エタノール燃料コーナー
ラニーニャ発生の年は…―食料価格、一段と上昇も(マーケット潮流底流)
気象庁は東部太平洋赤道域(ペルー沖)の海水温が例年より低くなるラニーニャ現象が五月ごろから発生したもようと発表した。過去の例を見ると、世界各地で異常気象を起こす可能性は海水温が高くなるエルニーニョ現象に匹敵する。既に歴史的な高水準にある大豆などの食料価格が一段と上昇する懸念が強い。
一九七〇年代以降の主な穀物高騰の局面は、エルニーニョよりラニーニャ現象が発生した時に重なる。米国の穀倉地帯が「春の降雨で作付けが遅れ、夏場は高温乾燥となる傾向が強い」(丸紅経済研究所の柴田明夫所長)ためだ。
73年夏―74年春(ラニーニャ現象の期間は気象庁発表) 凶作だった旧ソ連の買い付けに加え、ペルー沖での飼料用アンチョビー(カタクチイワシ)の不漁で米国産穀物に需要が集中した。シカゴ大豆は七三年六月に一ブッシェル一二ドル台の史上最高値を記録。ニクソン政権は二カ月間の物価凍結と大豆・関連製品の禁輸に踏み切った。米国産地も七三―七四年は不安定な天候が続いた。
75年春―76年春 七五年も米国とソ連が干ばつに見舞われる。米国は同年秋に穀物協定が結ばれるまでソ連への穀物輸出商談を停止した。
88年春―89年春 米国が二十世紀最大級の干ばつに襲われた。八八―八九年度の一エーカーあたり生産量(単収)は大豆が前年度比二〇%、トウモロコシは二九%落ち込む。
95年夏―95年冬 豪州や中国の干ばつに続き、米国も長雨と干ばつで九五―九六年度が大減産。トウモロコシなどの日本向け商談も停滞した。
果たして今年はどうか。幸い長雨は免れ、作付けは順調に終わった。干ばつ懸念も先週の雨で一息ついている。だが穀物専門商社、ユニパックグレインの茅野信行社長は「問題はこれから」と話す。作柄を左右する受粉期はトウモロコシが七月上旬、大豆は七月末に始まるからだ。
ロシアやウクライナなどの産地はラニーニャ発生時特有の高温乾燥で、小麦を十一年ぶりの高値に押し上げた。豪州の干ばつは収まったものの、七三年、八八年と同じくエルニーニョ直後にラニーニャが発生したことで天候異変は世界に広がりやすい。
しかも過去の高騰局面と異なり、農産物市場ではバイオ燃料という新たな需要が台頭した。主要穀物はラニーニャ発生前から記録的な高値にある。米農務省は現時点で、二〇〇七―〇八年度に大豆で一エーカー四十一・五ブッシェルの収量を予想する。品種改良や生産技術の向上で過去の干ばつ被害時のような落ち込み(八八―八九年度は二十七ブッシェル)はないとしても、現在の需給で生産量が減れば打撃は大きい。
大豆やトウモロコシが一段と値上がりした場合、畜産農家や消費者の負担増を考慮して米ブッシュ政権はガソリンからバイオ燃料への転換計画を見直すのか。米国内ではエタノール工場の新設が相次ぎ、穀物農家も原料増産に走っているだけに計画の一時凍結や下方修正も難しいはずだ。
(編集委員 志田富雄)
名大、ジャガイモ、病気に強く、遺伝子組み換え技術活用、他の植物にも応用の可能性。
名古屋大学の吉岡博文准教授らの研究グループは、遺伝子組み換え技術で植物の免疫の働きを強め、病気に強いジャガイモを作ることに成功した。菌が侵入すると植物自身の免疫反応が強く働くようにした。たくさんの免疫反応を同時に活性化するので、耐性菌の心配がないという。植物一般にある働きを利用するので、ほかの植物にも応用できる可能性がある。
吉岡准教授は「今後増えると考えられるバイオエタノールを生産するための植物への応用を検討している」と話している。
名大の研究グループは、ジャガイモにもともとある病原菌が侵入すると活性化する遺伝子と免疫反応の引き金になる遺伝子とを組み合わせ、免疫反応が効率よく働くジャガイモを作った。植物に菌が感染すると菌体を認識して免疫反応の引き金になる遺伝子が働き、免疫反応を活性化、三百ほどの酵素が同時に働いて身を守る仕組み。
遺伝子組み換えしたジャガイモに葉を枯らす細菌「疫病菌」を感染させて栽培したところ、通常のジャガイモは枯れてしまったのに対し、遺伝子組み換えをしたジャガイモは枯れずに成長した。
遺伝子組み換えをしたジャガイモの葉では、活性酸素が発生していた。菌に感染した細胞を除去して、葉を守っているとみられる。他の免疫反応にかかわる十個ほどの酵素が同時に働いていることも確認した。
従来は、細菌や他の植物が持つ病原菌耐性遺伝子を使って耐病性の遺伝子組み換え作物を作ることが多かったが、菌の遺伝子が少し変わるだけの耐性菌が出現し、病害の問題になっている。
新技術では同時にたくさんの免疫反応が働くので、菌の遺伝子が変わっても逃れられず耐性菌は出現しないという。
また病原菌から身を守る免疫の働きはすべての植物にもあるので、応用すればほかの植物でも菌に強くできる可能性がある。
バイオ燃料、養殖海藻で「自給」可能――三菱総研試算、費用ガソリン並み。
日本海で養殖した海藻からバイオエタノールを生産すれば将来の国内需要を十分にまかなえる――。三菱総合研究所が地球温暖化防止で需要が拡大するバイオエタノールに関するこんな試算結果をまとめた。
政府は二〇三〇年までに植物から作るバイオ燃料を年六百万キロリットル導入する長期目標を掲げる。ただ国内の遊休地に原料作物を植えても供給量は百万キロリットルが限界で、多くを輸入に頼る必要があるとされる。
三菱総研によると、日本海の中央部にある浅瀬「大和堆(たい)」で年間約六千五百万トンの海藻を養殖し、全量処理すれば二千万キロリットルのバイオエタノールが生産できるという。生産コストはガソリン並みの一リットル当たり五十八円も可能だとした。三菱総研は海藻を原料とするバイオエタノールの事業化をめざすフォーラムを七月に立ち上げる。
バイオエタノール、ブラジル産依存不可避に――エネ研報告、米中に余力なく。
国産100万キロリットルが限界
経済産業省所管の財団法人、日本エネルギー経済研究所は二十一日、植物から作るバイオエタノールの利用拡大に、ブラジルからの輸入への依存が避けられないとする報告を発表した。当面の輸入量は最大百八十万キロリットルと試算、これは国内ガソリン販売の三%に当たる。この結果、バイオエタノールのガソリンへの混合率は、五月に国内販売が始まった「バイオガソリン」と同じ三%が現実的と結論づけた。
ブラジルでは二〇一〇年に六百万キロリットルの輸出余力が生じ、その後も輸出能力は増える。だが、米国や中国では国内生産が需要に追いつかなくなり、二〇年以降は世界でエタノールの不足が生じるとの懸念も示した。
国内の遊休農地を使ったバイオエタノール生産量は百万キロリットル程度が限界とした。政府は三〇年までに六百万キロリットルの国産化を目標としているが、食料生産に影響を与えない形で実現するのは難しそうだ。
また、全国に三%エタノールガソリンを導入すると、九百億円の追加コストが発生し、ガソリン価格は一リットル一・四円上がると試算した。
バイオエタノール、国産100万キロリットルが限界――エネ研調査、コスト高も指摘。
経済産業省の関連団体、日本エネルギー経済研究所は二十一日、国内の遊休農地を使ったバイオエタノール生産量は百万キロリットル程度が限界とする調査報告を発表した。コストはブラジルなど海外の数倍になる。政府は二〇三〇年までに六百万キロリットルの国産化を目標としているが、食料生産に影響を与えず、実現するのは難しそうだ。
バイオエタノールの利用量を増やすには輸出余力を持つブラジルからの輸入に頼らざるを得ないとしている。ブラジルは一〇年に六百万キロリットルの輸出余力があるものの、港湾設備不足や、他国との争奪で、日本国内に輸入できるのはガソリン需要の三%にあたる百八十万キロリットルが限界という。
ブラジルでの製造や、輸送時に排出する二酸化炭素(CO2)を勘案しても、国内で使うガソリンをすべてエタノール三%入りにすると年間四百二十万トンのCO2削減効果が期待できる。環境省が推進する直接エタノールをガソリンと混ぜる方式でも、石油元売りが始めた「ETBE」をガソリンに混ぜる方式でも効果は同じ。原油価格を一バレル六〇ドルとすると、エタノール導入による追加費用は九百億円になるという。
石油元売り各社、ETBE輸入前倒し、来月末、欧州から――バイオガソリン堅調で。
新日本石油や出光興産など石油元売り各社はバイオエタノールの合成物である「ETBE」の二回目の輸入を七月末に前倒しする。四月末に発売したETBEを混入した「バイオガソリン」の販売が堅調なことから、今秋だった輸入の予定を繰り上げる。自治体などにはバイオガソリンを優先的に利用する動きもあり、現在五十カ所の販売スタンドの拡大も急ぐ。
元売り十社が出資するバイオマス燃料供給有限責任事業組合が、一括でETBEを輸入する。二回目の輸入量は、四月六日の一回目の輸入と同じ七千五百キロリットル程度を見込む。小麦やテンサイからバイオエタノールを製造している欧州から購入し、新日本石油精製の根岸製油所(横浜市)に陸揚げする。
バイオガソリンを販売するスタンドの売上高は「前年並みか、ややプラス」(石油連盟)で推移している。バイオガソリンを選んで買いに来る顧客も見られるようになり、ガソリン販売量が減少しているなかで堅調さが目立つ。東京都杉並区が区有の十五台の車両でバイオガソリンを優先して使うなどの動きもある。また、根岸製油所のタンクの貯蔵能力に余裕があるため、予定の大幅な前倒しに踏み切る。
販売網の拡大も急ぐ。現在、バイオガソリンは首都圏の五十店のみで販売している。来年度中に百店に増やす計画だったが、百十店程度にまで増やすほか、来年度を待たずに早期に増設することを検討している。「多くのスタンドから取り扱いたいとの申し出が相次いでいる」(石連)ためで、普及スピードを加速する。
三菱自、来月ブラジルで、エタノール・ガソリンOK、「フレックス車」市販。
三菱自動車はエタノールとガソリンどちらでも走れる「フレックス車」=写真=を七月からブラジルで販売する。主力車「パジェロ」をベースに開発し、エタノールとガソリンを混合しても走れるよう設計した。初年度に七千台強の販売を見込む。
現地法人、MMC・アウトモトレス・ド・ブラジルを通じて生産、販売する。ガソリンとエタノールのどちらの燃料でも、効率良く燃焼できるようエンジンを改良した。三菱自がフレックス車を市販するのは初めて。今後、ガソリンだけ使える現行車をすべてフレックス車に切り替える。
三菱自のフレックス車はエタノールとガソリンの割合をどのように変えても走れる。ガソリンだけの最高出力は百三十三馬力、エタノールだけは百三十五馬力を出せる。現行のガソリン車とほぼ同じ走行能力を持つ。現行車はAT(自動車変速機)モデルで約五百万円で発売しており、フレックス車も同水準の価格になる見通し。
ブラジル市場ではフレックス車の販売が伸びており、日本メーカーではトヨタ自動車、ホンダなどが参入している。
粗糖、供給過剰で上値重い――エタノール需要、増産呼ぶ(商品スコープ)
粗糖の国際価格は上値が重い状況が続いている。世界的な豊作により来砂糖年度(二〇〇七年十月―〇八年九月)も供給過剰となる見通しで、需給緩和を背景に買いが減退しているためだ。
指標となるニューヨーク市場の先物(期近)は現在、一ポンド九セント前後とほぼ二年ぶりの安値水準。自動車燃料バイオエタノール需要の拡大を材料に二十五年ぶりの高値をつけた〇六年二月三日の一九・三セントからは五三%近く下落している。
相場下落のきっかけはこの〇六年の高値だ。エタノール需要のさらなる伸びを見込んだサトウキビ生産国の増産意欲を刺激した。最大生産国ブラジルの来年度の生産量は前年度比一〇%増の四億二千万トンとなる見通し。二位のインドも今年度(〇六年十月―〇七年九月)は砂糖換算で二千五百万トンと二五%増え、過去最高になる見込み。来年度はさらに増えるとの見方も出ている。
国際砂糖機関(ISO)は五月、今年度の砂糖余剰量予測を九百万トンと二月時点に比べ約二百万トン上方修正した。来年度も「供給過剰は続く」との見通しを示している。これが最近の相場の上値を重くしている。
一時八セント台前半まで下げた反動もあって足元ではやや買いが増えている。米商品先物取引委員会によると十二日時点の大口投機家の建玉(未決済残高)はほぼ三カ月ぶりに九千六十九枚(枚は最低取引単位)の買い越しに転じた。ただ「上がれば売り圧力がかかる」(商社)との声は多い。
需給面では大きな変化がなく、供給過剰がみえている状況では上値にも限界がある。天候要因で収穫への影響が顕著にならない限り、基調は変わらないとみられる。
ブラジルでエタノール投資急増――工場建設・耕地確保に奔走(世界の市場から)
生産過剰に懸念の声も
ブラジルでエタノールの大規模投資が相次いでいる。同国は世界最大のエタノール輸出国で、環境問題からもその生産事業への注目は高まるばかり。穀物メジャーや著名投資家、投資ファンドまで加わり、工場建設やサトウキビの栽培耕地の確保に奔走。南米の大国がエタノールブームに沸いている。
「今回の大型投資は“投機的”なものだ」。五日、ブラジル初のエタノールサミットに参加した米投資家のジョージ・ソロス氏は十五万ヘクタールのサトウキビ栽培地の確保と、三つのエタノール精製工場の建造に九億ドルを投じるとぶち上げた。中長期的なエタノール価格の高止まりを見込み、二〇一五年をメドに年間十億リットルの生産を目指すという。
ブラジルへのこうした投資は急増中で、エタノール増産に向けた海外企業や投資ファンドによる大型投資が連日のように報じられている。
ブームを後押ししたのは今年三月のブッシュ米大統領のブラジル訪問だ。首脳会談の場所は首都ブラジリアではなく、エタノールの最大生産地サンパウロ州を選んだ。会談では、世界のエタノール生産の七割を占める両国が、将来のエタノールの共通市場創設に向けて協力していくことを確認した。
ブッシュ大統領は今年一月の一般教書演説で、エタノールなど代替燃料の利用拡大などで十年間で国内ガソリン消費の二〇%を削減すると発表。ただ、国内のトウモロコシ産エタノールで賄えない分は海外からの輸入に頼らざるを得ず、潜在力のあるブラジルに脚光が当たる。
エタノールの生産コストは、欧米と比べると、ブラジルは人件費やサトウキビの栽培費用からも割安。ブラジル政府も「サトウキビの栽培地として転用できる手付かずの耕作地がまだまだある」とアピールに躍起だ。
先月末、ブラジル国家配給公社(CONAB)は、今期(二〇〇七年五月―〇八年四月)のエタノール生産量について過去最高の二百億リットルに達するとの予測を発表。さらに同国は作付面積を急激に拡張させる計画で、一三年までに生産量を三百五十七億リットルまで増させるとしており、そこに商機を見る企業や投資家は後を絶たない。
ビル・ゲイツ氏は自身が出資する企業を通し二億ドルを投じてエタノール生産会社の買収や工場の建設に乗り出したとされる。サン・マイクロシステムズの創業者の一人で投資家のビノッド・コースラ氏も、投資ファンドを生産事業の参画に向け資金を準備中という。投資家だけではない。ブラジル大手の砂糖・エタノール生産会社を巡り、米穀物メジャーのブンゲとカーギルなどが激しい買収合戦を繰り広げている。
サンパウロ州では、サトウキビの栽培地の囲い込みも始まり、耕作地の値段が急上昇している。ただ、一部の生産者からはすでにサトウキビの生産過剰による価格低下で、コストと見合わないとの嘆き節も聞かれ、早くも「エタノールバブルの崩壊」を懸念する声もささやかれ始めている。
(サンパウロ=岩城聡)
食品、世界で値上げ連鎖、代替燃料需要で穀物高騰――米国、肉や牛乳も。
日本、食用油10%
ガソリン代替燃料の利用拡大をきっかけとしたトウモロコシなど農産物価格高騰が食品の値上げに波及している。原料コスト増加に悲鳴を上げた食品メーカーが出荷価格への転嫁を進めている。米国では品目も食肉から牛乳、チョコレートまで拡大。値上げの波は日本にも波及しており、環境対策が食卓を直撃する事態になっている。
食品価格上昇の発端は米国のエネルギー政策だ。ブッシュ政権がガソリン代替燃料としてエタノールの利用を奨励、原料のトウモロコシが需要増を見越して昨秋から急騰した。国際取引価格は二月に一ブッシェル=四・三ドル台半ばと十年七カ月ぶりの高値を付け、現在も高止まりする。
価格上昇はトウモロコシへの転作に伴う作付面積の減少懸念から他の穀物、農産物に及んでいるほか、飼料コストの上昇を通じて食肉、卵、乳製品などにも波及する。
米国では食品大手ゼネラル・ミルズがコーンフレークなどシリアルの国内出荷価格を六月下旬から引き上げる。主力ブランドの値上げ率は四―五%前後。同業のケロッグに追随する。ほかにもHJハインツが冷凍ポテト、クラフト・フーズがクッキーやクラッカーといった具合に値上げが相次いでいる。
食肉大手のタイソン・フーズの一―三月期の牛肉の販売価格は前年同期比三%、鶏肉は同九%上昇した。シカゴ先物市場ではチェダーチーズ用原料乳の価格が一時、年初に比べ五割近く上昇。チョコレート大手のハーシーは牛乳高に対応し四月に主力製品を四―五%値上げした。
小売価格への転嫁も始まっている。米農務省は今年の食品の消費者物価指数(CPI)が前年比三―四%上昇と三年ぶりの高い伸びになると予測している。
欧州では小売価格への転嫁はあまり見られないが、三月の英卸売物価指数は牛肉が前年同月比で八・四%上昇。ビールに使う大麦の価格は昨年五月から今年二月までの間に八五%上がった。
日本国内でも値上げの動きが広がっている。食用油では日清オイリオグループ、J―オイルミルズが七月分から出荷価格を一〇%前後引き上げ、マヨネーズはキユーピーや味の素が六月から七月にかけて約一〇%値上げしている。収穫減少が懸念されるオレンジの果汁価格が上昇。ジュースの出荷価格に響いている。
中国でも食肉用の子豚の価格が前年の約一・七倍に急騰、CPIは五月まで三カ月連続で前年同月比三%台の上昇を続けている。
食品高騰は途上国の社会不安の芽にもなりかねない。メキシコでは今年初め、トウモロコシを原料とする主食トルティーヤが高騰し国内各地で抗議デモが起きた。
ただ楽観論もある。三井物産フューチャーズの江守哲・投資戦略室長は「トウモロコシの価格はバイオ燃料として採算が合わない水準まで上がっており、さらなる上昇余地は乏しい」と指摘。ほかの食品への波及もいずれ止まるとみている。
【表】世界的に広がる食品価格の上昇
| 米国 | コーンフレークやチョコレート値上げ |
| 原料乳先物は年初比5割近い上昇 | |
| 欧州 | 食品大手などが値上げ検討 |
| 日本 | 食用油、マヨネーズ、果汁飲料、コーヒーなどで10―20%値上げ表明 |
| 中国 | 食肉用子豚が1年で71% |
| 上昇1―4月の平均で卵、鶏肉は2割超、牛肉、羊肉は1割前後上昇 |
東洋エンジ、肥料プラント受注、ベネズエラで610億円。
東洋エンジニアリングはドイツ企業などと共同で、ベネズエラの国営石油化学会社ペキベンから同国最大規模となる肥料プラントの設計や建設を受注した。天然ガスを原料に尿素肥料を製造する。総事業費は約千四百二十億円で、うち東洋エンジの受注分は約六百十億円とみられる。代替燃料のバイオエタノールの広がりで農作物の需要が世界的に拡大しており、同社は肥料プラントの受注拡大を目指す。
受注したのはベネズエラ北部のモロンに新設されるプラントで、国産の天然ガスを原料に日産千八百トンのアンモニアを製造。アンモニアから固形の尿素肥料を日産二千二百トンつくる。
東洋エンジは尿素製造設備、共同受注した独エンジニアリング大手のマンフェロシュタールがアンモニア製造設備のそれぞれ設計や資機材調達、建設管理を担当する。電力系などの補助的な設備の建設などは現地のエンジニアリング会社が受け持つ。二〇一〇年八月末に完成する予定。
三菱商事とキリン、エタノール製造施設の建設受注。
三菱商事とキリンビールは十九日、北海道・十勝地区のバイオエタノール実証プロジェクトで、エタノール製造施設の建設を受注したと発表した。受注額は約六十億円で、二〇〇九年三月の稼働を目指す。地元農協など事業者がてん菜や小麦などをもとにエタノールを製造。石油製品と合成する「ETBE」の原料として販売される見込み。
プロジェクトは農林水産省の実証事業として北海道農業協同組合中央会などが実施。ホクレン清水製糖工場(北海道清水町)の一角に年間製造能力一・五万キロリットルのエタノール製造施設を設ける。バイオエタノール製造設備では国内最大級という。
三菱商事が中心になってキリンビール、日本化学機械製造(大阪市)と組む。
バイオ燃料、次世代型の開発進む――新日石、劣化少なく、ホンダ、食料使わず。
地球温暖化の防止につながるとして普及が始まったバイオ燃料で、品質や原料供給の安定性に優れた次世代型の開発が進んでいる。新日本石油は劣化が少ないバイオディーゼルを開発、ホンダは食品を原料としないバイオエタノールの生産に着手した。食料の高騰など問題点が指摘されるバイオ燃料の普及を後押しすると期待される。
東京・渋谷駅と新橋駅を結ぶバス路線「都01系」。この路線で十月にも次世代バイオディーゼル燃料を積んだ都バスが実証実験を始める。
バスが使う燃料は新日本石油とトヨタ自動車、日野自動車が共同開発。ナタネなど植物油を水素で精製したバイオディーゼルで「水素化バイオ軽油」と呼ばれる。植物油をメタノールで処理して作る従来タイプと異なり、二つの炭素が二重結合した部分がなくエンジンで燃やしても酸化しにくい。
新日石の岡崎肇中央技術研究所長は「車両故障の心配がなく高い濃度でも使える」と強調する。都バスの走行では石油系軽油に対して一〇%のバイオディーゼルを混ぜる。通常のバイオ燃料はエンジン故障の恐れから五%程度で濃度は二倍。二年程度の実験を経て本格導入するかどうか判断する考えだ。
バイオ燃料はトウモロコシやパーム油などバイオマス(生物資源)から合成する。二酸化炭素(CO2)を吸収する植物を原料に使い京都議定書では温暖化ガスを全く出さない「カーボンニュートラル」として扱える。このため四月からバイオエタノールが東京などのガソリンスタンドで販売が始まったほか、バイオディーゼルも廃食油を回収する京都府で実績を上げている。
ただ、現在普及するバイオ燃料は課題が残る。燃料として使うと劣化しやすくエンジンの性能が落ちる恐れがある。新日石が開発した燃料はこの問題を解決し、第二世代のバイオディーゼルと呼ばれる。同社は根岸製油所(横浜市)で本格普及を見込んだ生産準備を着々と進める。
ガソリンの代替となるバイオエタノールでも次世代型の研究が進む。本田技術研究所と地球環境産業技術研究機構(RITE)は食料を原料としないバイオエタノールを開発。埼玉県和光市の同研究所で五月末に実験プラントで生産を始めた。
プラントは稲ワラに含まれるセルロースなどを微生物で分解、得られた糖を発酵してエタノールを作る。トウモロコシなどを使わず、木くずや茎でも合成できる。RITEの湯川英明・微生物研究グループリーダーは「バイオ燃料の普及には食料生産を圧迫しない原料が欠かせない」と将来性を強調する。
プラントは小規模だが生産が軌道に乗ればホンダ車に積んで走行実験を始める計画。将来はガソリン並みの一リットル当たり三十円(税含まず)の生産コストを目指す。次世代燃料の原料には食品廃棄物や林地で出る間伐材も活用が見込まれる。
政府は京都議定書の排出削減目標を達成する目的から、バイオ燃料を二〇一〇年度までに原油換算で五十万キロリットル導入する計画を立てている。ただ、国内では品質の問題から高濃度バイオ燃料の利用は及び腰なうえ、原料の供給も限界があると指摘されている。次世代燃料の開発がこうした問題解決の突破口となるかもしれない。(竹下敦宣)
三菱商事やキリンビール、バイオエタノール製造施設、北海道で受注。
三菱商事とキリンビールは十九日、北海道・十勝地区で地元農協が主体となって進めるバイオエタノール実証プロジェクトについて、エタノール製造施設の建設を受注したと発表した。受注額は約六十億円。てん菜や小麦などをもとに製造。石油製品と合成する「ETBE」の原料として販売されるという。二〇〇九年三月に稼働する。
プロジェクトは農林水産省の「バイオ燃料地域利用モデル実証事業」の採択案件として、北海道農業協同組合中央会やホクレン農業協同組合連合会が計画。ホクレン十勝清水製糖工場(北海道清水町)の一角にエタノール製造施設を設ける。年間製造能力は一・五万キロリットル。「バイオエタノール製造設備として国内最大級」(三菱商事)という。
三菱商事とキリンビール、日本化学機械製造(大阪市)でコンソーシアムを形成。三菱商事がとりまとめを担当。キリンビールは発酵技術などをもとにしたプラント設計ノウハウ、日本化学機械製造は蒸留設備の構築技術を提供する。七月にも着工する。
中央会などは製造・販売を手がける新会社、北海道バイオエタノール(札幌市)を設立した。道内の各農協連合会が出資。道内企業などにも出資を要請している。
ホクレンなど新会社、農産物原料にエタノール製造。
ホクレン農業協同組合連合会などは十九日、農産物を原料にしたバイオエタノールを製造、販売する新会社「北海道バイオエタノール」(札幌市)を設立した。北海道農業協同組合中央会の飛田稔章副会長が社長に就任。ホクレンや中央会など農業五団体が九億七千万円を出資するほか、道内の民間企業にも出資を募り、十億円以上に引き上げる。
十勝管内清水町に新設する製造工場は、三菱商事を中心にした事業体が受注した。事業費は六十億円。七月に着工し二〇〇九年度からの稼働を目指す。
豪州で干ばつ、小麦価格高騰――讃岐うどんに値上げの動き(四国リポート)
個人店、客離れに不安
讃岐うどんに値上げの動きが出始めている。豪州の干ばつで日清製粉など製粉各社が今春、原料となる業務用小麦粉を値上げしたのに続き、バイオエタノールの需要増による穀物相場の上昇も加わり、一部のうどん店は販売価格に転嫁せざるを得なくなってきた。安さを売り物にしてきた讃岐うどん店は原料値上げと顧客離れの懸念のはざまで悩みを深めている。
「これ以上しのぎようがない。苦渋の決断だった」。昼時には行列ができるセルフ式の人気うどん店、上原製麺所(高松市)の上原政則社長は無念そうに語る。
七月一日から、一杯百七十円のかけうどん小(二百グラム)を二百円、二百七十円の大(四百グラム)を三百円に値上げする。贈答用半生うどん(六食分)も千五十円から千二百六十円にする。消費税が五%になった一九九七年以来の値上げで、贈答用は二十年以上前に発売して以来初の値上げだ。
「値上げ後も『安い』と思える範囲の値段」と上原社長は話すが、九百店近くのうどん店がひしめく香川県は競争が激しい。「(他店に客が流れないか)不安もある」(上原社長)
同社が値上げを決めた理由の一つは、「百年に一度」とされる豪州の干ばつで小麦が高騰し、日清製粉など製粉各社が今春、業務用の小麦粉を二十五キロ二十―六十円程度値上げしたため。小麦の九割を輸入に頼る日本は政府が豪州などから小麦を買って製粉各社に売っているが、政府が四月に販売価格を引き上げたのに対応した。
バイオエタノールの需要増による穀物価格の高騰も大きな要因だ。うどん作りでは生地が付かないようにまぶす打ち粉にトウモロコシなどのでんぷんを使う。価格の高騰を受け、上原製麺所では「使用量を数年前に比べ三分の一に減らした」(上原社長)という。
三木町でセルフ店を経営する寒川食品は小麦粉の値上げを見越し、四月に値上げした。上げ幅は一杯一割強の二十円。ガスなどの経費も増え、「経営努力で吸収しきれなくなった」(寒川浩司社長)。まんのう町の人気店「山内うどん」は値上げ要請は今のところないが、「小麦粉が上がれば(うどんも)上げざるを得ない」という。
「まんまる はなまるうどん」を全国で百九十四店舗展開するはなまる(東京・中央)は、「現状では値上げは考えていない」(商品部)。規模の大きさを生かして小麦粉の仕入れ値を抑えられているからだ。
だが県内のうどん店は家族経営が九割以上を占める。今回の製粉会社からの原料の値上げ要請も、多くの店舗が全面的に受け入れざるを得なかった。国内製粉業界は大手メーカー四社で市場の八割を占めるなど売り手が強く、「個人店相手だと、値上げは要請ではなく『通知』。とても交渉できる立場ではない」(高松市内の製麺所)という。
このためさぬきうどん協同組合(高松市)は近く、製粉会社と交渉する際のマニュアルを作成する。大峯茂樹理事長は「大げさに言えば、店を閉めるか値上げするかのどちらかというくらい個人店には切実な状況」と危機感を募らせる。
こうした状況のなか、多くの店はうどんの値上げについて「他店の動きを含め様子を見ている」(さぬき麺業の香川政明社長)のが大半。業界内では十月にも、再び原料の値上げがあるとの見方が強まっている。今回を上回る値上げとも言われ、一年に何度も値上げをして顧客が離れるのを懸念し、様子見の店が多い。一方で価格転嫁が遅れると経営は圧迫される。うどん店の悩みは当分続きそうだ。
(高松支局 小泉裕之)
エネルギー需要伸び鈍化、世界の昨年、2.4%増どまり、英BP調べ――中国は旺盛。
中国は旺盛、16%占める
英BPが発表した二〇〇七年版「世界エネルギー統計」によると、昨年の世界の石油・石炭などのエネルギー需要は〇五年比二・四%増だった。〇四年(四・三%増)、〇五年(三・二%増)の伸びを下回り原油高を背景に需要拡大ペースが鈍化している。ただ中国のエネルギー需要は旺盛で昨年は八・四%増えた。
中国のエネルギー需要は全体の約一六%を占めた。中国では石炭火力発電所の発電能力が二四%増えて石炭需要は八・七%増と全体の三九%を占めるまでに拡大。国内需要増加で中国からの石炭輸出量は四五%減った。
昨年の石炭の国際価格は二・五%下落。中国以外でも需要は大きく、全体では四・五%伸びた。BPでは石炭の需要増が今後も続き、二酸化炭素(CO2)など温暖化ガス排出量の大幅削減は難しいと予想する。
中国の石油需要は六・七%増と過去十年の平均値並み。天然ガス需要は二一・六%増と拡大し、国内ガス生産量も一七・二%増えた。
世界の石油需要の伸び率は〇・七%増にとどまった。〇一年以来の低水準で過去十年の平均のほぼ半分。原油価格は北海ブレントで一バレル六五・一四ドルと前年比約二〇%上昇し需要を抑えた。
世界の石油生産の伸び率は〇・四%と過去五年で最低。ノルウェーや英国など経済協力開発機構(OECD)加盟国の落ち込みを旧ソ連圏が補った。アゼルバイジャンやカザフスタンの生産が急増、アンゴラの生産量も一四%伸びた。
BPは国営石油会社が大きなシェアを占める地域に原油生産が偏っていると指摘。ロシアやベネズエラなどでの資源ナショナリズムの影響を受けやすくなっていることを示唆した。ただ昨年末時点の原油の確認埋蔵量で向こう四十年の需要を賄えると説明している。
昨年は化石燃料以外のエネルギー需要も伸びた。原子力発電が一・四%増、水力発電が三・二%増。それぞれ世界全体のエネルギー需要の六%を占める。原子力発電所は中国とインドに一基ずつ新設されたが、欧州で八基が閉鎖された。
風力や太陽光、バイオマスなど再生可能エネルギーの需要は伸びているものの、全体からみるとまだ少ない。エタノールの生産量は二〇%強の伸びを示したが、エネルギー量に換算して比較すると世界の石油需要の〇・五%に相当する程度だという。
(ロンドン=林理佳)
中国脅かす食品価格高騰(けいざい解読)
中国総局 吉田忠則
中国にインフレ懸念がちらつき始めた。五月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で三・四%上昇した。今年に入って政府目標の「三%以下」を達成できなかった月はこれで二回目。海外が心配する中国の高成長の挫折は株価バブルでも不動産投資の過熱でもなく、インフレをきっかけに起きる可能性がある。
北京の中心にある柳芳街市場。低所得層が多く集まる市場の奥の薄暗い一角で豚肉店の女性店主(47)は仕入れ価格高騰に怒りの声を上げた。「三カ月続けて損が出た。こんな商売は続けたくない」。利益を出そうと小売値に転嫁すれば客足が遠のく。隣の店主(45)は「客が半分に減ってもまだ止まらない」と嘆く。
CPIの急上昇を引っ張っているのが食品価格。なかでも豚肉などの値上がりはすさまじく、五月は「肉類やその関連品」の上昇率が二六%に達した。
高騰は混乱を招いた。広東省東莞市では四月以降に一万五千二百キログラムの「劣悪な肉類」が摘発された。値上がりに便乗しようと水で増量したり、病死した豚の肉だ。北京では二十四時間態勢で当局が市場を監視するようになった。
事態を重くみた政府は十二日に記者会見した。株価のバブルがいくら心配されても開いたことのない異例の緊急会見だ。しかし肝心の豚肉価格の行方については「値下がりするには時間がかかる」(農業省の陳偉生・副畜牧業局長)と歯切れの悪い答えしかできなかった。
国家発展改革委員会の周望軍・副価格局長は豚肉が値上がりしたのは「米国がトウモロコシを使ってバイオエタノールを作り、飼料価格が上がったせいだ」と説明する。口てい疫や原因不明の高熱で昨年、多くの農家が養豚をあきらめたことがこれに重なった。
二年前に住宅価格が上昇した時のように、普通なら中国は行政命令で値上がりを抑える。しかし今回はそう単純にはいかない。胡錦濤国家主席は四月三十日に河南省の小麦畑で農民の肩に手をかけ、「農民が作付けに積極的でなくなったら、我々は食べるものがなくなる」と持ち上げた。
都市と農村の収入の差は公式統計で三・三倍。企業や政府の幹部が手にする“灰色収入”も含めれば実際の格差ははるかに大きい。都市と農村の差を縮めるには「農産物価格を上げる必要がある」(北京師範大学の唐任伍教授)。
一方、食品価格の高騰で苦しむ都市の低所得層の多くは農村からあふれ出た出稼ぎ労働者。その数は一億人をはるかに超す。物価の上昇を力ずくで抑えても放置しても、ツケを負うのは広い意味でどちらも農民。ここに中国の経済・社会問題の核心がある。
中国は今年、五年連続で一〇%超の高成長をとげるのは確実。海外から景気過熱を指摘されても涼しい顔でいられたのはインフレと無縁だったからだ。だが師範大学の唐教授が指摘するように「食品価格の上昇が続くのは必然」。指導者がいくら励ましても、長期的に工業化による農地の減少は避けられないからだ。
「高成長下の低インフレ」という“成功の方程式”を資産バブルとその崩壊ではなく農村問題が脅かす。中国がどう解決するのかみえないが、かじ取りを誤れば世界経済にも影響する。
金の卵エタノール――米農業、マネーに躍る、ファンド続々(世界を読む)
「食料」など歪みも
ガソリン代替燃料のエタノール?ブームが米国の農業を変え始めた。原料のトウモロコシ産地に流入した投資マネーは家畜、農地にも向かい、物価上昇を引き起こす。マネーが経済を大きく動かすファンド資本主義の波に洗われる米農業の現場を探ってみた。
イリノイ州西部リナ。ぐるっと地平線が見渡せる農道の先に立つアドキンス・エナジー社の煙突が目に飛び込んでくる。約千三百軒の周辺農家が共同出資するエタノール工場だ。
次々と走り込んでくるトラックが停車すると、積み荷のトウモロコシの山に湿度を測る棒が突き刺さる。水分によって品質を確かめるためだ。生産量は年四千二百五十万ガロン(一ガロン=三・七八リットル)と、穀物メジャーのエタノール工場よりはるかに少ない。そんな工場が生き残れるのか。銀行は融資に及び腰だった。
五年前に稼働にこぎつけたが、排煙のにおいに地域住民の苦情が殺到。しかしエタノールブームの追い風を受け二〇〇五年から配当を払えるようになった。昨年の配当は出資金千ドルに対し二千二百ドル。「いい投資と言ってもらえるようになった」と同社のマート・グリーンさんは語る。
米農業の中核都市シカゴ。穀物などを対象に投資するコール・パートナーズ社を、ダウンタウンの質素なオフィスビルの一室に訪ねた。社員八人の小所帯。市内に集積する「ブティック」と呼ばれる専門性の高いファンドのひとつだ。
〇五年に始めた資源投資ファンドの利回りは年一七%強。総資産の二三%を穀物、家畜の先物などで運用する。ブラッド・コール社長は「穀物に精通したプロはマンハッタンではなく、産地の近くにいるんだ」と強調する。そんなプロを発掘し、投資家に紹介するのも仕事だ。顧客はこの一年で倍増し、年金など機関投資家五十社を抱える。
同社によると、穀物など国際商品投資に特化するヘッジファンドは世界に三百五十社あり、資産残高は二百五十億ドル(約三兆五百億円)。資産の二割が農業関連に投資されている。背後には株や債券以外の投資先を求める年金基金などがおり、ファンドの資産残高は年末に三百五十億ドル程度まで拡大するという。
農地も投資対象だ。大手保険会社傘下のハンコック農業投資グループ(マサチューセッツ州)は農地を購入し、転売や賃貸、作物栽培で得た収入を顧客に払う。現在保有・運営する農地の評価額は八億六千万ドルを超え、三年で二倍強になった。「担当者は土地探しに忙殺されている」(ジェフリー・コンラッド社長)。コーンベルト?地帯での運用成績は上々で三年間の利回りは年二五%近い。
中西部の農地価格は四月時点で一年前に比べ一〇%上昇した。エタノール工場の新設が相次ぐアイオワ州の上昇率は一六%に達する。トウモロコシ高騰を理由に金融機関が融資枠を広げた影響だ。
一方で、コンラッド社長は警戒感も強める。「作物の出来は天候次第で価格変動も激しい。分散投資しないと危険だ」。農地投資とともに作物を委託栽培する同社はトウモロコシの作付けを一二%にし、アーモンド(二一%)などを下回る水準に抑える。
「今年は最高の年になりそうだ」。アイオワ州プレーリーシティー近郊の畑で、ゴードン・ワサナーさんは腰まで伸びたトウモロコシの葉の勢いをそっと確かめた。耕地面積は六百ヘクタールと、東京ディズニーリゾート四つ分。収穫時には、全地球測位システムを備えたコンバインを操る。今年は耕地の三分の二にトウモロコシを植えた。例年なら耕地の半分だが、ブッシュ大統領がエタノールの利用を奨励したため、原料の高値が続くと判断したからだ。
だが、エタノールブームが生み出す歪(ひず)みは小さくない。地球温暖化や原油高を背景に、世界ではサトウキビなどを原料にエタノール生産が加速しているが、米国の原料はトウモロコシ。食料供給に影響するだけでなく、飼料が減る懸念で食肉価格が上がり、食品全体の物価にも響く。トウモロコシを原料にしたエタノール生産にはおのずと限界もあり、ガソリン代替燃料の本命なのか不明だ。
米中西部でマネーが引き起こす変化は、日本を含む世界の農業やエネルギー情勢まで揺さぶりかねない。
(シカゴ=毛利靖子)
コーンベルト
米中西部で東西にベルト状に広がるトウモロコシの主要産地。米農務省によるとイリノイ、アイオワ、インディアナ、オハイオ、ミズーリの各州を指す。ミシガン湖周辺のミシガン、ミネソタ、ウィスコンシン州なども加えて呼ぶことが多い。
米国産トウモロコシの七割を生産し、シカゴ商品取引所のトウモロコシ先物価格は世界各地で取引する際の指標となっている。肥よくな土壌に恵まれ、大豆や小麦、家畜の飼育も盛んだが、生産者は需要の拡大をにらんでトウモロコシの作付けを増やしている。
エタノール
温暖化ガスの削減に役立つとされる代替エネルギーの有力候補。生産高世界一の米国ではトウモロコシが原料で、四割は農家が出資する工場で生産される。輸入石油への依存度引き下げを狙うブッシュ政権はガソリン高などを背景に二〇〇五年から利用を奨励し始めた。
全米再生可能燃料協会によると、現在百十九カ所のエタノール工場があり新増設も八十五カ所で進行中。全部稼働すると生産能力は現在の二倍の年百二十五億ガロンまで拡大する見込み。
ワールド暦 ~7月
■米国
〈6月19日〉米・イスラエル首脳会談
〈27、28日〉米連邦公開市場委員会(FOMC)
〈7月1日〉プーチン・ロシア大統領が米国訪問(2日まで)
■欧州
〈6月27日〉英でブラウン政権が発足
〈7月1日〉アフリカ連合(AU)首脳会議(ガーナ、3日まで)
〈22日〉トルコ総選挙
■アジア
〈7月1日〉香港返還10周年記念日
〈5日〉アジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易担当閣僚会議(豪ケアンズ、6日まで)
〈7日〉ゴア前米副大統領と環境保護団体が日本や欧米などで温暖化防止を訴えるコンサートを開催
さらに深読み―参考書籍・サイト―
- ◇「資源インフレ―日本を襲う経済リスクの正体」柴田明夫 日本経済新聞出版社
- ◇「図解 バイオエタノール最前線」大聖泰弘・三井物産 工業調査会
- ◇「“トウモロコシ”から読む世界経済」江藤隆司 光文社新書
- ◇「世界食料農業白書 2006年版」国際連合食糧農業機関 国際食糧農業協会
- ◇「食料の世界地図」エリック・ミルストーン、ティム・ラング 大賀圭治、高田直也、中山里美訳 丸善
- ◇米農務省(http://www.usda.gov)
環境技術、トヨタ、全方位戦略を加速、低公害ディーゼル、需要拡大に対応。
トヨタ自動車が低公害型ディーゼルエンジンをいすゞ自動車から調達する背景には環境技術の全方位戦略を加速する狙いがある。トヨタはハイブリッド車で先行したが、特定分野の環境対応車に傾斜しすぎるのはリスクが大きいと判断。開発・生産でのいすゞの経営資源を活用しディーゼル車の競争力を高める。(1面参照)
トヨタの環境戦略のキーワードは「適時、適地、適車」だ。地域ごとの需要動向に最も適した環境対応車を迅速に投入する。日本では低公害車としてハイブリッド車が普及するが、欧州ではディーゼル車が主流。米国や南米ではエタノール車が勢力を伸ばしている。その中でも二酸化炭素(CO2)の排出が少なく、燃料費も安いディーゼル車は日米や新興国でも普及する可能性が高いとされる。ホンダや欧州勢は世界規模で普及させる構え。
いすゞとの提携は、年間に九千億円強の研究開発費と一兆五千億円の設備投資をつぎ込むトヨタでさえ、単独では全方位戦略の推進が難しいことを示している。トヨタ以外でハイブリッド車、ディーゼル車、エタノール車のすべてを手掛けられるのはホンダと日産自動車に絞られる。
中堅各社は様々な分野に開発費を振り向ける余裕はない。三菱自動車は電気自動車に注力し、富士重工業は独自技術の水平対向エンジンを燃費規制に対応できる環境対応型に刷新する。中堅各社の得意技術を取り込む形で提携の動きが広がる可能性が出てきた。
バイオ燃料工場の新設認可停止へ 中国政府が方針
【北京=吉岡桂子】中国政府は新エネルギーとして期待してきたトウモロコシなど穀物を使ったバイオエタノールの生産の拡大を見直し、工場新設を認めない方針を固めた。食糧の値上がりを抑えるためで、稼働中の工場には食用や飼料にならない部分や植物の使用を徐々に促す。国営新華社通信がこのほど伝えた。
政府は吉林省などの4工場に補助金を出し、トウモロコシなどを使って年間百数十万トンのエタノールを生産。ガソリンに10%混ぜて9省で販売している。
発信箱・加越能:バイオ燃料は人類の大切な食糧 /富山
どうもバイオエタノール燃料が気になって仕方がない。世界中でトウモロコシや小麦の価格が急騰。私のお気に入りのパン屋さんもこのままでは値上げせざるを得ない、と嘆いていた。
日本人が食べるパンが値上がりするぐらいならいい。ただ小麦やトウモロコシは開発途上国など飢えに苦しむ人たちの大切な食糧。大国の気まぐれとしか思えない燃料転換で、飢える人々がさらなる空腹にさらされるのはお門違いだ。
バイオエタノールの原料は、新たな資源ではなく、今まである田んぼや畑の作物を燃料に目的変換するだけ。農地開発するにしても、森林開発ならもってのほかだし、そうでなくても地球上の土地には限りがあり、原料も無限ではない。このまま需要が増え続ければ先は見えている。
人の口に入れるものを燃料にするというのも日本人の倫理観には合わないような気がする。いくらCO2を排出しないといっても、人類には優しくないと思うのだが、代替案がないのがつらい。【青山郁子】
(ざっくばらん)ブラウンさん、バイオ燃料は救世主ですか? 穀物高騰で貧困層打撃
地球温暖化対策の切り札と注目されるバイオ燃料の試験販売が先月、首都圏で始まった。日本の消費者も燃料を選べる時代になるが、バイオ燃料は地球の「救世主」になるのか。環境問題の第一人者、レスター・ブラウンさんに聞いた。
▼▼なぜ今、バイオ燃料がブームなのですか。
「05年8月末に米国を襲ったハリケーン『カトリーナ』の影響が大きい。石油施設への被害で石油価格が上昇し、将来の安定供給や枯渇への不安が高まった。石油の代替燃料として注目が集まった」
▼▼米ブッシュ政権も普及に積極的です。
「バイオ燃料は中東への石油依存度を抑え、環境への負荷が小さい。穀物を生産する農家にも有益だ。しかし、問題はここにある。バイオ燃料は大量の穀物を消費するのだ」
「例えば、乗用車の25ガロン(約95リットル)のタンクをバイオエタノールで満杯にするには、1人が1年間に食べる量の穀物が必要だ。08年末には米国の穀物の3割が燃料に振り向けられる見通しで、原料のトウモロコシの先物価格は昨年比で約2倍になった。隣国メキシコでも、主食トルティーヤの原料になるトウモロコシが値上がりし、低所得者が抗議のデモを起こした」
▼▼低所得者にしわ寄せが行くということですか。
「食糧とエネルギーの境界線がなくなり、石油価格が穀物価格を左右するようになった。8億人の車所有者と20億人の貧困層が同じ食糧を巡って争う構図だ。このまま食糧価格が上がれば政治不安が起き、世界の経済発展にも影響が出るだろう」
▼▼バイオ燃料を使うべきでないなら、代わりにどうすればいいのですか。
「穀物を原料とするものは、あまり使わない方がいい。日本の穀物輸入量は世界一だ。さらにバイオ燃料を使えば、穀物価格の上昇に拍車をかける。日本はハイブリッド車や太陽光発電の開発のリーダー役なのだから、こうした自然エネルギーの導入に力を入れるべきだ」
▼▼温暖化は来月の主要国首脳会議(G8サミット)の主要テーマですが、足並みがそろいません。
「(温室効果ガス排出削減の数値目標を求める)欧州の説得に米国が応じるかどうか分からない。ただ、温暖化に対する米国民の関心は非常に高まっている。米国では400以上の市や州が京都議定書に準じた目標を自ら立て、街頭の白熱灯をLED(発光ダイオード)にしたり、公用車をハイブリッド車に買い替えたりしている。こうした『草の根活動』が政府を突き上げる力になる。来年の大統領選では、温暖化に関心のない候補は選ばれないだろう」(聞き手・田中美保)
レスター・ブラウンさん アースポリシー研究所所長 米農務省国際農業開発局長などを経て01年から現職。87年、国連環境賞受賞。著書に「地球白書」。73歳。
◇キーワード
<バイオ燃料> トウモロコシやサトウキビなど穀物に含まれる糖から作られるアルコール燃料。植物は二酸化炭素(CO2)を取り込んで育つため、理論上はバイオ燃料を燃やしても大気中のCO2は増えない。穀物以外に廃木材や稲わらに含まれるセルロースを原料にしたものもあるが、コスト面などで課題がある。バイオ燃料の主軸バイオエタノールの05年の世界生産量は4500万キロリットルで、01年比1・5倍に増加。米国とブラジルで約7割を占める。
バイオ燃料:需要拡大 増産、生態系に影響
ガソリンや軽油の代替燃料となる植物由来の「バイオエタノール」「バイオディーゼル」の需要が世界的に増えている。植物の成長過程で二酸化炭素(CO2)を吸収するため燃やしても大気中のCO2は増えず、エネルギー安全保障面でも有効なためだ。原料のサトウキビなどの作付面積は急拡大している。環境にやさしいはずだが、大生産国では逆に生態系を破壊している。東京都内で開かれたシンポジウムを基に報告する。【永山悦子、江口一】
◇ブラジルは倍増へ
「バイオ燃料への転換に伴い、環境負荷が増える恐れがあることを認識すべきだ」。バイオエタノール大国、ブラジルで環境問題の調査にあたる福代孝良・在リオデジャネイロ総領事館専門調査員は、シンポジウムでそう訴えた。
ブラジル政府は75年、第1次石油危機の経験から、輸入原油に依存するエネルギー政策を見直す「国家アルコール計画」を発表した。サトウキビが原料のバイオエタノールの増産に取り組み、現在は年約1600万キロリットルを生産する。燃料にバイオエタノールもガソリンも両方使えるフレックス車は、新車販売の8割以上を占める。
現在のバイオエタノール輸出量は約250万キロリットル。政府は20年までにバイオ燃料生産を05年比で倍増する指針を策定したが、サトウキビ畑の大幅な拡大が不可欠だ。
◇熱帯雨林を破壊
農地開発のターゲットになっているのが、中部のセラード地域。世界最大の熱帯サバンナ地帯で、16万種以上の動植物が生息する生物多様性の宝庫だ。政府は、この地域に農業利用可能地が約9000万ヘクタールあるとしているが、福代さんは「サトウキビ畑の近くに工場を建設することも必要。生態系への影響は避けられない」と指摘。降雨量の多いアマゾン地域はサトウキビ栽培に向かないとされているが、「土地が足りなくなれば、アマゾン開発も加速する」と危機感を募らせる。
シンポジウムでは、バイオディーゼルの原料(パーム油)を作るアブラヤシの栽培に伴って伐採が進む、東南アジアの熱帯雨林の問題も指摘された。マレーシアやインドネシアの熱帯雨林では、まるで「ゴールドラッシュ」のようにアブラヤシ畑開拓とバイオディーゼル工場建設が進む。地球・人間環境フォーラムの満田夏花・主任研究員は「生態系が破壊されるうえ、開発時の火入れに伴う森林火災などが頻発し、温室効果ガスの排出が増えている」と指摘する。
◇食料や飼料が高騰
バイオ燃料の主な原料にはトウモロコシもあり、食料や飼料の価格高騰が始まっている。出席者からは「貧困に苦しむ地域もあるのに、車にまで穀物を食べさせるのか」との声も上がった。
国連は今月、バイオ燃料の秩序ある生産や使用を目指す国際的枠組み作りを提案する報告書を公表した。
シンポジウムを企画したNPOなども今年1月、「輸送用バイオ燃料利用に関する共同提言」を発表=別表。提言に参加したNPO「バイオマス産業社会ネットワーク」の泊みゆき理事長は「『バイオ燃料=エコ燃料』ではない。まず化石燃料の削減を目指し、そのうえで多少高価でも環境や現地の人々に配慮して製造されたものを使うことを世界全体で目指すべきだ」と訴える。
◇欧米で利用拡大、国内はこれから
バイオ燃料は欧米で広く使われている。ブラジルと米国では、それぞれ年間1500万キロリットル以上のバイオエタノールを生産、欧州ではナタネなどを原料とするバイオディーゼルが普及している。
一方、日本国内での普及はこれからだ。環境省は昨年、バイオエタノールを2010年までに約50万キロリットル、30年までに220万キロリットル導入し、ガソリンに混合する目標を決めた。バイオディーゼルの利用も促進し、30年には両者で計400万キロリットルを導入するとしている。
現在、国内でバイオエタノールはほとんど生産されていない。政府は2月、「2030年までに年間生産量600万キロリットル」を掲げ、実現に向けた「工程表」を作成。国産バイオエタノールの大増産構想を本格的に稼働させる方針だ。
◇NPOが策定した輸送用バイオ燃料利用に関する共同提言
- ◆輸送用エネルギー需要を削減するための抜本的対策を実施すること
- ◆国内産・地域産のバイオマス資源、または食糧需要と競合しない生物資源を優先的に利用すること
- ◆原料供給源が明確であり、供給過程の追跡可能性が確保されていること
- ◆生産から加工、流通、消費までのすべての段階を通して、トータルに温暖化防止効果が見込めること
- ◆原料生産にあたって、法令順守、環境・社会影響評価、生態系保全、社会的合意、環境管理の責任が果たされていること
庶民の味ピンチ バイオ燃料注目で穀物高騰 たこ焼き・うどん…価格に影
たこ焼きも、讃岐うどんも値上げのピンチ――。再生可能なエネルギーとして注目されるバイオエタノール。欧米を中心とした需要拡大が、「食」の価格に影を落とし始めている。温室効果ガス削減効果が期待できるとされ、日本でもガソリンと混ぜたバイオガソリンの試験販売が首都圏で始まり、8月には大阪にも登場する。一方で原料となるトウモロコシやサトウキビの争奪戦や転作で、穀物の国際価格の高騰を引き起こしている。「庶民の味を守れるやろか」。ソースの香り、湯気の向こうから、こんな声も聞こえてきた。
◆たこ焼き
大阪市北区。軒先にちょうちんが揺れるたこ焼き店で、女性店主(45)は「この値段でやっていけるかなぁ」と漏らす。12個500円。開店以来14年間変わらぬ価格だが、マヨネーズの値上げが気にかかる。
最大手のキユーピーは6月からマヨネーズの主力商品を約10%値上げする。サトウキビへの転作で大豆、菜種の作付けが減り、マヨネーズの原料となる食用油が高騰しているためだ。
大阪府内には5000店とも6000店とも言われるお好み焼き、たこ焼き店があるが、上方お好み焼たこ焼協同組合の宮原寿夫理事長(ぼてぢゅうコーポレーション社長)は「粉(小麦粉)も上がるかもしれない。小さい店が多い業界。安くておいしい庶民の味を守れるか、心配ですわ」と話す。
◆うどん
日清製粉などは、政府の売り渡し価格引き上げに伴い、今月から一部の業務用小麦粉を値上げした。昨年、オーストラリアを襲った「百年に一度」の干ばつの影響が大きいが、「エタノール需要で穀物全体の価格が上がっている」という。
〈値上げのやむなきにいたりました。ご迷惑かと存じますが、ご協力を〉
安くてうまいうどん店がひしめく高松市。「源芳」の大槻正弘社長は今月、無念の張り紙を出した。24年ぶり、平均で7%のアップ。「天ぷらを揚げる食用油も値上がり。このままでは、倒れてしまいます」
今回の小麦粉の値上げは、うどんに使う中力粉で25キロあたり60円程度。値上げを見合わせているうどん店も多いが、ある製粉会社の担当者は、今後の小麦価格について「さらに、エタノール需要の影響が大きく反映され、秋にはまた上がるだろう」と予測する。
◆高級和牛
庶民の味だけではない。極上牛として知られる但馬牛の産地も悲鳴を上げている。JAたじま(兵庫県豊岡市)などによると、輸入しているトウモロコシ、大豆、大麦の配合飼料は、この1年で1トンあたり約1万円も跳ね上がっている。
その負担は約280軒の生産者にのしかかる。山崎勇喜・畜産課長は「牛の値段はセリで買い手が決める。飼料代が上がったからといってすぐには価格に上乗せされない。いつまで耐えられるか」と嘆く。
柴田明夫・丸紅経済研究所所長の話「世界の穀物在庫率は1999年に31・4%だったが、2006年には15・7%まで下落した。エネルギー市場と食糧市場間、国家間でも穀物の奪い合いが行われており、食料品の値上げは避けられないだろう。国によっては食料危機を招く恐れもある。食物以外を原料にするバイオ燃料の技術開発や、国際協力を進める必要がある」
〈バイオエタノール〉
植物を発酵させて作るアルコール。二酸化炭素(CO2)を吸収して育った植物を使用するため、京都議定書ではCO2排出量はゼロと計算される。米政府は2012年までに年間75億ガロン(1ガロン=約3・8リットル)をガソリンに混ぜて販売するように義務付け。日本は10年度まで原油換算で50万キロ・リットルを使用する目標を掲げている。
(経済気象台)バイオエネルギーは有効か
6月のハイリゲンダム・サミットに向けて、温暖化ガス削減数値目標をどうするか、いやそれ以前にこれを設定するか否かで各国が揺れている。世界的異常気象の中、温暖化対策が喫緊かつ長期課題だとの認識は基本的に共通しているが、産業界の思惑、経済動向などで各国の駆け引きが繰り返され、議論の着地点は不透明である。
この議論の中でも有効な対策としてバイオエネルギーが注目されている。空気中の二酸化炭素を光合成で吸収した原料のため、温暖化ガスを増加させないからだ。しかし、注目が深まるとともに、穀物、糖類またオレンジなどの価格が上昇している。いずれも自動車の代替燃料となるバイオエタノールの原料か、その生産拡大による転作で供給が減ったものである。確かにバイオエネルギーは有効策の一つだが、真に有効であるためには条件がありそうである。
まず、休眠しているものの活用であるべきで、現に活用しているものを急激に転用することは避けるべきである。例えば人間や家畜が食べているトウモロコシを取り上げてしまうと、エネルギー問題は解決したとしても食糧問題が少なくとも短期的には発生することになる。これと同様なことは土地、労働力などの経営資源全体にいえる。
さらに、バイオエネルギーの生産段階での温暖化ガス発生にも留意すべきである。その原料を供給する産業である農業は化学肥料、農業機器などを高度に用いているため今日ではエネルギー多消費産業であることを忘れてはならない。バイオエネルギーで温暖化ガスが減っても、その生産段階で温暖化ガスが増えてしまっては元も子もない。中間に投入するものもバイオエネルギーないしは温暖化からフリーでなければ意味がないことを認識すべきである。
システマティックな構想なしでは、バイオエネルギーは無効な流行に終わる恐れがある。(龍)
2006年度農業白書 食料自給率向上訴え
政府は25日、2006年度の農業白書を閣議決定した。バイオエタノール用のトウモロコシなど燃料用作物の増産や人口増などで世界的に食料事情が悪化する可能性を指摘し、食料自給率の向上を訴えている。
国連食糧農業機関(FAO)は、世界の人口が2006年の65億人から50年には1・4倍の90億人を超え、穀物需要が大幅に増加すると見込んでいる。
これに対し、農産物の生産は、水資源の不足や地球温暖化の影響のほか、ガソリンの代替燃料として需要が増しているバイオエタノールの原料となるトウモロコシなどの需要増などで、深刻な影響を受ける可能性があると白書は指摘した。最近の例として、トウモロコシ、オーストラリアの干ばつで生産が減少した小麦などの価格高騰を挙げた。
日本の食料自給率は1965年度の73%から近年は約40%まで低下している。
(天声人語)排気管に消える穀物
健康食品の雑穀や菓子原料に生き残る粟(あわ)は、かつては広く栽培されていた。〈足柄(あしがら)の箱根の山に粟(あは)蒔(ま)きて 実とはなれるを逢(あ)はなくもあやし〉。万葉集の作者不詳歌は、粟は実ったのに君に会えないのはなぜかと、実らぬ恋を嘆いた。「逢はなく」「粟無く」の掛詞(かけことば)がいい
▼五穀と称された主要穀物で、今も盛んに作られているのは米、麦、豆の三つ。粟や黍(きび)はすっかり珍しくなった。私たちの食生活は、農業や社会のありようを映して千変万化である
▼地球温暖化対策の切り札とされる燃料「バイオエタノール」の生産急増が、世界の食卓を揺さぶり始めた。トウモロコシやサトウキビが燃料生産に回り、飼料と食糧向けが高騰中だ。大豆農家はトウモロコシに乗り換え、大豆で作る食用油や、油が原料のマヨネーズも上がる。オレンジ畑はサトウキビ畑に化け、ジュースも高い。値上げの食物連鎖だ
▼作物はより高く売れる方へとなびくから、人の口に入っていたものが車の腹へと消える。だが、人の足を動かしてきた作物でタイヤを回すことが環境や人間に優しいとは、すんなり信じがたい
▼新燃料を推すのは、京都議定書を袖にした米大統領だ。改めるべきは燃料より、大型車を手放せない生活習慣にもみえる。メキシコでは、トウモロコシで作る国民食トルティーヤの値上げに抗議デモが起きた。民の台所事情に目配りは欠かせない
▼人は古来、飢えないために田畑を耕してきた。穀物を排気管の中で消費する世の中を、五穀豊穣(ほうじょう)の神はどう眺めているだろう。
(声)バイオ燃料で食糧確保に影
農業 斎藤弥志夫(山形県遊佐町 54歳)
バイオエタノールを加えたガソリンの試験販売が首都圏で始まった。すでにアメリカがトウモロコシを原料にバイオエタノールを大量に供給する計画を打ち出しており、トウモロコシや大豆、小麦など穀類はもちろん、飼料や食用油の価格も急騰している。
日本の食糧自給率は40%と先進国中でも低い方で、国内生産を拡大しないと食糧が高コストになるだけでなく、調達そのものまで困難になりかねない。経済財政諮問会議では食糧輸入先の確保を優先すべきとの意見が優勢のようだが、変な話だ。農業をある程度保護しながら自給率を高める方向でないと、バイオ燃料の普及で食糧の確保が危機的な状況になると思う。
日本も国家戦略として、農業の多面化を進めるべきだ。トウモロコシなど穀類の作付けを増やすよう補助金を出す政策が必要であろう。また、大規模な減反政策をとっているコメでも、エタノール米を企業化する構想が持ち上がっている。減反を縮小して農村の復興を図る意味からも、早急に手を打つべきであろう。
バイオ燃料、食卓に波風 原材料、品薄で高騰 マヨネーズ値上げ、ビール・牛肉も?
植物を原料とし、地球温暖化対策の切り札として脚光を浴びる燃料「バイオエタノール」の生産急増が、幅広い食品の価格を高騰させる懸念が現実になってきた。食糧や飼料向けのトウモロコシやサトウキビが、燃料製造に大量に回っているためだ。飼料や食用油、食用油が原料のマヨネーズなどの価格も上昇。牛肉やビールに及ぶ可能性もある。バイオ燃料ブームの一方で、食卓への影響が広がりつつある。
マヨネーズ最大手キユーピーがマヨネーズを17年ぶりに約10%値上げするのは、食用油の価格高騰からだ。世界最大の穀倉地帯のひとつ、米国中西部の農家がバイオエタノールに使うトウモロコシの作付けを増やし、大豆畑を減らしているため、大豆を使った食用油価格が世界的に上昇。原料の7割が食用油のマヨネーズを直撃した。
食用油製造の日清オイリオグループは昨年から今年にかけ計4回、J―オイルミルズは同計5回、調味料メーカーなど取引先に値上げを要請。それでも原料調達コストに見合う価格水準ではない、という。
今後、牛肉やビールも値段が上がる可能性が指摘される。トウモロコシ生産世界一の米国では、トウモロコシを高値で買い取るエタノール工場への売却が急増。大手商社の住友商事によると、年明けからすでに2割がエタノール生産に回ったというデータもあるという。相場上昇との思惑も相まって、牛の飼料やビールの原料になるコーンスターチも値上がりしている。ビール会社は「原材料は高騰している。価格競争が激しいので、その分をかんたんに価格転嫁はできない」と苦しい胸のうちを話す。
米国と並ぶバイオエタノール大国のブラジルでも、エタノール主原料のサトウキビの作付けが増えオレンジ畑が減少。世界的なオレンジジュースの値上がりを招いた。
日本政府も地球温暖化対策として国産バイオエタノールの生産を拡大する方針だ。農林水産省や経済産業省など七つの官庁で構成する「バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議」がことし2月、国産バイオ燃料の生産拡大方針をまとめた。
農水省は規格外小麦や非食用米、環境省は草や木、廃材などを使う計画で、「食糧高騰の原因とならない」としている。
ただ、草木原料からのエタノール製造は、トウモロコシなどに比べ工程が複雑でコストもかかり、「手っ取り早くエタノールを増産しようとすると、結局は食用穀物が使われかねない」とエネルギー業界関係者は難しさを指摘する。
◆キーワード
<バイオ燃料ブーム>バイオ燃料とは、穀物や草、木、廃材など植物からつくるアルコール燃料のこと。植物は二酸化炭素(CO2)を取り込んで育つので、理論的には燃やしても地球上のCO2総量は増えない。
超原油高を背景に、ブッシュ政権が地球温暖化につながらない燃料として後押ししたことで米国発で一大ブームになった。すでにブラジルなどで自動車用燃料として積極的に利用されている。
(声)「バイオ」より燃料消費減を
主婦 村山真由美(東京都八王子市 59歳)
4月27日からバイオエタノールを加えたガソリンの試験販売が始まった。
バイオエタノールはバイオ燃料で、大気中にあった二酸化炭素(CO2)を吸収した植物から作られるので、燃やしても大気中のCO2を新たにふやすことにはならないといわれている。環境に優しい燃料として国は今後も増やす方針だそうだ。
アメリカやブラジルでは既にバイオエタノールをトウモロコシ、サトウキビ、大麦などから作っている。そのためにそれらの相場が急騰している。食糧危機が心配されている時に、その大切な食糧から燃料を作っているのだ。これでは本末転倒ではないか。
日本では、サトウキビの砂糖を取った搾りかすなどから作られている。また、廃材や間伐材からの生産も検討されているという。原料やコストなどまだ研究の余地がありそうだ。
環境に優しい燃料も大切だが、それ以前に私たちも燃料消費を減らす努力をしたい。太陽熱や風力などももっと利用すべきだ。そのために政府は、私たちが自然エネルギーを利用しやすいように補助金など、奨励策を積極的に進めることも考えてはどうか。
世界の食料事情:黄信号 中国経済成長・バイオ燃料の急増
世界の食料事情が大きく悪化するのではないかとの懸念が広がっている。中国などの経済成長や発展途上国の人口増で食料需要がどんどん増えているうえ、環境問題や資源枯渇への懸念を背景に穀物をバイオ燃料に振り向ける動きが強まっているためだ。地球温暖化が食料生産に与える影響も心配で、食料自給率が低い日本は将来に向け安定供給のための戦略を迫られている。【位川一郎、ワシントン木村旬】
●値上げ
先月、果汁飲料の値上げ発表が相次いだ。明治乳業が100%果汁「ミニッツメイド」(1リットル)の希望小売価格を21円引き上げたほか、日本ミルクコミュニティ、キリン・トロピカーナなども値上げを決めた。オレンジの産地・米フロリダ州がハリケーン被害に遭ったり、ブラジルでバイオエタノール用サトウキビを生産するためオレンジ畑が次々につぶされたりしているためだ。
製粉各社は近く小麦粉価格を24年ぶりに引き上げる。昨年の豪州の干ばつなどで小麦の政府売り渡し価格が平均1・3%上がったためで、パンなども値上がりしそうだ。
世界の穀物取引の中心、米シカゴ商品取引所では昨年後半からトウモロコシ、小麦、大豆の価格が急騰している。水産物も、マグロの漁獲制限をはじめとした資源の制約と、中国、欧州など世界的な魚食の拡大で値上がり傾向にある。
●人口増
世界の食料需要を押し上げているとみられるのが経済成長が続く中国だ。所得水準の向上で中国の肉類、油脂類、魚介類の1人当たり消費量は90~03年の間にほぼ倍増した。一方、穀物生産は伸び悩み、中国は04年に農産物の純輸入国に転じた。食料の大半はまだ自給を維持しているが、大豆の輸入は年約3000万トンで世界一。「農村部の食生活が都市部に近づくと食料消費はさらに増える」との予想が多い。また、インドをはじめ発展途上国の人口増も、世界の食料需給に影響を及ぼす可能性が高い。
柴田明夫・丸紅経済研究所所長は「世界の食料在庫率は減少しており、(食料危機と言われた)1970年代と似てきた」と、食料価格がさらに上がる可能性を指摘する。実際、世界の穀物在庫率(年間消費量に対する在庫量の割合)は99年に31・6%だったが、06年には15・5%に急減している。
◇米の資源戦略が影響
●高騰
ブッシュ米大統領は1月の一般教書演説で、10年後に米国のガソリン消費量を20%削減し、トウモロコシを原料にしたバイオエタノールなどの代替燃料を年約1300億リットル供給する目標を掲げた。06年のバイオエタノール生産量の7倍で、地球温暖化対策であると同時に「原油の中東依存からの脱却」を目指す安全保障戦略でもある。これを受け、シカゴ商品取引所のトウモロコシ価格は2月に前年のほぼ2倍に達した。
米国のトウモロコシ輸出は世界の約7割を占めることから、価格高騰のあおりは他国にも及んでいる。トウモロコシを主食とするメキシコでは、抗議デモが起きるなど社会問題に発展。飼料の価格も上がり、日本の畜産農家に影響が出ている。今のところ、肉の価格には転嫁されていないが、飼料の高値が続くと肉も値上がりの可能性が出てくる。
●大干ばつ
豪州は06年、降水量が1900年以降最少の地域も出る大干ばつに見舞われた。その結果、小麦の生産量は前年比57%減の不作となり、国際価格を引き上げた。
地球温暖化は、干ばつ、洪水、海面上昇などを招き、食料生産にも大きな打撃を与える。収穫量が増える地域もあるが、農産物・水産物の適地が移動したり、農地の水没、病害虫の発生などの影響が懸念されている。
◇日本、備え必要
日本の食料自給率はカロリーベースで40%と先進国では突出して低く、世界の食料事情が悪化すれば必要量を確保できなくなる心配がある。マグロ輸入で日本の商社が、高価格で買い集める中国に「買い負け」するなどその兆しは既にあり、食料不足に備えた国家戦略が必要になっている。
しかし、食料安全保障をめぐっては意見が割れる。農林水産省が農業をある程度保護しながら自給率を高めようとしているのに対し、経済財政諮問会議では経済連携協定(EPA)などで食料輸入先の確保を優先すべきだとの意見が優勢だ。
農水省は3月、専門家を招いて「国際食料問題研究会」を発足させ、世界の食料需給見通しの詳細な分析を始めたが、国内農業を維持する理論武装の狙いもありそうだ。
バイオガソリンの試験販売始まる 増産、食糧問題の引き金に?
バイオエタノールをガソリンに3%混ぜたバイオガソリンの試験販売が、首都圏で27日から始まった。有力な地球温暖化対策として期待される代替燃料だが、原料が穀物のため、増産は食糧問題の引き金にもなりかねない。草や木、建築廃材を原料にする研究も進められているものの商用化までの道はまだ遠く、不安材料もある。
バイオエタノールは、温暖化の主因の二酸化炭素(CO2)を取り込んで成長する植物が原料。燃焼時にCO2は出るが、地球全体のCO2を新たに増やすことにならないとして、注目されるようになった。すでに米国産トウモロコシの2割がエタノール生産に回ったとの統計もある。
日本では食糧以外の草や木、廃材からエタノールをつくる方法を研究しているが、大量生産には、技術革新が必要で、経費面の課題も大きい。
バイオガソリン、あす試験発売 エタノール3%混合 首都圏50カ所で
首都圏50カ所のガソリンスタンドで、27日から植物由来のバイオエタノールが混ざった「バイオガソリン」の試験販売が始まることになり、26日早朝、新日本石油の根岸製油所(横浜市)から各スタンドに向け、バイオガソリンが出荷された。大手石油メーカーなどでつくる石油連盟の取り組みで、バイオガソリンをこれほど広域で一般向けに販売するのは初めて。10年度からの全国販売を目指す。
バイオエタノールはサトウキビやトウモロコシなどからつくる。燃焼時に出る二酸化炭素は、もともと大気中にあるものを植物が吸収したものとして、大気中の二酸化炭素の総量は増えない計算となる。脱石油、地球温暖化対策の一つとして注目され、ブラジルやアメリカ、中国、欧州などが積極的に導入している。国内では本格的な生産が始まっておらず、フランスで小麦からつくったものを輸入した。
今回、同連盟が採用したのはバイオエタノールをETBEという物質に変えてガソリンに混ぜる方式。ブラジルやアメリカなどエタノール先進国は、ガソリンに直接混合する方式をとっている。
バイオ燃料をめぐっては、ブームとなる半面、原料となるトウモロコシなどの価格上昇や食糧難につながることを懸念する指摘も出ている。
販売が始まるのは東京都15カ所、神奈川県15カ所、埼玉県11カ所、千葉県9カ所の計50カ所のスタンド。レギュラーガソリンを選ぶとバイオエタノールが3%混じったバイオガソリンが入る。
連盟によると、バイオガソリンとレギュラーガソリンを混ぜても問題はない。エタノールの発熱量はガソリンの60%程度なので、3%のエタノールが入った分、計算上は1・2%だけ燃費が落ちることになる。だが、例えば停車中のアイドリング停止などの工夫でカバーできるほどだという。
今回の試験販売は08年度まで。バイオエタノールを混ぜると実際には割高となるが、試験販売中はレギュラーガソリンと同じ値段で売る。10年度からの全国販売では、レギュラーより値段が高くなる可能性もある。
スタンドの一覧は石油連盟のウェブサイト(http://www.paj.gr.jp/eco/biogasoline/ss.html)にある。(中村浩彦)
バイオエタノール:石油連盟VS環境省、混合方法めぐり対立
植物を原料に作られ、「再生可能資源」として注目を集めているバイオエタノールが、いよいよ市場に登場する。石油元売り業界が27日、首都圏のガソリンスタンド(GS)50カ所で一般向けに販売を開始。8月からは、環境省の委託を受けた大阪府を中心とする事業体が関西や関東のGS10~15カ所で、事前登録した自治体や企業向けに販売する。いずれも完全導入に向けた実証実験と位置づける。ところが、ガソリンへの混合方法をめぐって両者は対立しており、非政府組織(NGO)などからは実験の実効性を問う声も出ている。【山本建、写真も】
石油元売り各社で作る石油連盟が販売する「バイオガソリン」は、バイオエタノールから合成した液体燃料「ETBE」を海外から輸入してガソリンに混ぜ合わせたものだ。東京、神奈川、千葉、埼玉の4都県のGSで販売。08年度に100カ所、09年度に1000カ所と拡大し、10年度の本格導入を目指す。
08年度までは国の補助を受けるため、レギュラーガソリンと同じ価格を設定しているが、09年度以降は各社の自主事業となるため「ETBEの原料となるバイオエタノールの相場によって値段は上下する」(石油連盟)。現在、バイオエタノールはレギュラーガソリンより1リットルで30円高く、補助がなければ、3%分を混ぜたバイオガソリンは1リットルあたり約1円が利用者に転嫁される。
環境省はバイオエタノールそのものをガソリンに3%混合して販売する。混合するバイオエタノールは、1月に稼働を始めた堺市の民間プラントで廃木材を原料に作ったものを使用。当面は自治体や事業者など特定の利用者向けだが、順次一般にも拡大していく。委託事業は5年間で、レギュラーガソリンの平均価格と同じにする。
石油連盟は、環境省の直接混合方式について「水と結びつきやすいバイオエタノールがガソリンと分離して自動車部品を腐食させる恐れがある」などと指摘。「バイオガソリンの販売が望ましい」と主張する。
海外では、米国やブラジル、中国などでバイオエタノールを直接ガソリンに混合している。また、ETBE方式を取り入れた国がある欧州連合(EU)でも、直接混合方式を取り入れようという動きが出ている。
環境省の田村義雄事務次官は「それぞれの方式で普及すればいい」と話すが、同省幹部は「導入が遅れた日本がスムーズにバイオエタノールを取り入れるなら、国際標準の直接混合で統一したほうが効率がいい」と指摘する。
NGO「FoE Japan」など3団体は2月、「バイオ燃料の需要増大が原因で、原料となる農産物の生産を目的とした不適切な農地開発や、食糧需要との競合が起きる恐れがある」と懸念を表明。輸送用エネルギーを抜本的に削減するとともに、食糧需要と競合しない国産のバイオマス資源を優先的に利用することなどを提言した。
FoE事務局の中澤健一さんは「バイオエタノール人気で世界的に穀物価格が高騰し、米国のトウモロコシ価格がこの1年間で2倍になった。食料にならない稲わらや麦わら、廃木材など原材料を選別することが必要だ」と訴える。
日本は京都議定書で08~12年の平均で二酸化炭素などの温室効果ガスを1990年比で6%削減すると約束した。05年4月の政府の「京都議定書目標達成計画」は、10年度までに原油50万キロリットル相当分をバイオ燃料に転換することを掲げている。石油連盟は21万キロリットル相当分をバイオガソリンに換える目標を掲げているが、環境省分を足しても計画には遠く及ばない。実効性のある取り組みが求められている。
◇バイオエタノール
サトウキビ、トウモロコシなど植物に含まれる糖を発酵して作るアルコール。植物の成長過程で二酸化炭素を吸収するため、温暖化防止に効果があるとされる。
F1もバイオ燃料時代 「興奮」との両立めざす
スリルと興奮はあっても、「環境的」というイメージはなかったモータースポーツ。その世界が変わり始めている。轟音(ごうおん)、それに猛スピードを売りとするカーレースが、地球温暖化対策を意識して化石燃料からの脱却をめざしている。興奮も、エコも。サーキットで、バイオ燃料時代の熱戦がスタートした。(中村浩彦)
●来シーズンから
モータースポーツの最高峰F1。その名門、ウィリアムズF1チーム(英)のアダム・パー最高経営責任者(CEO)に、東京で話を聞いた。
「08年シーズンから、燃料にバイオエタノールを混ぜます。全チームです」
F1は日本など各国を転戦する。300キロ超のスピードが魅力だ。運営する国際自動車連盟は「来年から、燃料に最低5・75%分のバイオ燃料を混ぜるように」と定めた。
欧州連合(EU)が、自動車燃料に「10年末までに5・75%のバイオ燃料混入」を義務づけたことが背景にある。F1は対象外だが、連盟は自発的に前倒しで従うことにした。
パー氏は「F1最大の魅力は興奮。でも今のままでは環境意識が高い若い世代を引きつけられなくなる。F1も変わらなければ。これからは興奮もエコも、という時代だ」。
●車体に緑の地球
バイオエタノールから出る二酸化炭素は、もともと大気中にあって植物が吸収したものとして、排出量にカウントされない。脱石油、温暖化防止の面から注目される燃料だ。
とはいえ、レース自体が環境的とも思えない。
連盟のマックス・モズレー会長が説明する。「最先端の技術を投入するF1だからこそ、バイオ燃料やエネルギー回収システムなどの環境技術が進む。新技術が一般車へ広がれば環境問題に貢献できる」
ホンダのF1チーム(日本)は、今年からスポンサー企業の宣伝を車体からなくした。その代わり、大きく緑の地球を描いた。ニック・フライCEOは「F1と環境問題への取り組みは相反するようにみえるかもしれないが、環境問題への関心を高める新しい流れにしたい」と話す。
●インディ先進的
米国で人気の高いインディカー・レースはさらに先進的だ。これまで燃料にメタノールを使っていたが、3月開幕の今シーズンから、100%バイオエタノールに変えた。米国はトウモロコシで作るバイオエタノールの利用を推進している。その一環でもある。
エタノールにするとパワーは落ちる。エンジンの排気量を上げ、従来通り平均時速360キロの迫力が楽しめるようにした。
そのレースの第3戦が、栃木県の「ツインリンクもてぎ」で今月19~21日にある。残念だが、日本ではバイオエタノールはほとんど作られていない。ブラジルなどから輸入して使う。
◆「意識持たねば、20年後危うい」 片山右京さん
バイオ燃料では、バイオエタノールと並んでバイオディーゼル油(BDF)も広がっている。菜種やヒマワリの種などからつくる。
今年1月のダカール・ラリー(通称パリ・ダカ)に、元F1ドライバーの片山右京さん=写真=は、使用済みの天ぷら油でつくったBDFのみを使って参戦した。リスボンからセネガルのダカールまで約8千キロを完走。BDFを混ぜたディーゼル油を使ったチームは他にもあったが、BDF100%は片山さんだけだった。
「車内に少し天ぷらのにおいがしただけ。加速などの動力性能はディーゼル油と大差ない」と片山さん。「一般の人が乗っても違いは分からないでしょう」
レースでは燃費が想像以上によくてBDFが余り、ライバルチームにも使ってもらった。評判は上々だったそうだ。
片山さんは「レース主催者や自動車メーカーが観客動員や利益だけを追い求め、環境への意識を持たなければ、20年後のモータースポーツは危うい」と指摘している。
<バイオエタノール> サトウキビの砂糖やトウモロコシのでんぷんを発酵させて作る。ラム酒やバーボンと同じ製法で、蒸留してガソリンに混ぜる。ブラジルは20%を混ぜるE20や100%のE100、米国ではE10やE85、中国はE10、英国やインドがE5を導入しているが、日本の取り組みは遅れている。バイオ燃料がブームとなる一方で、トウモロコシなどの値段が上昇し、食糧難の原因になるとの指摘も。
■世界のエタノール生産量(06年、計5000万キロリットル)
| (日伯エタノールの資料から) | ||
| 米国 | 1915 | 万キロリットル |
| ブラジル | 1675 | |
| 中国 | 385 | |
| EU | 210 | |
| インド | 200 | |
| 南アフリカ | 39 | |
| その他 | 576 | |
(声)バイオ燃料に多くの疑問が
農業 伊吹信一(栃木県那珂川町 54歳)
代替燃料バイオエタノールによる地球環境対策が世界の流れとなり、政府も増産奨励に本腰を入れ始めた。しかし、環境保全型の有機農業実践者としてこの動きに疑問を感じている。
このバイオ燃料は、人間や家畜の食料である米やサトウキビなどが原料とされる。人口増加や気候変動によって、近未来に食糧危機が起きる可能性があるというのに、食料を転用するのはいかがなものだろうか。
また、需要が増えれば耕地の開墾が始まり、自然環境の破壊が進みかねない。さらには、食べ物ではないからと、安易に多収品種への遺伝子組み換え技術が容認され、その遺伝子汚染も自然環境への脅威となりかねない。
地球に生きる生命には一つのルールがあるのだと思う。それは「自然界からもらうことが出来るエネルギーは、自分の命を維持するためか、種を未来につなぐためのものに限られる」ということである。
地球温暖化を招くほどの過剰なエネルギー消費は、母なる地球を食いつぶす蛮行である。私たちがそれを今すぐやめることが先決だと思うが、どうだろうか。
[みなとん里だより]トウモロコシ高騰でメキシコ悲鳴 山下惣一(寄稿)
「そうか、えらいこっちゃな!」。思わずそうつぶやいてしまった。メキシコに関する新聞記事である。報道によればメキシコでは主食のトルティージャの値段が急騰して、国民の怒りが高まり、1月末には数万人の市民がメキシコ市中心部でデモ行進したという。値上がり幅はこの3か月で40%以上、場所によっては4倍に暴騰。原因はアメリカ産トウモロコシのバイオエタノールへの需要転換だ。
1994年に発効したNAFTA(北米自由貿易協定)に反対して南部チャパス州で5000人の農民が武装蜂起(ほうき)したという小さな新聞記事を見つけて「こりゃあ面白い、見に行こ」と岐阜県の友人小林武と20日間メキシコの農村をまわった。これまで40か国近くの農業・農村を見て歩いたが、この時の旅ほどスリリングで強烈な体験はない。若いころ3年間農業研修生としてカリフォルニアに滞在した小林の友人が現地におり、ロサンゼルスから2人が来てくれた。スペイン語を英語に訳すメキシコ人と、英語を日本語に訳す日本人の二重通訳つきでワゴンタクシーをチャーターして1800キロを走った。
メキシコ人の主食はトウモロコシである。粉を薄く延ばして油で揚げ、中に炒(いた)めた挽肉(ひきにく)や野菜を包んで食べる。この皮がトルティージャで主食のタコス料理だ。自由貿易協定によって、アメリカ産の安いトウモロコシがどっと流入し、メキシコのトウモロコシを駆逐するというのが農民たちの反対理由だった。
しかし、協定は発効し、事態は農民たちの予想通りに推移し、そして今回の騒動だ。
アメリカのトウモロコシの生産量は2億8000万トン(2005年)で世界の生産量の45%を占めるが、その半分がバイオ燃料に転換される予定で、世界の貿易量の20%を輸入している日本の畜産も影響を受けるだろう。すでに飼料用トウモロコシの値段は2倍になっているそうだ。
「メキシコはアメリカに一番近く、天国に一番遠い国だ」といった農民の言葉が、なつかしく、せつなく思い出される。(佐賀県唐津市湊町在住)
(世界経済リポート)エネルギー転換、模索 世界2位の石油消費国・中国
世界第2位の石油消費国となった中国が、風力、バイオ燃料などの「再生可能エネルギー」の活用に力を入れ始めた。化石燃料やウランといった埋蔵資源を利用しないエネルギーだ。00年以降で2倍近くまで膨らんだエネルギー消費量を賄うにはまだまだ力不足とはいえ、中国の試みの成果は世界のエネルギー事情を左右しかねない。(北京=吉岡桂子)
中国有数のトウモロコシ産地、吉林省。収穫期には大地が黄色く染まる同省で販売されるガソリンはすべて、トウモロコシを原料とするバイオエタノールが10%混合された「E10」だ。10%という比率は、自動車のエンジンを改造しなくてもバイオ燃料が使える水準として中央政府が決めた。
省内のバイオエタノール工場は年産50万トンとアジア最大級。政府の補助を受けて、価格は一般のガソリンと同じ水準にとどめている。
トウモロコシやサトウキビなどを活用したバイオ燃料は石油資源の代替となり、二酸化炭素の排出量も削減できる。環境に優しい燃料として世界的に注目を集めている。
中国では02年からE10の導入を始めた。今では黒竜江、遼寧など5省は全域で、山東省など4省は一部でE10に切り替えた。中国全体の生産量は06年、百数十万トンに達した。米国、ブラジルに次ぐ規模だ。吉林省エタノールガソリン使用推進室の李耀新主任は「最初は、エンジンが腐食するとか馬力が出ないとか心配する運転手もいたが、今では街からガソリン臭さが減ったとも言われている」と胸を張る。
中国がトウモロコシのエタノールを導入したのは、農家支援の狙いもあった。導入当時、トウモロコシは在庫があふれ、倉庫で劣化していた。価格は上がらず、備蓄用に買い上げる政府の負担も増していた。ところが、エタノールの原料とすることで、1トン当たりの価格は「3年ほどで2割以上も値上がりした」(李主任)という。
トウモロコシ価格は燃料用の世界的な需要増や天候不順の影響などもあって、その後も高止まり。中国内には現在の生産量の約10倍もの工場建設計画があるとされ、家畜の飼料用が不足しかねない懸念が広がった。
「食糧安保」を脅かすとの批判が高まり、中国政府は姿勢を一転。06年末に、新規工場の建設を抑制する方針を打ち出した。今後はトウモロコシのクキやワラ、コーリャンなどをバイオ燃料として活用する、という。
●「大幅拡大には課題」
シルクロードのオアシス、甘粛省敦煌市。郊外にある、奇岩が立ち並ぶ「雅丹国家地質公園」の中に、太陽光(100キロワット)と風力(10キロワット×10基)を併設した発電施設がある。春先は立っていられないほどの強風が吹き、通年の降雨量も少ない敦煌にふさわしい自然エネルギーだ。女子十二楽坊のプロモーションビデオの撮影隊も、この電気を使った。
周辺に集落がなく、電気が通じていなかった同公園を、敦煌は「中心部から足を延ばせる重要な旅行資源」として開発することを計画。日本の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が4・4億円を拠出、技術も支援して発電施設を建設した。06年春に実証運転を終え、公園で使う電力をすべて賄う。
中国政府は10年までの5カ年計画で、小型水力、太陽光、風力、バイオマス、地熱、潮力などの再生可能エネルギーの「強力な発展」をうたう。100万キロワット級の大型風力発電基地を内モンゴルや甘粛省などに作り、太陽光はチベットなどに大型設備を建設して利用する計画だ。
石油の輸入依存度の上昇を抑制するとともに、環境悪化の原因となる石炭に7割を依存するエネルギー消費構造を改善するのが狙い。06年1月には「再生可能エネルギー法」を施行。税や融資面での優遇などエネルギー転換の推進策を盛り込み、具体化を急ぐ。
同法の提案者の一人、皇明太陽エネルギー集団の黄鳴会長は「中国が再生可能エネルギーの普及に真剣に取り組めば、資源や環境面での国際的な中国脅威論を和らげることもできる」と話す。
中国メディアの報道によると、国家発展改革委員会が草案をまとめた中長期発展計画では、再生可能エネルギーがエネルギー消費全体に占める比率を、10年には10%、20年には16%を目標とする見通しだ。
「現状の比率が数%ほどといわれるなか、かなり野心的な数字」(日本貿易振興機構北京代表所)だが、エネルギー問題に詳しい陳清泰・清華大公共管理学院長は、実現に懐疑的だ。「農民対策などとして国際価格より低く据え置いた石油など従来のエネルギーの価格帯を見直さなければ、再生可能エネルギー利用の大幅な拡大は難しい」とみるからだ。
◆キーワード
〈再生可能エネルギー活用への取り組み〉 温暖化防止や大気汚染の抑制、エネルギーの安定供給などの観点から、太陽光、風力、バイオマスなど化石燃料に頼らないエネルギーの導入を進める必要性が指摘され、最近はG8サミットでも行動計画に加えられるようになった。米国のブッシュ大統領も1月、バイオエタノールなどの利用増で10年間でガソリン消費を想定より2割減らす方針を発表、話題を集めた。
日本の資源エネルギー庁によると、世界で再生可能エネルギー活用のために投資されている金額は、05年で前年比27%増の380億ドル。95年と比べて約5倍に増えた。このうち風力が37%、太陽光が26%を占めた。国別では、ドイツが最大で、中国、米国、スペイン、日本、インドと続く。
(脱温暖化社会へ アジアの最前線から:2)バイオブーム 燃料化、CO2増の恐れ
朝日新聞アジアネットワーク
インドネシア・スマトラ島はイモの一種、キャッサバの産地だ。島の南部にあるインドネシア技術評価応用庁のバイオマスエネルギー開発センターの周辺にも広大なキャッサバ畑が広がる。
キャッサバはもともと焼酎や工業用エタノールの主原料だが、センターはエタノールをバイオ燃料として自動車に活用する研究を進めている。高さ約5メートルの実験プラントの蛇口からコップに注ぎ込まれた透明の液に顔を近づけると、強烈なにおいが鼻をつく。
ある研究者は「代替燃料の研究は70年代の石油ショック直後に盛り上がったが、その後停滞していた。今回の政府の姿勢は真剣だ」と言う。
バイオ燃料への世界的な関心の高まりを受けて、東南アジアでもブームが起きている。
インドネシアの首都ジャカ