・いすゞ提携にみる生き残りへの道
日本企業初の今期営業利益2兆円超え見通しを発表したトヨタ自動車がその今中間期決算発表記者会見を終えると同時に「いすゞ自動車と資本・業務提携で基本合意」も一気に発表するという離れ技を演じた。
1990年代末の世界自動車再編からこの間の情勢変化は、自動車メーカー間業績格差や環境・エネルギー対応のスピードアップ化が著しい。日本自動車産業のグローバル化も加速している。
今回のトヨタの動きも渡辺体制のトヨタグローバル戦略促進への決断といえよう。一方のいすゞは、「商用車世界再編」という新たな動きも含め再建から、生き残りへのシナリオを描く次のステップに踏み込んだものと、とらえられる。
いすゞといえば、自動車旧御三家の一つに数えられた名門企業。だが、いすゞの変遷はまさに紆余曲折だった。1960年代後半の資本自由化という大きな節目のなかで、いすゞは富士重工業、三菱重工業と業務提携。さらに伊藤忠商事の仲介で米フォードとの提携を模索。だが、これも提携交渉が不調に終わって今度は日産との提携交渉と、米GMとの「二股交渉」に入り一時は日産との提携にもつながった。
結局、日産と提携しながら米GMとの提携交渉が水面下で進められ出資比率を巡る駆け引きなど様々なハードルを乗り越えて1971年10月1日にGMとの資本提携に至ったのが、資本自由化時代でのいすゞの生き残り策だった。
GM資本傘下としてのいすゞの関係は、今年4月のGM出資引き上げによる資本提携解消まで実に35年に及んだ。この間、富士重工業と米国合弁生産進出、ホンダとディーゼルエンジン供給・OEM業務提携、スズキとの提携などもあった。さらに乗用車事業からの撤退で商用車事業とディーゼルエンジンビジネスへの集約化と経営再建へ多難な道を歩んだ。
井田いすゞ体制での再建計画は、経営効率化やタイなど東南アジア商用車ビジネスの強化、かねて定評のあるディーゼルエンジンビジネス拡大などで前期決算でも3期連続営業、経常利益過去最高を示し、今期もさらにこれを更新する見通しとなっている。
このいすゞに対してトヨタは、今期の営業利益見通しを「慎重にみて2兆2千億円」(トヨタ首脳)と本業の利益で2兆円超えを果たす名実ともに世界のトップ企業へまい進している。そのトヨタがいすゞに業務提携をもちかけ「驚いた」(井田義則社長)という当初のいすゞの受け止めに対し「トヨタのディーゼル分野強化の手段」(渡辺捷昭社長)へ、約3カ月間の交渉で資本・業務提携のスピード基本合意に至った。
「トヨタは環境対策を最大の使命とし、最重要経営課題としている。環境対応技術開発の商品強化は、ハイブリッド技術でトップランナーだが世界各国のエネルギー政策のなかでディーゼル分野強化も大きなテーマだ」(渡辺社長)とする。ディーゼル分野では、長い歴史を持ち技術的に定評のあるいすゞと提携する必然性をトヨタが大きなメリットと見たのも当然のことか。
一方、いすゞは、35年間に及んだ米GMとの資本提携解消のなかで業績回復下にあるとはいえ、国内トラック需要の限定化・競争激化とグローバル商用車再編の新たな波にもまれようとしている。そのなかで欧州から世界的にディーゼル分野が脚光を浴びてトヨタがいすゞの力を買って提案してきたことでの新たな生き残りへの道を選択したということか。
また、いすゞの三菱商事・伊藤忠商事の商社株主、みずほコーポ銀行といった主要株主のバランスの中でモノづくり企業のトヨタ出資を求めたのかということになる。
いずれにせよ、このトヨタ・いすゞの資本提携劇はスピード合意であるだけに、世界商用車再編の波での日野との関係も含めてディーゼル分野提携からの広がりは今後の細目的な詰め次第でありしっかり見極めていく必要があろう。
走り出すバイオ燃料
*次世代ディーゼル いすゞに開発提案*トヨタ方針
トヨタ自動車は9日、業務提携で基本合意したいすゞ自動車に、植物油などのバイオ燃料で走る新型ディーゼルエンジンの共同開発を提案する方針を明らかにした。排出する有害物質を大幅に減らして「環境」を重視する狙い。今後三年程度での実用化を目指す。
トヨタが提案する新型ディーゼルエンジンは、植物油からつくるバイオディーゼル燃料(BDF)を使う。このほか、ジメチルエーテル(DME)やガス・ツー・リキッド(GTL)と呼ばれる次世代燃料を使うタイプも研究する。
バイオ燃料はディーゼルエンジンに使われる軽油と性状が違うことなどから、燃料を供給する制御装置や部品の耐久性を確保する技術の開発を提案する方針。
バイオ燃料を使うエンジンは排ガスの有害な硫黄酸化物や粒子状物質(PM)が減るのが特徴で、欧州などでの導入が進むと期待されている。
トヨタは、エンジンとモーターで動くハイブリッド車や、水素と酸素の化学反応を利用した燃料電池車で最先端技術を持つが、出遅れ気味だったディーゼル車にも特徴を持たせることで「環境に強いトヨタ」をアピールする狙いだ。
バイオディーゼル車は、現在のガソリンスタンドを活用して燃料の供給が可能なため、水素の供給に特別な施設が必要な燃料電池車などと違い整備費用が少ない利点がある。
クルマ産業アラウンド=いすゞに強力なバックボーン
――トヨタと補完関係構築
トラック専業のいすゞ自動車(7202)が経営の安定に大きく寄与する新たなパートナーを得た。ディーゼルエンジンの開発・生産をめぐるトヨタ自動車(7203)との資本・業務提携だ。今年4月に35年に及んだ米GM(ゼネラル・モーターズ)との資本提携を解消、環境対応技術への膨大な投資負担などで不安が残っていたものの、そこにトヨタという強力なバックボーンができた。
両社の提携交渉は7月末にトヨタが打診してから、約3カ月のスピード合意となった。GMとの提携解消後「自主経営を目指す」(井田義則社長)としていたいすゞ側には、「のまれる」のではないかという逡巡(しゅんじゅん)もあった。だが「世界で最も販売の多いトヨタ車に当社のエンジンが載ることはブランド力強化にもつながる」(同)と、決断した。
トヨタによる出資(5.9%)は、いすゞ側が申し入れたものではないが、両社の結び付きを密にし、優良な安定株主確保という点からも意義がある。トヨタの狙いは、ディーゼル専門のいすゞの開発力を借りることだ。トヨタは環境技術でハイブリッドから燃料電池まで世界の最先端を走る。
しかし、欧州では乗用車の過半数を超えるまでになったディーゼルについては「ラインアップに課題」(渡辺捷昭社長)がある。つまり、品ぞろえが不十分で、今後、環境対応エンジンとしてのディーゼルを拡充しないと、この分野で出遅れるという懸念だ。本場、欧州だけでなく「アジアを中心とした新興市場や米国でも、燃費性能の良いディーゼルは着実に増える」(幹部)というのが、トヨタの分析である。
いすゞは開発だけでなく、生産も担うことになる。トヨタ向けディーゼルの第1号は2010年の登場となりそうだが、生産地はいすゞの北海道工場が有力。トヨタと共同出資で新会社を立ち上げることになろう。
トヨタ向けは、近い将来に年数10万基に拡大、いすゞのエンジンビジネスの新たな柱に成長するのが確実だ。いすゞにとっては、トヨタから供与される環境技術も大きな魅力。渡辺社長は「ハイブリッドや燃料電池での協力」も明言している。
いすゞはハイブリッドを実用化しているものの、トラック用でもトヨタの技術がはるかに先行している。さらに、トヨタグループの日野自動車との連携強化も視野に入ってくる。いすゞと日野は国内バス事業を統合しているが、今後は主力のトラックでも技術や部品の補完関係が進むことになろう。
いすゞは今3月期の連結営業利益が4期連続で最高を更新、初めて1000億円に乗る。しかし、好業績を支えてきた国内トラック需要は、排出ガス規制特需がはがれる段階になってきた。トヨタとの縁組は、タイミングとしても絶妙だった。
池原照雄(いけはら・てるお)氏…経済ジャーナリスト 1950年生まれ、山口県出身。専門紙や一般紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融などを担当。2000年からフリー。日経ビジネスオンラインや自動車情報サイト「RESPONSE」でコラムを連載するなど、自動車産業を中心とした執筆や講演活動を展開している。著書に「トヨタVS.ホンダ」(日刊工業新聞社刊)。
検証06/
トラック業界再編ラッシュ-環境規制強化で技術取り込み
業界再編の第2幕―。06年、トラック業界は激震した。日産自動車は保有する日産ディーゼル工業株約19%をスウェーデンのトラック大手ボルボに売却。「(日産ディは)再建を果たし、サポートは完了した」(カルロス・ゴーン日産社長)という。
世界のトラック大手が日系メーカーに照準を合わせるのは卓越した環境技術の取り込みに加え、アジア市場進出へのくさびを打ち込むため。一方、日系トラックメーカーは縮小する国内市場依存からの転換が焦眉(しょうび)の急。海外で販売を拡大しようにも、補給部品網や整備・点検網を整えなければならない。提携先との連携が不可欠だ。
しかし、巨大資本に組み入れられ、成果を上げるのは容易ではない。05年に独ダイムラー・クライスラー(DC)は三菱ふそうトラック・バスに対する出資比率を85%に引き上げた。三菱ふそうは完全にDC商用車グループの一員になったにもかかわらず、1年以上経過した今も「DCの中に我々を異分子として見る人は少なくない」(三菱ふそう関係者)のが現実で「発言力は弱い」と江頭啓輔会長も認める。
「互いのブランドや文化をリスペクト(尊敬)することだ」。日産ディの仲村巖社長は海外資本との提携を成功させる条件をこう分析する。ただ「私の経営手法は常に成長を目指すこと。買収は有効な手段だ」(ボルボのレイフ・ヨハンソン社長)など、欧州メーカーの野心的な顔も見える。
現に独トラック大手のMANが同業のスウェーデン、スカニアにTOB(株式公開買い付け)を仕掛けるなどパワーゲームに対する抵抗はない。
11月、トヨタ自動車を株主に迎えたいすゞ自動車。「皆さんが想像されているような、自然な流れで進みますよ」。いすゞの細井行副社長は落ち着いた表情を見せる。一方、トヨタ傘下でいすゞとの提携が取りざたされる日野自動車も「普段から交流はしている。あまり無理なことはおきない」(市川正和日野自動車専務)という。
いずれにせよ各社とも机上では大きな提携効果を見込む。日産ディはボルボとの提携で調達コストを最大150億円程度、削減できるという。数年先には世界的に排出ガス規制が一段と厳しさを増す。成果物の刈り取りに後れは許されない。
国際的な再編、加速
トラック業界、環境規制強化に対応 開発コストを削減、市場拡大
トラック業界で国際的な再編の動きが加速している。環境規制の強化に対応するため、各社とも規模拡大で開発投資の効率化をめざしているためだ。燃費が良く二酸化炭素の排出量が少ないディーゼルエンジンも注目され、乗用車メーカーの思惑も絡む。環境技術を軸に、合従連衡が進みそうだ。
(ロンドン=青田秀樹、沢路毅彦)
「世界が舞台の競争激化と環境規制の強化で、トラック業界は統合を進める流れにある」
スウェーデンのトラック大手スカニアの買収を目指すドイツの大手MANは11月16日に買収手続きを発表、利点を強調した。買収額は103億ユーロ(約1兆6千億円)。部品調達や販売の協力などで年5億ユーロ(770億円)のコスト削減ができるという。
スカニア側に拒否感は強いが、スカニアの筆頭株主で議決権の34%を握る独フォルクスワーゲン(VW)は友好的な事業統合を促す方向。自社のブラジルでの商用車事業を組み込む「3社連合」に発展させる考えだ。
再編要因は、開発投資負担だけではない。中国やロシアなどの急成長市場をおさえるには業務用サービス網を充実させる必要があり、巨額資金が要る。「地域色が濃かったトラック業界は、世界規模の激しい競争にさらされている」(MAN)状態だ。
日本勢も無縁ではない。アジアで知名度が高い日本勢は欧米メーカーにも魅力的だからだ。
スカニアと同じスウェーデン大手ボルボは3月、日産自動車から日産ディーゼル工業の株の一部を買って筆頭株主になり、9月には残りも引き取って関係を強化。レイフ・ヨハンソン最高経営責任者は「将来に向け技術競争が始まる。協業は理にかなう」と強調した。
世界最大手のダイムラークライスラーは、三菱自動車との関係を切る一方で、三菱ふそうトラック・バスをアジア戦略の要にすえた。日野自動車はスカニアと販売で提携関係にあり、再編の先行きを注視している。
米ゼネラル・モーターズとの資本関係を解消したいすゞ自動車は、トヨタ自動車と資本・業務提携を結んだ。井田義則社長は「モデルチェンジが多い乗用車メーカーとの共同開発で自社の技術力は高まる」と説明する。
トヨタ傘下の日野自動車との経営統合は否定しているが「技術に垣根はもうけない」(井田社長)と提携には意欲的。いすゞ幹部は「世界中のトラックメーカーから、何か一緒にやれないかと話がくる」と明かす。
〔特集〕(4)
自動車 強すぎるトヨタと環境対策-再編淘汰10業界
[著者名]河村靖史
第85巻 第2号 通巻3870号
特集 再編淘汰10業界
(4)自動車 強すぎるトヨタと環境対策
「石橋を叩いても渡らない」と揶揄されてきたトヨタ自動車が一転、業界再編の台風の目にある。すでに、ダイハツ工業、日野自動車、富士重工業、いすゞ自動車と資本提携し、トヨタにエンジンを供給し、資本提携も結ぶヤマハ発動機を加えれば、6社で巨大な「日の丸自動車」グループを形成している。
「各国のエネルギー政策や規制動向、燃料の種類などは多岐にわたる。特に、ディーゼルエンジン分野の強化は必要で、技術力、商品力の高いいすゞと業務提携することは大きな意味がある」。トヨタの渡辺捷昭社長はいすゞとの資本・業務提携の意義をこう強調した。
拡大戦略の最大の理由は「環境対策」だ。環境問題がクローズアップされるなかでは、先進環境技術を持つメーカーだけが生き残れると見る点で業界は一致している。
しかも、環境対策車は、欧州ではディーゼル車、南米、米国ではバイオエタノール車など、市場によって主流が異なる。
従来、ハイブリッドカーを環境対策車の柱に据えてきたトヨタだが、ディーゼル車はアジアや北米でも需要が増える見通しで、早急にいすゞのディーゼル技術を取り込む必要があった。トヨタといえども、さまざまな環境対策分野に開発投資をつぎ込む余裕はない。提携拡大で足りない技術を補い、世界中に工場を新設し、現地化で各市場の主導権を握る戦略だ。また、市場にスタンダードの環境技術をいち早く確立することもグローバルでの生き残りの条件。ハイブリッド技術で日産自動車や米フォード・モーターと提携しているのもこうした考え方が背景にある。
自主独立路線のホンダも「環境対応技術で、他社が欲しいというなら供給する準備はある」と業務提携には前向き。「これからの提携は環境対策がベースになる」(福井威夫社長)とみる点でも、トヨタと同じだ。
GMの出方、スズキの行方
一方、トヨタに世界一の座を明け渡そうとしている米ゼネラル・モーターズ(GM)は今後も注目株だ。伊フィアット、富士重、いすゞと提携解消、スズキと提携縮小、日産・ルノーと提携交渉・破談と、再編の主役を演じてきたが、業績は依然低迷しており、自力再建は困難との見方が多い。新たに提携が模索される可能性は大きいが、日産・ルノーの提携交渉で明らかになったように「世界一」のプライドは高く、再建への道筋をつけるのは困難が伴いそうだ。
スズキの動向も関心が高い。GMとの資本提携解消後、GMが保有していたスズキの株式を1年間は自社株として保有していたが、買い戻しの現実味は薄い。鈴木修会長は「GM復活を待つが、ダメなら新しい相手を探す必要があるかもしれない」と、新たな提携に前向きだ。
得意とする小型車は世界中の市場で伸びているうえ、インドなど成長が見込まれる新興市場にも強く、ラブコールを送る自動車メーカーは少なくない。スズキと欧米市場でのOEM(相手先ブランドによる受託生産)などで合意した日産は資本提携の意向が強いと伝えられている。
経営不振のフォードは、GMと異なり、なおグループ企業を抱えている。ボルボやアストンマーチンなどを売却する意向が伝えられているが、約34%を出資するマツダとの資本提携解消の可能性も高く、売却先が注目される。
(河村靖史・自動車ジャーナリスト)
経営ひと言/日野自動車・近藤詔治社長「ツー・カーの仲」
「業界再編や企業の合従連衡についていろいろ聞かれるが、そう簡単な話ではない」。乗用車の世界との違いをこう強調するのは、日野自動車社長の近藤詔治さん。
トラック業界について「当社も日産ディーゼル工業には中型エンジンを買っていただいているし、ライバルとされる企業とすでに親戚付き合いだったりする」と続ける。
親会社であるトヨタ自動車との提携に基づき、いすゞ自動車と今後協業が予想されている。「ツーといえばカーという、良く理解している関係。プラスになることはやっていきたい」と意欲をみせる。
野自動車、海外で攻勢
2015年度にトラック世界販売、倍増20万台
日野自動車は19日、2015年度のトラック世界販売台数を06年度の2倍の20万台に引き上げる長期計画を発表した。米国やアジア、中南米での販売網増強などで、海外市場の販売台数を3倍の15万台に増やすのが柱。同社はいすゞ自動車や三菱ふそうトラック・バスなど他の国内トラック大手に比べ海外進出に出遅れており、積極的な海外投資により、15年度には中大型トラックの世界販売台数で現状の世界9位から3位への浮上を狙う。
「海外市場へ、積極的に経営資源を投入する」
同日、東京都港区の芝パークホテルで記者会見した近藤詔治社長は、海外での事業拡大への意気込みをこう話した。
日野の06年度の海外市場でのトラック販売台数は前年度比11%増の5万台の見込み。2けた台の伸びを確保しているものの、ピックアップトラックなどを含めて1・2%増の62万9000台販売見通しのいすゞに大差を付けられている。
海外市場への出遅れが響き07年3月期の業績見通しも、いすゞが利益の全項目で過去最高を更新する一方、日野は減益を強いられる見込みだ。
日野は国内依存度が高く、排出ガス規制需要の一巡で国内市場が縮小傾向にあることが響いた。強い経営基盤を築くには、国内依存から脱却し、海外市場での販売強化が不可欠と判断、海外での投資拡大に踏み切る。
主力の北米やアジアでは現地ニーズに適合した専用車の積極投入や販売網の拡充を進め、新規顧客を取り込む。また新規市場開拓も加速。07年度には韓国、メキシコの両市場に新規参入するほか、親会社、トヨタ自動車の販売網を活用した展開も積極化する。これにより最終目標の15年度には北米で5万台、アジアで3万台、中近東2万台と各市場での販売上積みを狙う。
近藤社長は「国内事業と、トヨタ車の受託事業に続き、海外を事業の柱に育てる。これにより国内トラック需要の変動に左右されがちだった業績を安定させる」とし、海外事業を収益の柱にする考えを強調した。
いすゞが小型トラックで世界進出 「エルフ」を全面改良
■燃費を50%向上 ハイブリッドも上回る

新型「エルフ」を紹介するいすゞ自動車の井田義則社長(13日、横浜西区のパシフィコ横浜)
いすゞ自動車は13日、積載量2~3トンの小型トラック「エルフ」を13年ぶりに全面改良して発売したと発表した。軽油1リットル当たりの燃費を従来比50%向上させたのが特徴だ。米国や欧州でも2007年1月に投入し、年間20万台の販売を狙う。国内の小型トラック市場は、排出ガス規制強化に伴う“特需”の一巡で頭打ちが続く。それだけに、いすゞや三菱ふそうトラック・バスといったトラックメーカーは、新型の小型トラックを武器に、次々と海外市場に打って出る考えだ。(今井裕治)
≪13年ぶりに≫ 「全世界での販売を前提に開発した」
13日、横浜市のパシフィコ横浜で会見した、いすゞ自動車の井田義則社長は、新型エルフの開発の狙いをこう強調した。
新型車は、運転席部分の幅を従来モデルに比べ7・5センチ広げ1・77メートルに拡大し欧米人が乗っても窮屈さを感じない空間とした。また新開発の3000ccディーゼルエンジンを搭載、総重量も200キロ軽量化し、エンジン・電気モーター併用の「ハイブリッド」を上回る燃費性能を実現した。
新型車は、トヨタ自動車の小型乗用車「ヴィッツ」のように、世界各国での展開を見据えたトラックの“世界戦略車”だ。いすゞが6代目の新型エルフで世界を意識したのには理由がある。
ディーゼル車に2005年10月から適用された排ガス規制「新長期規制」導入に伴う特需が一巡し、国内市場が縮小する方向にあるからだ。
小型トラックの国内市場は06年度で前年度比2・4%増の12万台に膨らむ見通し。だが、07年度は20%減の10万台に縮む見込みのうえ「その先も伸びは期待はできない」(井田社長)。新型エルフの年間販売計画20万台の内訳をみても、国内の4万台に対し、海外では国内の4倍の16万台を売る方針。小型トラックは欧米やアジアで伸びる余地が大きく、世界市場で売ることが成長につながると判断したわけだ。
≪国内は頭打ち≫
かつて、いすゞは、需要の増減が激しい国内市場に過度に依存したために業績が悪化し、経営危機に陥った経緯がある。 このため、先行した積載量1トン前後の「ピックアップトラック」に加え、小型トラックでも世界展開を加速させることで、国内需要の波に左右されない経営基盤の構築を目指す算段だ。
生産拠点の世界展開にも力を入れる。井田社長は会見で、北米に新型エルフの新工場を建設する計画を明らかにした。メキシコとカナダを含む北米でのエルフ販売は06年で3万2000台だが、「年5万台に増えればKD(完成車パーツ)の組立で進出する」(井田社長)という。
国内メーカーでは、三菱ふそうトラック・バスもアジアでハイブリッドトラック「キャンターエコハイブリッド」を含めた小型トラックの拡販を狙っている。国内市場での先行きに展望を描きにくいだけに、海外進出に出遅れたトヨタ自動車傘下の日野自動車が、トヨタと提携したいすゞと、トヨタを媒介に急接近する可能性も高まっている。(今井裕治)
ディーゼルでも世界制覇 トヨタの壮大なる「野望」
次世代V型ディーゼルエンジンの有無が、自動車メーカーの勝敗の鍵を握る状況となってきた。最大市場の北米で売れる車はSUVやピックアップトラック。これらの車にピッタリ合うディーゼルエンジンはV型8気筒やV型6気筒のエンジンだ。ところがトヨタ自動車の現有ディーゼルエンジンは直列型のみ。しかも米国で2009年にはじまる新環境規制のクリアという大きな課題がある。そこでトヨタはV型を持ついすゞ自動車と提携し、米国で売れるディーゼルエンジンの技術を手に入れ、さらにディーゼルハイブリッド車を市場投入して、この分野でも「独走」を狙っている。
これまでディーゼルエンジン車の主要市場は欧州だけだった。しかし、北米やアジアなどでも、燃料高の影響を受けてディーゼル需要が高まりつつある。米国のディーゼル車比率は、現在の3%が2010年には20%にまで拡大するという予測も出てきた。今のディーゼルエンジンは、燃費が良くてクリーンというだけでなく、パワーも併せ持つというイメージが広まってきたためだ。
ディーゼルエンジンといえばドイツ勢だった
「レクサス」ブランドからV型ディーゼルエンジン搭載ハイブリッド車の発売も計画
ディーゼルエンジン車のイメージを高めてきたのは、ダイムラークライスラーやアウディ、BMW、VWなどのドイツ勢だ。とくにアウディは、5.5リットルのV型12気筒ツインターボディーゼルエンジン搭載車で06年のル・マン24時間耐久レースに勝利。ダイムラークライスラーは昨年、メルセデスベンツ用の3リットルV型6気筒ディーゼルエンジンを開発し、従来の直列5気筒または6気筒より最大4割近くパワーアップさせた。
V型エンジンの最大の特徴は、直列エンジンよりも構造が複雑でコスト高となるが、コンパクトで静粛性に優れ、振動も少ない点にある。そのV型ディーゼルエンジンを持つのがいすゞであり、現在、GMのSUVなどに6.6リットルのV型8気筒を、ルノーとオペルのセダンに3リットルのV型6気筒のディーゼルエンジンを供給している。この6気筒はオールアルミエンジンであり、トヨタにとって大きな魅力となっている。
米国の排出ガス新規制は日本の3分の1という厳しさだ
だが、09年を境に日本・欧州・米国の主要市場で排出ガス規制がかなり厳しくなる。この排ガス規制をクリアーできない企業は、市場から転落してゆく。とくに内容が厳しい米国の新たな環境規制「Tier II Bin5」への対応が大きな関門だ。現在、ディーゼル車の排出ガス規制が世界で最も厳しいのは日本だが、米国の新規制は排出ガス中のNOx濃度を日本の3分の1にまで引き下げる。
その規制にドイツ勢は、ダイムラークライスラーが持つ「尿素水」を使った手法で対応しようと結束した。だが難点もある。燃料を給油するように尿素水を給水しなければならず、尿素水を供給するインフラ整備が問題だ。
ところがホンダが、尿素水が不要となる次世代ディーゼルエンジン技術を開発した。ホンダは新規制をクリアした直列4気筒の2.2リットルディーゼルエンジン搭載車を09年に米国で発売するだけでなく、この次世代技術を用いた3リットルV型6気筒エンジンの開発も進めている。
米国市場でのエコカーの称号は、ハイブリッドとディーゼルが争うことになりそうだ。トヨタとしては、環境技術でドイツ勢はもちろん、ホンダに負けるわけにはいかない。そこで新規制に対応したV型ディーゼルエンジンの開発が必要不可欠となった。
V型エンジンは、米国市場では高級車に搭載されるというイメージが浸透している。トヨタはいすゞとの提携でV型の技術開発のハードルを下げ、その完成したV型ディーゼルエンジンを米国市場で発売するSUVに搭載する。さらにV型ディーゼルエンジンと電動モーターを組み合わせたハイブリッド車をレクサスブランドから発売し、エコカーNo.1の座を守る狙いだ。
新開発NOx触媒を採用した新世代ディーゼルエンジンを開発
―ガソリン車と同等の排出ガス規制「米国TierII Bin5」排出ガスレベルを達成―
Hondaは、ディーゼルエンジンをガソリンエンジンに匹敵するレベルにクリーン化する画期的な新世代ディーゼルエンジン用NOx触媒を新開発、ガソリン車と同等のNOx排出レベルが求められる米国の排出ガス規制「TierII Bin5」排出ガスレベル(社内値)を達成した。この触媒は、触媒内部で生成されるアンモニアによる還元反応を利用し、窒素酸化物(NOx)を窒素(N2)に浄化する世界初の画期的システムを採用している。
新開発の触媒は、排気ガス中のNOxを吸着してアンモニアに転化する層と、触媒内で転化されたアンモニアを吸着して排気ガス中のNOxを窒素(N2)に浄化する層の2層構造を採用。酸素が多いリーンバーン状態でNOxと反応してN2に浄化するためにもっとも有効な物質であるアンモニアを触媒内で発生させることで、コンパクトで軽量なディーゼルエンジン用の浄化システムを実現した。また、ディーゼルエンジンの主要温度帯である200~300℃でのNOx浄化性能も向上している。
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| Honda新世代ディーゼルエンジンシステム |
2003年の欧州アコードから採用し、その静粛性、動的性能やクリーン性能で高い評価を得ている「2.2L i-CTDiエンジン」をベースとし、燃焼制御をさらに高精度とすることなどで、触媒で浄化する前の排気ガスのクリーン化も実現している。燃焼室の形状最適化、噴射圧2000barコモンレールの採用による噴射時間の短縮、EGRシステムの高効率化などで、NOxやすすの発生を低減しながら、高出力化を実現する燃焼制御を行っている。
今後、こうした排気ガスの浄化技術に加え、セタン価が異なるディーゼル燃料や、OBD(Onboard Diagnostic System:車載式故障診断システム)などの技術的課題に対応し、3年以内に、このディーゼルエンジンを搭載した車を米国で販売開始する予定である。
現在、ガソリンエンジンのNOx浄化には、浄化率が99%にも達する3元触媒を使用しているが、この触媒は理論空燃比で性能を発揮するため、酸素量の多いリーンバーンのディーゼルエンジンでは10%程度のNOx浄化性能しか発揮できない。今回の新開発触媒は、リーンバーンの環境でNOxを効率的に浄化する能力を持つため、ガソリンエンジンに匹敵するクリーン性能を実現した。さらに、コンパクトなシステムのため、乗用車への搭載性も高いものとしている。
本田技研工業株式会社 広報発表へ→http://www.honda.co.jp/news/2006/4060925b.html
●新開発「ディーゼルエンジン用NOx触媒」反応メカニズム(イメージ)
●排出ガス浄化システム構成

- リーンバーン運転時に下層のNOx吸着層に排出ガス中のNOxを吸着。
- 必要な時期にシステムが空燃比をリッチバーンに制御し、NOx吸着層のNOxを排気ガス中から得られる水素(H2)と反応させてアンモニア(NH3)に転化。上層のNH3吸着層にNH3を一時的に吸着。
- 再度リーンバーン運転になった際に、上層に吸着されたNH3が排気ガス中のNOxと反応し、無害なN2に浄化。

社説:市場形成があいまいな自動車リサイクル部品
10月の「3R(リデュース、リユース、リサイクル)月間」に合わせて、日本ELVリサイクル機構やその加盟団体などが、自動車リサイクル部品の利用促進を呼びかけるキャンペーンを行った。経済産業省が作製したチラシを駅頭などで手渡したのだが、受け取るユーザーの反応は、期待通りとはいかなかったようだ。
飲食店や美容室、その他の宣伝用チラシも、勤め人の多い場所では受け取る人はそう多くはない。今回のキャンペーンのチラシも、受け取ってくれたのは20人に1人ぐらいとの様子を聞くと、そんなものだろうと思う。
気がかりなのは、受け取ってチラシを見ている人の何人かに話を聞いても、自動車リサイクル部品があるということを知っている人が全くいなかったことである。都心の駅だったため、自動車を所有していても熱心に関心を持つ人は少ないことは想定できるが、そうしたなかで、たとえわずかでも「リサイクル部品を知っている」との答えが返ってくれば、もっとその市場は伸びているはずだ。
民間の調査機関によると、自動車リサイクル部品の市場は年間1千億円強といわれる。修理部品やアクセサリーなどを含めた、いわゆるカーアフターマーケット全体の3%強程度に当たる。
自動車リサイクル法の施行準備が進む過程で、トヨタや日産の部品販売会社がリサイクル部品を取り扱い始めたことで、数値的には市場拡大を果たした。成果を指標に関係業界の内部でも、ユーザーの認知は進んできたというのが定説となっていた。とはいえ、その市場があと1千億円でも2千億円でも拡大していれば、今回のキャンペーンでもユーザーの反応は違っていたと思われる。
ユーザーがリサイクル部品を知らない要因は幾つかある。修理をするのが整備工場であり、整備工場の部品手配に立ち会った経験を持つユーザーはそう多くはない。しかも、大手の工場では工程管理を優先するため、そろえにくいリサイクル部品を利用する工場は少ない。事故を起こした際の修理にしても、保険会社や整備工場任せというユーザーが多いという現状を考えると、リサイクル部品を知らないユーザーが多くても不思議なことではない。
だとすると、対ユーザー向け告知に関して、リサイクル部品業者側の努力不足という点も指摘できるのではあるまいか。
経産省によるチラシ製作の発端は、リサイクル法施行直後で経営環境が悪化したリサイクル部品業者からの要望にあった。循環型社会を形成する「3R」の中でリユースは重要な要素だから、経産省も政策的な意義を認めた。望むべきは、恒常的にユーザーにリサイクル部品を使ってもらうよう訴えていくことにある。その責任の所在はどこか。
自動車リサイクル法はリサイクル料金の徴収が終わろうとし、自動車を軸とした循環型社会の形成期を迎えようとしている。リサイクル部品の利用促進は循環型社会形成の柱の一つである。ユーザーに訴える主役は当然、リサイクル部品業界自身であるにしても、自動車産業全体で利用促進の道筋を考えるべきであるのだろう。
バス、鉄道、両用車普及の道開く
――低コスト低燃費、国交省後押し、来年に法案。
ローカル線切り札
国土交通省は線路と道路の両方を走行できる鉄道・バスの両用車の普及を後押しする。乗客が多い区間は車両を連結して線路を走り、少ない地域では連結を解いてバスとして運行するもので、事業免許や運転資格制度を整備するための新法案を来年の通常国会に提出する。人口減少とマイカーの利用増で経営難に苦しむ地方の鉄道会社を支援する狙いもある。
新型車両は「デュアル・モード・ビークル(DMV、二つの方法による車両という意味)」と呼ばれ、世界で初めてJR北海道が開発を進めている。道路上はバスとしてゴムタイヤで運行し、線路に乗り入れると車体に収納していた鉄製の車輪を出し、列車として走る。来年四月、JR釧網線の浜小清水駅(小清水町)と藻琴駅(網走市)をつなぐ区間で試験的な営業運行を始める予定だ。
JR北海道によると、車両は二十八人乗りの小型で、車両費用は一台二千万円と従来の鉄道車両の八分の一足らず。燃費はディーゼル車両に比べて四分の一、保守費も八分の一とコストは大幅に安くなる。線路などもそのまま使え、赤字ローカル線の再生の切り札として期待が高まっている。JR北海道には三百五十件を超す問い合わせが寄せられているという。
ただ、新型車両を営業運転するには制度上の課題も多い。JR北海道は現行法の下で試験営業に乗り出すが、鉄道事業法や道路運送法など異なる法令に基づく許認可を得る必要があるほか、運転手もバス(大型二種)の運転免許と鉄道の運転士の免許の両方が必要だ。
このため国交省は新法案の「地域公共交通活性化・再生法(仮称)」で導入手続きを一本化。運転のための新たな資格制度も設けることで新型車両の導入を後押しする。
二〇〇五年の国勢調査によると、全国三十二道県で人口が五年前より減少。これに伴う需要の低迷とマイカー利用への転換で地方の鉄道事業は全体の七六%が営業赤字に陥っている。高齢化が進んで公共交通機関の必要性が高まる一方、人口減少が一段と深刻になれば営業廃止を迫られる鉄道路線も増えかねない。
国交省は新型車両を将来の中核的な地方公共交通と位置づけ、本格的な普及に取り組む考えだ。
