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NO.7 (2007年3月~6月中旬)

バイオ燃料特集記事

中国脅かす食品価格高騰(けいざい解読)

2007/06/17 日本経済新聞 朝刊

 中国にインフレ懸念がちらつき始めた。五月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で三・四%上昇した。今年に入って政府目標の「三%以下」を達成できなかった月はこれで二回目。海外が心配する中国の高成長の挫折は株価バブルでも不動産投資の過熱でもなく、インフレをきっかけに起きる可能性がある。

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 北京の中心にある柳芳街市場。低所得層が多く集まる市場の奥の薄暗い一角で豚肉店の女性店主(47)は仕入れ価格高騰に怒りの声を上げた。「三カ月続けて損が出た。こんな商売は続けたくない」。利益を出そうと小売値に転嫁すれば客足が遠のく。隣の店主(45)は「客が半分に減ってもまだ止まらない」と嘆く。
 CPIの急上昇を引っ張っているのが食品価格。なかでも豚肉などの値上がりはすさまじく、五月は「肉類やその関連品」の上昇率が二六%に達した。  高騰は混乱を招いた。広東省東莞市では四月以降に一万五千二百キログラムの「劣悪な肉類」が摘発された。値上がりに便乗しようと水で増量したり、病死した豚の肉だ。北京では二十四時間態勢で当局が市場を監視するようになった。
 事態を重くみた政府は十二日に記者会見した。株価のバブルがいくら心配されても開いたことのない異例の緊急会見だ。しかし肝心の豚肉価格の行方については「値下がりするには時間がかかる」(農業省の陳偉生・副畜牧業局長)と歯切れの悪い答えしかできなかった。
 国家発展改革委員会の周望軍・副価格局長は豚肉が値上がりしたのは「米国がトウモロコシを使ってバイオエタノールを作り、飼料価格が上がったせいだ」と説明する。口てい疫や原因不明の高熱で昨年、多くの農家が養豚をあきらめたことがこれに重なった。
 二年前に住宅価格が上昇した時のように、普通なら中国は行政命令で値上がりを抑える。しかし今回はそう単純にはいかない。胡錦濤国家主席は四月三十日に河南省の小麦畑で農民の肩に手をかけ、「農民が作付けに積極的でなくなったら、我々は食べるものがなくなる」と持ち上げた。

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 都市と農村の収入の差は公式統計で三・三倍。企業や政府の幹部が手にする“灰色収入”も含めれば実際の格差ははるかに大きい。都市と農村の差を縮めるには「農産物価格を上げる必要がある」(北京師範大学の唐任伍教授)。
 一方、食品価格の高騰で苦しむ都市の低所得層の多くは農村からあふれ出た出稼ぎ労働者。その数は一億人をはるかに超す。物価の上昇を力ずくで抑えても放置しても、ツケを負うのは広い意味でどちらも農民。ここに中国の経済・社会問題の核心がある。

 中国は今年、五年連続で一〇%超の高成長をとげるのは確実。海外から景気過熱を指摘されても涼しい顔でいられたのはインフレと無縁だったからだ。だが師範大学の唐教授が指摘するように「食品価格の上昇が続くのは必然」。指導者がいくら励ましても、長期的に工業化による農地の減少は避けられないからだ。
 「高成長下の低インフレ」という“成功の方程式”を資産バブルとその崩壊ではなく農村問題が脅かす。中国がどう解決するのかみえないが、かじ取りを誤れば世界経済にも影響する。

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金の卵エタノール――米農業、マネーに躍る、ファンド続々(世界を読む)

2007/06/17 日本経済新聞 朝刊

 ガソリン代替燃料のエタノール?ブームが米国の農業を変え始めた。原料のトウモロコシ産地に流入した投資マネーは家畜、農地にも向かい、物価上昇を引き起こす。マネーが経済を大きく動かすファンド資本主義の波に洗われる米農業の現場を探ってみた。
 イリノイ州西部リナ。ぐるっと地平線が見渡せる農道の先に立つアドキンス・エナジー社の煙突が目に飛び込んでくる。約千三百軒の周辺農家が共同出資するエタノール工場だ。
 次々と走り込んでくるトラックが停車すると、積み荷のトウモロコシの山に湿度を測る棒が突き刺さる。水分によって品質を確かめるためだ。生産量は年四千二百五十万ガロン(一ガロン=三・七八リットル)と、穀物メジャーのエタノール工場よりはるかに少ない。そんな工場が生き残れるのか。銀行は融資に及び腰だった。
 五年前に稼働にこぎつけたが、排煙のにおいに地域住民の苦情が殺到。しかしエタノールブームの追い風を受け二〇〇五年から配当を払えるようになった。昨年の配当は出資金千ドルに対し二千二百ドル。「いい投資と言ってもらえるようになった」と同社のマート・グリーンさんは語る。

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 米農業の中核都市シカゴ。穀物などを対象に投資するコール・パートナーズ社を、ダウンタウンの質素なオフィスビルの一室に訪ねた。社員八人の小所帯。市内に集積する「ブティック」と呼ばれる専門性の高いファンドのひとつだ。
 〇五年に始めた資源投資ファンドの利回りは年一七%強。総資産の二三%を穀物、家畜の先物などで運用する。ブラッド・コール社長は「穀物に精通したプロはマンハッタンではなく、産地の近くにいるんだ」と強調する。そんなプロを発掘し、投資家に紹介するのも仕事だ。顧客はこの一年で倍増し、年金など機関投資家五十社を抱える。
 同社によると、穀物など国際商品投資に特化するヘッジファンドは世界に三百五十社あり、資産残高は二百五十億ドル(約三兆五百億円)。資産の二割が農業関連に投資されている。背後には株や債券以外の投資先を求める年金基金などがおり、ファンドの資産残高は年末に三百五十億ドル程度まで拡大するという。
 農地も投資対象だ。大手保険会社傘下のハンコック農業投資グループ(マサチューセッツ州)は農地を購入し、転売や賃貸、作物栽培で得た収入を顧客に払う。現在保有・運営する農地の評価額は八億六千万ドルを超え、三年で二倍強になった。「担当者は土地探しに忙殺されている」(ジェフリー・コンラッド社長)。コーンベルト?地帯での運用成績は上々で三年間の利回りは年二五%近い。  中西部の農地価格は四月時点で一年前に比べ一〇%上昇した。エタノール工場の新設が相次ぐアイオワ州の上昇率は一六%に達する。トウモロコシ高騰を理由に金融機関が融資枠を広げた影響だ。
 一方で、コンラッド社長は警戒感も強める。「作物の出来は天候次第で価格変動も激しい。分散投資しないと危険だ」。農地投資とともに作物を委託栽培する同社はトウモロコシの作付けを一二%にし、アーモンド(二一%)などを下回る水準に抑える。

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 「今年は最高の年になりそうだ」。アイオワ州プレーリーシティー近郊の畑で、ゴードン・ワサナーさんは腰まで伸びたトウモロコシの葉の勢いをそっと確かめた。耕地面積は六百ヘクタールと、東京ディズニーリゾート四つ分。収穫時には、全地球測位システムを備えたコンバインを操る。今年は耕地の三分の二にトウモロコシを植えた。例年なら耕地の半分だが、ブッシュ大統領がエタノールの利用を奨励したため、原料の高値が続くと判断したからだ。
 だが、エタノールブームが生み出す歪(ひず)みは小さくない。地球温暖化や原油高を背景に、世界ではサトウキビなどを原料にエタノール生産が加速しているが、米国の原料はトウモロコシ。食料供給に影響するだけでなく、飼料が減る懸念で食肉価格が上がり、食品全体の物価にも響く。トウモロコシを原料にしたエタノール生産にはおのずと限界もあり、ガソリン代替燃料の本命なのか不明だ。
 米中西部でマネーが引き起こす変化は、日本を含む世界の農業やエネルギー情勢まで揺さぶりかねない。
(シカゴ=毛利靖子)
 温暖化ガスの削減に役立つとされる代替エネルギーの有力候補。生産高世界一の米国ではトウモロコシが原料で、四割は農家が出資する工場で生産される。輸入石油への依存度引き下げを狙うブッシュ政権はガソリン高などを背景に二〇〇五年から利用を奨励し始めた。  全米再生可能燃料協会によると、現在百十九カ所のエタノール工場があり新増設も八十五カ所で進行中。全部稼働すると生産能力は現在の二倍の年百二十五億ガロンまで拡大する見込み。

■米国
〈6月19日〉米・イスラエル首脳会談
〈27、28日〉米連邦公開市場委員会(FOMC)
〈7月1日〉プーチン・ロシア大統領が米国訪問(2日まで)

■欧州
〈6月27日〉英でブラウン政権が発足
〈7月1日〉アフリカ連合(AU)首脳会議(ガーナ、3日まで)
〈22日〉トルコ総選挙

■アジア
〈7月1日〉香港返還10周年記念日
〈5日〉アジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易担当閣僚会議(豪ケアンズ、6日まで)
〈7日〉ゴア前米副大統領と環境保護団体が日本や欧米などで温暖化防止を訴えるコンサートを開催

 米中西部で東西にベルト状に広がるトウモロコシの主要産地。米農務省によるとイリノイ、アイオワ、インディアナ、オハイオ、ミズーリの各州を指す。ミシガン湖周辺のミシガン、ミネソタ、ウィスコンシン州なども加えて呼ぶことが多い。
 米国産トウモロコシの七割を生産し、シカゴ商品取引所のトウモロコシ先物価格は世界各地で取引する際の指標となっている。肥よくな土壌に恵まれ、大豆や小麦、家畜の飼育も盛んだが、生産者は需要の拡大をにらんでトウモロコシの作付けを増やしている。

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3月の米国先物売買高、前年比37.1%増――原油、トウモロコシ活況。

2007/06/13 日本経済新聞 夕刊

 米国先物取引業協会(FIA)がまとめた三月の米国先物市場の総売買高は二億四千三百六十三万千枚(株は最低取引単位)と前年同月に比べ三七・一%増加した。原油とトウモロコシの取引が活況だった。オプション取引の売買高は五千百九万九千枚と前年同月を十六・五%上回った。
 品目別ではニューヨーク・マーカンタイル(NYMEX)の原油の売買高が六九・六%増えた。月前半は下落基調、後半は上昇基調となるなど、相場の変動率が高まり、ファンドなどが積極的に売買しやすい環境だった。
 シカゴ商品取引所(CBT)のトウモロコシは六三・一%増えた。バイオエタノール向けの需要拡大を見越した買いが依然として根強い。大豆も四九・九%増。米国産地で作付けが減るとの見通しから、買いが膨らんだ。
 ニューヨーク・ボード・オブ・トレード(NYBT)の砂糖も五一・九%増。二○○六年十月から○七年九月の砂糖需給は大幅な供給過剰になるとの国際砂糖機関による予想を嫌気した売りが広がった。
 金融商品はシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のドル預金が三三・一%増。CBTの財務省債券も一五・一%増加えた。

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家畜改良センター、牛、飼料依存度低い飼育――飼料価格、1年で2割上昇。

2007/06/08 日本経済新聞 地方経済面 (東北B)
背景に米のバイオ燃料推進

 全国農業協同組合連合会(JA全農)の配合飼料供給価格によると、この一年で平均一トン当たり約一万円上昇。地域や家畜などにより異なるが、現在、各都道府県本部や農協への平均販売価格は一トン約五万三千円になっているとみられる。一年間で二割以上アップしたことになる。
 日本は濃厚飼料の自給率が一〇数%と低く、畜産農家には手痛い打撃となった。価格高騰の背景には、バイオ燃料推進を掲げた米国の地球温暖化対策がある。
 ガソリンと混ぜたバイオ燃料は自動車用に使える。成分はエタノールで、トウモロコシや小麦などを発酵させて作る。トウモロコシのエタノール向け需要は今後も増加するとみられ、飼料の高値はまだ続きそうだ。

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IPCC前議長に聞く、米企業、温暖化無視できず――革新的な技術開発カギ。

2007/06/07 日経産業新聞

 地球温暖化に対する議論が熱を帯びる中、世界最大の温暖化ガス排出国である米国の企業がどう動くのかに関心が高まっている。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)前議長で世界銀行チーフサイエンティストのロバート・ワトソン氏に意見を聞いた。

―米企業の多くが温暖化対策に積極的になってきた。

 「そういう動きはある。電機大手のゼネラル・エレクトリック(GE)や化学のデュポン、小売りのウォルマート・ストアーズなど多国籍企業を中心に前向きになってきた。欧州で厳しい規制が導入され、各国で展開する大企業は無視できなくなったためだ」
 「米国は世界の温暖化ガス排出量の二〇―二五%を占めており、これをどう抑えるかが重要だ。米国人の浪費型の生活スタイルを大きく変えることは簡単なことではないが、企業の革新的な技術開発によってエネルギー効率を上げることが緊急の課題になる」

―六日からの先進国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)では温暖化が主要議題となる。

 「京都議定書の約束期間が終わる二〇一二年より先の枠組みを決める上で、今年と来年のサミットは非常に重要な意味を持つ。特にブッシュ米政権が本当に変わるのかどうかに注目している。他の大排出国である中国、インドも招かれており、実質的な議論が行われることを期待している」

 ―日米両政府もそれぞれ温暖化対策を発表した。

 「五〇年までに全世界の排出量を半減するという日本の案は評価できる。ただ期間が長すぎるので、二〇年、三〇年などもっと近い時期の目標も設定すべきだ。米国についてはあいまいな表現で、どう判断すればいいかまだ分からない」

 ―米国はバイオ燃料の利用を促している。

 「バイオエタノールの原料になるトウモロコシなどの生産農家には非常に手厚い補助金が与えられており、経済的には理にかなっていない。食料に使えない植物性のものを原料にする技術を開発する必要がある」
(聞き手は野沢康二)
 ロバート・ワトソン氏 米クリントン前政権下で環境担当の幹部を経て、一九九七年から二〇〇二年まで地球温暖化の将来予測などをする国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長を務めた。しかし〇二年の議長選でパチャウリ現議長に敗退、京都議定書から離脱した米政権が自国出身のワトソン氏就任を阻んだとされる。
 現在は世界銀行でチーフ・サイエンティスト(主席科学官)、環境と持続可能な開発部門の上級顧問、地球温暖化と気候変動問題担当の上級スポークスマンの三つの肩書を持つ。地球温暖化の抑制に向け主に金融面での国際協力を進める世銀で環境問題の責任者を務めるワトソン氏の活躍に期待が集まっている。

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高騰ドミノ、続くリスク(ベンチマーク)

2007/06/07 日経金融新聞

編集委員 志田富雄
 米国でガソリン価格の上昇が続き、五月中旬には大型ハリケーン「カトリーナ」被害で急騰した二〇〇五年九月の過去最高値を更新した。原油だけを見れば昨年の最高値に届いていない。しかし米ガソリン発の高値は、投資マネーを巻き込んでアジア市場のナフサや大豆などの農産物にも波及している。物価や景気への影響力は原油でいえば既に一バレル八〇ドル級だ。

ガソリン高波及

 「世界各地でガソリンやナフサの争奪戦が起きている」(三井物産の井口和容石油製品室長)。アジア市場では五月十四日、石油化学製品の基礎原料であるナフサの取引価格が初めて一トン七〇〇ドルを突破した。高値はポリプロピレンなど川下の合成樹脂・繊維コストを押し上げ、石化各社は転嫁値上げを急ぐ。
 ナフサ高の主因は世界石油需要の一割を上回る米ガソリン市場の需給不均衡にある。三億人を超えた人口増と昨年までの好景気で自動車台数が増え、最高値にもかかわらず直近の平均ガソリン需要は日量九百四十万バレル強と前年より一%多い。
 精製能力の不足から米国は通常でも日量百万バレル以上のガソリンを輸入する。今年はフル稼働が災いして施設トラブルが相次ぎ、五月からの需要期前に在庫を積み上げられなかった。そのため欧州からガソリンと成分の近いナフサの輸入も増え、欧州からアジアへのナフサ輸出が細った。原油でなくガソリンが主導し、アジア市場のナフサは最高値に跳ね上がった。
 米国のガソリンを起点にした価格上昇は、産油国がいくら増産しても止まらない。石油精製が能力いっぱいなのだから余った原油は積み上がるだけだ。インドや中東は対米輸出を狙い精製設備を立ち上げる計画だが、「本格稼働して供給不足が解消するのは〇九年の米ガソリン需要期」(UBS証券の伊藤敏憲シニアアナリスト)になる。
 米政府がガソリン消費を抑制しようとバイオ燃料への転換を打ち出したことで、高値は農産物にも及んだ。まず〇七―〇八穀物年度(〇七年九月―〇八年八月)の生産量の三割がエタノール原料に奪われるトウモロコシの価格が急騰した。
 高値に引かれて農家は今年のトウモロコシ作付面積を一五%増やしたが、「耕地の総面積は簡単には増やせない」(穀物専門商社、ユニパックグレインの茅野信行社長)。増加分は大豆などから削られる。好天に恵まれても〇七―〇八年度の米産大豆生産量は一―二割減る見込みだ。シカゴ市場の大豆先物は一ブッシェル八ドル台と〇四年七月以来の水準に上昇している。

マネー巻き込む

 高値の連鎖をヘッジファンドなどの投資マネーが見逃すはずがない。米原油先物での運用効率悪化で行き場を探していたマネーは、ガソリン基材(RBOB)からトウモロコシ、大豆、さらに川下の大豆油や大豆ミールへと流れ込む。シカゴ大豆先物の売買建玉は五十四万二千枚(一枚は五千ブッシェル)と二カ月で一一%増えた。
 投資マネーに原油が押し上げられた昨夏やハリケーン被害で急騰した〇五年夏と違い、今回の高値は構造要因だけで上昇してきた。新たなトラブルやハリケーン被害が出れば一段の値上がりは避けられない。
 昨年、米国からハリケーンを遠ざけたエルニーニョ(東部太平洋赤道域での海水温上昇)現象は収束している。米海洋大気局は五月二十二日、七五%の確率で今年のハリケーンは例年より増えるとの予報を発表した。
 太平洋域の海水温が低下を続けてラニーニャ現象が鮮明になれば、受粉期(七―八月)の米穀倉地帯が高温・乾燥に見舞われる確率も高まる。
 ガソリン需要期とハリケーンシーズンが終わる九月まで、世界の市場は原油一〇〇ドル級の波乱リスクに備える必要がある。

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米農務省の世界農産物生産高予想――トウモロコシ在庫率注目(あすの勘どころ)

2007/06/05 日本経済新聞 夕刊

 米農務省が十一日発表する世界農産物生産高予想(需給報告)に注目が集まっている。焦点は米国のトウモロコシの在庫水準。自動車燃料エタノール向け需要の拡大で需給が逼迫(ひっぱく)し、国際価格も上昇傾向だ。在庫変動に市場は敏感に反応するだろう。
 需給報告は毎月十日前後にデータを更新しながら発表される。大豆、小麦など幅広い農産物を対象にしている。特にトウモロコシは米国が世界最大の生産・輸出国であることから情報の精度が高いとされ、注目度が高い。
 前回(五月)発表で来年度にあたる二〇〇七―〇八穀物年度(〇七年九月―〇八年八月)の需給が初めて公表された。市場関係者が驚いたのは米国のトウモロコシ在庫率(総需要に対する在庫の割合)だった。来年度末(〇八年八月末)の在庫率は七・六%と〇七年八月末見通し(八・一%)を〇・五ポイント下回る。
 すでに逼迫している需給が来年度はさらに深刻になると市場は受け取った。発表当日から指標のシカゴ商品取引所の価格(期近)は基調を強め、最近は一ブッシェル三・九ドル程度で取引されている。五月十日に付けた直近安値からほぼ一〇%高い。
 次回発表で在庫率が修正されると、相場が再び動き出す可能性がある。修正につながる要素は主に二つだ。
 一つ目は、今年度の需要が落ち込むケースだ。価格は一年前と比べ五〇―六〇%高い。高値を嫌い食料、飼料などの需要が落ち込むかもしれない。そうなると来年度への繰り越し在庫が増加し、在庫率は引き上げられる。
 二つ目は今年の生産が予想以上に伸びるケースだ。需給報告は生産量について作付面積の増加を背景に前年比一八%増えると予想。ただ、ある調査機関は生産量は需給報告を五%上回る数値を出している。その場合、在庫率は上方修正される。
 昨年秋からの価格上昇をけん引したのはファンドなど大口投機筋の買い付けだ。二月末の世界連鎖株安の影響が長引き、最近はファンドの買い意欲は衰えつつある。市場から資金を引き上げるのか、再び相場を押し上げる主役になるか、需給報告がカギを握っている。
(商品部 井上達也)

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エタノール「サミット」開催、世界初、ブラジルで。

2007/06/05 日本経済新聞 朝刊

 【サンパウロ=岩城聡】ブラジルのサンパウロ市で四日、世界初の「エタノールサミット」が始まった。ブラジル政府首脳や米国のトウモロコシ生産業界代表のほか、米投資家ジョージ・ソロス氏らも出席し、バイオエタノールの普及や環境・食料問題について二日間にわたって討議する。

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三菱商事、米に穀物輸出新拠点、現地企業買収、アジア向け強化。

2007/06/01 日本経済新聞 朝刊

 三菱商事は米国の穀物集荷・販売会社を買収する。米南部のメキシコ湾岸に穀物輸出設備を持つ会社を傘下に収め、米西海岸の既存設備と合わせ、米国の二大穀物輸出地域に拠点を確保する。穀物はバイオ燃料用の需要が増え、世界的に食糧用との争奪戦が起きている。同社は米国での集荷・輸出力を高め、アジア向けに食糧用穀物を安定供給する。
 買収先はエフジーディーアイ(FGDI、オハイオ州)で、買収額は同社の債務肩代わり分を含め約百四十億円。六月一日に米国の全額出資子会社アグレックス(カンザス州)を通じ、米ナスダック上場の先物取引仲介会社エフシーストーン(アイオワ州)からFGDIの株四五%を取得する。すでに保有している分も合わせ七五%の株を握り、FGDIを子会社化する。
 FGDIは米内陸部の穀倉地帯で集荷したトウモロコシや大豆などを、メキシコ湾岸のモービル市にある五万トン級の貯蔵庫に集め、米国内で販売するほか輸出している。二〇〇六年八月期の売上高は約千三百億円。
 米国は世界最大の穀物生産・輸出国。三菱商事は同国での集荷力アップをテコに、穀物需要が伸びているアジア向けに、飼料やでんぷん・糖化品用の販売を増やす。アグレックスが米西海岸で、穀物メジャーと輸出設備を共同保有しているため、今後は米国各地の穀物収穫状況や用船料などを見ながら、条件の良い輸出設備を選んで出荷できるようになる。
 三菱商事は米国を中心とするアジア域外から、年約六百五十万トンの主要穀物をアジアに輸入している。うち日本向けは約四百五十万トン。
 エタノール原料となるトウモロコシの価格は世界的なバイオ燃料ブームを背景に直近一年間で五割上昇した。バイオ燃料用の利用が増える分、食糧用の穀物をどう安定確保するかが、ビジネス上も食糧安全保障上も課題になっている。

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大豆の国際価格が上昇基調――作付け減、需給引き締まりへ(商品スコープ)

2007/05/31 日本経済新聞 夕刊

 大豆の国際価格が上昇している。指標のシカゴ商品取引所の価格(期近)は一ブッシェル八ドル前後と、二〇〇四年七月十四日以来ほぼ三年ぶりの高値で推移している。米国で今年作付けされる大豆が大幅に減り需給が引き締まる見通し。ファンドなど大口投機筋が積極的に買い付けている。
 上昇のきっかけは米農務省の世界農産物生産高予想(需給報告)。十一日の発表当日から大豆の基調が強まり、これまでに一〇%上昇している。
 市場が注目したのは在庫。〇七―〇八穀物年度(〇七年九月―〇八年八月)末の米国の大豆在庫量は三億二千万ブッシェルと前年度末見込み(六億千万ブッシェル)から半減する。在庫率(総需要に対する在庫の割合)も一〇・五%と適正とされる一五%程度を下回る。「緩んでいる大豆需給は急速に逼迫(ひっぱく)に向かう」(穀物商社アンドレィ・ファーイーストの大本尚之取締役)との観測が広がった。
 大豆の在庫が減るのは作付け減が背景にある。自動車燃料エタノール向け需要が急拡大しているトウモロコシの作付けが大幅に増える一方、同じ農地で作る大豆が減る。今年の大豆予想作付面積は前年比一一%少ない六千七百万エーカーになりそうだ。生産も前年比一四%減の二十七億四千五百万ブッシェルに落ち込む。
 ファンドの買いも価格を押し上げている。米商品先物取引委員会によると、二十二日時点のファンドなど大口投機筋の買い越し建玉(未決済残高)は十一万八千五百五十二枚(枚は最低取引単位)と四月二十四日の直近の最低水準から九一%拡大している。天候不順で生育に支障を来す材料が出れば、一段の生産減予想から九ドルを目指す展開も否定できない。

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食品値上げ、家計にじわり――農産物、世界的に高騰、円安も要因に。

2007/05/30 日本経済新聞 朝刊

 食用油など食品の相次ぐ値上げをもたらしているのが原料農産物の世界的な価格高騰だ。一因に自動車の燃料として使うバイオエタノールの需要拡大がある。
 まずエタノールの原料であるトウモロコシの需要が急増して高騰。国際価格は一ブッシェル三・七ドル程度と一年前に比べ五割高い。トウモロコシ高で米国では今年、作付面積が六十三年ぶりの広さに拡大の見通し。そのあおりで同じ農地で作る大豆の作付面積は前年比一一%減る見込みから、大豆価格も一ブッシェル八ドル台と約三年ぶり高値だ。
 大豆高は同じ食用油の原料となる菜種価格も押し上げた。主産地カナダでは一トン三八〇カナダドル台で三年ぶり高値。大豆高や菜種高が食用油メーカーのコストを押し上げ、マヨネーズの値上げにも波及した。
 小麦相場の高騰は昨年のオーストラリアの干ばつが一因。現在は一ブッシェル五ドル前後で一年前より三割高い。
 一方、コーヒー生豆の価格は二〇〇一年を底に上昇。ブラジルなど新興国での消費拡大を受け、一ポンド一一〇セント前後と〇一年のほぼ二倍の水準。コーヒーの世界需要は毎年二%程度の成長が見込まれており、「今後、国際相場が一〇〇セントを下回ることは考えにくい」(卸業者)という。
 円安も影響を与えている。二十九日の円相場は一ドル=一二一円台前半と一年前に比べ一〇%程度の円安・ドル高水準で、「生豆相場に加え、為替も今回の値上げの一因」(UCC)としている。

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バイオガソリン(きょうのことば)

2007/05/26 日本経済新聞 朝刊

▽…サトウキビや小麦など植物からできたエタノールとガソリンを混ぜて作るガソリンのこと。二酸化炭素(CO2)を吸収した植物を原料にするため、燃やしても大気のCO2増減は差し引きゼロになり、排出抑制に有効とされている。すでにブラジルなどでは石油の代替燃料として普及している。
▽…地球温暖化の抑制を目指す日本や米国政府などはCO2の排出削減を狙って、バイオガソリン活用を促している。ただし、こうした自動車大国からのバイオ燃料の需要増加で、原料の農作物の価格が上昇するという悪影響も出ている。

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ぬか値上げ、起点は温暖化――穀物高で飼料用と競合(市況の法則)

2007/05/26 日本経済新聞 朝刊

 家庭でも使う漬物用の米ぬかに値上げの動きが出ている。その理由をさかのぼっていくと地球温暖化に行き着く。無縁に見えるぬかと温暖化にどんな関係があるのだろう。
 みたけ食品工業(埼玉県戸田市)は米ぬかを炒(い)って作る炒りぬかや、炒りぬかに塩などを加えて作るぬか床などの米ぬか製品メーカー。製品の販売量は毎年二〇%伸びている。ただ武内秀行社長は「米ぬか製品で収益を確保することは難しくなった」と話す。
 同社の米ぬか調達コストは四年前の二倍。一年前と比べても二〇%高くなった。炒りぬか(五百グラムおよび八百グラム入り)の希望小売価格は現在、百二十―三百円。同社はこれを一〇%値上げすることに決めた。秋までに浸透させたい考えだ。
 「米ぬかは今、配合飼料メーカーから引っ張りだこだ」。飼料原料を扱う専門商社の役員が打ち明ける。米ぬかは良質な繊維分として配合飼料に〇・三%程度含まれる。配合飼料各社の需要は前からあるが、足元の動きは少し性格が違う。
 米ぬかは玄米の表面を削ったときにできる。国内の生産量は年間八十万トン程度。このうち三十万トンを米ぬか油メーカーが搾油する。米ぬか油はスナック菓子の原料になり、搾った後の脱脂ぬかが飼料になる。油分を含んだままの米ぬかは劣化しやすいため、飼料への使用比率は低い。
 しかし最近は配合飼料メーカーが積極的に搾油前の米ぬかを買い付けようとしている。飼料原料のトウモロコシが高騰しているため、代替需要が米ぬかに向かったのだ。配合飼料メーカーが買い付けるトウモロコシ価格はこの一年で五〇%上昇し、一キロ三十円程度になった。米ぬかも二〇%値上がりしたが、一キロ二十五円程度にとどまる。
 トウモロコシの値上がりの背景は地球温暖化。対策の切り札としてバイオエタノールの利用を増やそうという動きがめざましい。原料のトウモロコシは需要が拡大、国際的に需給が逼迫(ひっぱく)している。米国で今年作付けされるトウモロコシ畑の面積は戦後最大になる見通しだが、エタノールという新規需要で品薄状態が続きそうだ。
 そもそも米ぬかは品薄だ。国内のコメ消費が落ちているうえ、精米を生産地でするケースが増え集められる米ぬかが減っているためだ。「米ぬかの安定調達は重要な経営課題」と大手米ぬか油メーカー、築野食品工業(和歌山県かつらぎ町)の築野富美社長は話す。
 地球温暖化に端を発する穀物高で、キユーピーはマヨネーズの値上げに取り組んでいる。いつの間にかその変化球はぬか漬けをもかすめていた。
=随時掲載

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綿花価格、収穫増で安定、遺伝子組み換え普及、需要も落ち着く。

2007/05/25 日本経済新聞 朝刊

 綿花の国際価格が長期安定を続けている。遺伝子組み換え綿花の普及を背景に、収穫の拡大などによって相場水準が下がり変動幅も小さくなった。国内の綿糸取引価格も安定しており、原料高などで合成繊維などが値上がりする中、対照的な動きを示している。
 「春先に起こった綿花の上昇は、短期間で収まった。最近は相場が大きく動くことはない」(商社)。
 国際価格の指標となるニューヨーク先物市場の期近価格は春先に一ポンド五五セント前後まで上昇した。米国の綿花農家がエタノール需要の拡大をにらみ、原料となるトウモロコシなどへの作付けを進め、そのあおりで綿花の作付けが縮小するとの観測が台頭したためだ。
 しかし、すぐに沈静化し、二十三日時点で一ポンド四九・一四セントと落ち着いた値動き。
 二〇〇〇年以降の綿花相場は一ポンド四五―五五セント程度の範囲を行ったり来たり。例外は一時的に中国の買い付けが集中した〇三年だけ。「九〇年代まで中心相場は六〇―七〇セント前後だったのと比べると様変わりだ」(商社)との指摘は多く、レンジは確実に切り下がり、「低位安定」してきた。
 背景には世界的な収量増加と安定化がある。生産国などで構成する国際綿花諮問委員会によると〇六―〇七綿花年度(〇六年八月―〇七年七月)の世界生産予想は二千五百三十四万トンと〇〇―〇一年度より三〇%多い。特に中国は六百七十二万九千トンと五二%増。中国国内の需要拡大に対応している。
 「害虫などに強い遺伝子組み換え綿花が米国を皮切りに中国など世界各国に普及した。生産性向上、収穫の安定に加え、殺虫剤などが不要となり農家のコスト負担も軽くなったため、値段が下がりやすくなった」(日本紡績協会)。
 この間、ポリエステル長繊維は原油高を反映し中国向け指標品が三年前に比べ約一〇%、羊毛も干ばつで豪州競売価格(東部市場)が昨秋から約三六%上昇。主要繊維がほぼすべて上昇する中で、割安感が目立つ。
 一方、他製品から綿糸への需要シフトは小さく、需給環境に大きな変化はみられない。「綿糸の代替品のポリエステルは中国が大増産しており、ナイロンなどに比べ需給が締まらず上げ幅が小さい」(合繊大手)ことや、「先進国では価格よりも品質重視が徹底しており、代替需要は発生しにくい」(日本紡績協会)からだ。
 日本の綿糸市場は中国への衣料などの生産シフトで規模は急速に縮小しているが、世界市場と同様に価格は安定している。国産綿糸(カード糸)の市中価格はほぼ横ばいが続く。「安定物価の優等生」(日本紡績協会)との指摘がある半面、価格差の縮小で「商売としての魅力が薄れている」(卸会社)との声も強くなっている。

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トウモロコシ、在庫率低下――07―08穀物年度、米農務省が予想。

2007/05/21 日経金融新聞

 米農務省が発表した世界農産物生産高予想(需給報告)によると、二〇〇七―〇八穀物年度(〇七年九月―〇八年八月)末のトウモロコシの米国の在庫率(総需要に対する在庫の割合)は七・六%と〇六―〇七年度末見込みより〇・五ポイント低下する。エタノール向け需要の拡大が見込まれるためで、適正とされる一〇%強を大きく下回る。
 作付面積が大幅に増えるため収穫量は伸びるが、自動車燃料となるエタノール向け需要も急拡大し、需要全体を大きく押し上げる。トウモロコシ需給の逼迫(ひっぱく)感は一段と強まる可能性が高い。
 他の穀物では大豆の在庫率も急低下する見通し。〇七―〇八年度末予想は一〇・五%で、〇六―〇七年度末比九・六ポイント下がる。トウモロコシの作付け増のあおりで大豆の作付面積が減り、供給が抑えられるためだ。
 在庫率の低下見通しは穀物相場には強材料。「今年が不作となれば需給は一段と逼迫し、上げ基調が強まる」(穀物商社のユニパックグレイン)との声が出ている。

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畜産株、飼料高騰でも主役――値上げで採算改善の見方(スクランブル)

2007/05/21 日経金融新聞

 「トウモロコシ価格は未踏の領域に突入した。そう簡単には下がらないだろう」
 米食肉加工最大手、タイソン・フーズのリチャード・ボンド最高経営責任者(CEO)は十七日に開いた投資家説明会で、飼料に使うトウモロコシの高騰を嘆いた。だが同社の株価は十六日に二二・四七ドルまで上げ、年初来高値を更新した。年初からの株価上昇率は四割近くに達する。
 ガソリン代替燃料のエタノール生産拡大をきっかけに、米株式市場で新たな主役が育ってきた。食肉加工を手がける畜産株だ。エタノール関連銘柄の元祖である米エタノール生産最大手、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランドの株価がこのところ調整するのとは対照的に人気を集めている。豚肉最大手の米スミスフィールドの株価も出直り始めた。

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 タイソンは一企業としては世界最大のトウモロコシの買い手。そのトウモロコシは米国製エタノールの主原料でもある。今年、米国ではトウモロコシの作付面積が戦後最大に拡大する。それでも盛りあがるエタノール向け需要を賄うには十分とはいえず、トウモロコシ価格は二月に一九九六年以来の水準まで上昇した。本来ならボンドCEOの言葉通り、タイソンは原料高騰に泣く銘柄と位置付けるのが自然。なのに投資家はタイソンに資金を投じる。
 その理由は、値上げで採算改善が進むとの見方が市場で増えているためだ。タイソンは二〇〇七年一―三月期に主力の牛肉部門の営業損益が黒字に転換した。平均販売価格が三%上昇し、飼料調達コストの増加分を吸収できた。鶏肉の販売価格も九%上がった。
 〇七年九月通期でも値上げの浸透にも手応えを感じており、予想一株利益を〇・六五―〇・九ドルと従来(〇・五―〇・八ドル)より引き上げた。
 小売店の店頭で値上がりし始めたのは牛肉に限らない。米農務省は四月下旬、品目別に公表している〇七年の食品の消費者物価指数(CPI)の予想を見直した。卵を従来予想比二―四ポイント高い一六―一七%上昇に引き上げたほか、値下がりするとみていた豚肉を「横ばいか一%上昇する」に修正。食品全体では二・五―三・五%上昇との予想を据え置いたものの、トウモロコシ高騰を震源地としたインフレの芽が膨らみつつあることに警戒感を強めている。
 畜産株が見直されるもう一つの理由は、カネ余りに支えられたヘッジファンドが国際商品投資を拡大する動きだ。シカゴに本拠を置くコール・アセット・マネジメントの試算によると、ヘッジファンドは既に約三百億ドル(三兆六千三百億円)を金、原油先物など国際商品を原資産とした金融派生商品(デリバティブ)やエネルギー、農業関連株に投資したもよう。これらの市場に焦点を絞って投資するファンドの数は三百ほどあり、投資残高は今年末には三百五十億ドルまで拡大する公算が大きいという。

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 農業関連ではシカゴ商品取引所に上場するトウモロコシや大豆の流動性が厚く、ファンドの短期売買も活発。トウモロコシは「五月上旬までに持ち高を手じまったファンドが今週に入ってまた買い持ちを増やしている」(シカゴ商取のトレーダー)。
 ところが牛肉、豚肉など畜産物はこれまで食品会社や商社など実需筋の利用が中心。穀物やエネルギーなどに比べ市場規模は格段に小さく、「突然のファンド資金の出入りに市場全体がほんろうされている」(米商品先物取引委員会)状態だ。畜産物の先物やオプションを上場するシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)も取引にかかる証拠金を引き上げるなどして混乱回避に努めてきた。マクロ的には、小規模の畜産物先物に流入しきれないマネーが畜産関連事業を手がける企業の株式に向かう構図も見える。
 輸入原油への依存度引き下げを狙うブッシュ政権は、エタノールの増産や利用を今後も奨励する方針。今のところ米国ではトウモロコシに代わる有力なエタノール原料がなく、食品価格への影響は広がる懸念が大きい。米国のインフレ懸念と金融政策の行方に関心が集まる中で、畜産株の動向からも目を離せない。
(シカゴ=毛利靖子)

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国際価格、大豆、2年10ヵ月ぶり高値――米の減産見通しで。

2007/05/19 日本経済新聞 朝刊

 大豆の国際価格が騰勢を強めている。今年の米国産の収穫が減少するとの見通しから買い付ける動きが広がっている。指標となるシカゴ商品取引所の期近価格は十七日、一ブッシェル七・九二七五ドルで引け、二〇〇四年七月十四日以来二年十カ月ぶりの高値を付けた。
 値上がりの背景にあるのは米国での減産見通し。米農務省が発表した〇七―〇八穀物年度(〇七年九月―〇八年八月)の世界農産物生産高予想によると、大豆生産量は二十七億四千五百万ブッシェルと前年度見込みより一四%減少する。
 自動車燃料となるエタノール向け需要拡大を背景に農家が積極的にトウモロコシの作付けを増やす一方、同じ農地で作る大豆の作付けを減らすためだ。

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太陽光など代替エネルギー、米銀、環境投融資を拡大――シティ、10年で6兆円。

2007/05/18 日本経済新聞 夕刊
成長分野に注力

 【ニューヨーク=財満大介】米大手金融機関が環境関連の大規模な投融資に乗り出す。最大手のシティグループが世界の代替エネルギー開発企業などに今後十年間で五百億ドル(約六兆円)を投融資するほか、バンク・オブ・アメリカも二百億ドルを投じる。原油高や温暖化対策を受け、代替エネルギー投資が急成長しているうえ、金融機関にも社会的に環境への取り組みが求められていることが背景にある。日欧の金融機関にも同様の動きが広がりそうだ。
 シティが明らかにした計画は、太陽光、風力、水力などの代替エネルギー関連企業に株式投資や融資の形で、資金を提供する。投資資金を調達したい企業の債券引き受けや、環境事業に投資したい投資家との仲介もする。個人顧客には太陽光発電システムを買うためのローンを提供したり、環境投資による資産運用の助言をしたりする。
 米銀二位のバンク・オブ・アメリカは、温暖化ガスの排出権取引や、ガス排出の多い老朽化設備を更新する企業向けに百八十億ドルを融資する。個人向けローンの販促にも二十億ドルを使う。
 大手投資銀行のゴールドマン・サックスは風力発電会社を傘下に収めたほか、環境企業の新規上場や債券発行を手掛けており、既に十億ドル超をこの分野に投資した。保険最大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)も環境専門の投資部門を置いた。
 米銀の投資が本格化した背景には、トウモロコシを原料とするエタノールの生産拡大など、代替エネルギーが成長分野となった点がある。民間団体の調査では、二〇〇六年の世界の代替エネルギー投資は七百九億ドルと前年比で約四割増えた。シティが環境関連の技術を持つ世界の八十社強を選び、一―三月の株価上昇率を算出したところ、主要な米株価指数を上回り、収益につながる状況が整ったとしている。
 環境への貢献を求める世論が金融機関に変化を迫った面もある。国連環境計画(UNEP)は昨年、機関投資家などが投資を決める際、環境面などに配慮するよう求める「責任投資原則」を定めた。年金基金なども含め日米欧などの二百近い法人が署名しており、環境分野への投融資は世界的に広がり始めている。
 ただ、一部の環境保護団体は「温暖化ガスを大量に排出している企業とも取引している」と批判。ビジネスと環境保護を同時に実現できるかどうか注目されている。

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環境と経済を考える――バイオ燃料は切り札か?新技術幅広く(社説)

2007/05/14 日本経済新聞 朝刊

 日本政府は六月にドイツで開かれる主要国首脳会議で地球温暖化防止に向け二〇五〇年までに世界の温暖化ガスの排出半減を提案する方針のようだ。その前に日本自体の排出半減目標も明示する必要がある。目指すべきは、二酸化炭素(CO2)の排出を可能な限り抑える低炭素社会だ。その実現のカギを握るのは技術革新である。つじつま合わせを優先して温暖化以外の問題に悪影響を及ぼすような技術に頼らず、より持続可能性の高い技術の開発を追求していくべきだ。

持続可能性こそ重要

 日本国内では四月下旬から、石油元売り各社がバイオ燃料をガソリンに混ぜて新たな自動車用燃料として売り始めた。バイオ燃料の成分はエタノールで、サトウキビや小麦、トウモロコシなどを発酵させてつくる。温暖化対策として注目され、話題になったが、持続可能性という点では大きな疑問符が付く。
 CO2を吸収した植物を原料にするわけだから、燃やしても大気のCO2増減は差し引きゼロになり、排出抑制に有効とされている。すでにブラジルなどで石油代替燃料として定着している。京都議定書から離脱した米国も十年間でガソリン消費量を二割減らす目標を掲げ、バイオ燃料の利用を広げる方針だ。
 ところが、いまのバイオ燃料は温暖化防止の優等生とは言い難い。自動車用燃料としてのエタノール需要拡大の期待は原料となる穀物や農作物の相場に影響を及ぼし、巡り巡って食糧価格の上昇も招いている。食糧の確保も世界の大きな問題であり、食糧となるべき穀物が燃料用に費やされるのは合理的ではない。
 現状のバイオ燃料は、持続可能な社会の技術としては未熟と言うべきだ。食糧と競合しない稲わらや建築廃材などの廃棄物から生産する、持続可能性の高いバイオ燃料の開発を推進すべきだろう。CO2排出を抑えるのだから、石油を使って生産地や遠隔地から輸送するのでなく、生産地の近隣で消費する「地産地消」も原則だ。育てるべき技術の芽、流通モデルはすでにある。
 バイオ燃料というだけでもてはやすのではなく、将来にわたって持続可能な技術かどうかの見極めがこれから重要になる。
 世界的に脚光を浴び始めているCO2の地中貯留にも、問題がある。地中貯留は、火力発電所から排出されるCO2を分離し地下の地層に封じ込める技術だ。ノルウェー企業が炭素税を逃れるため、天然ガスを生産する際に邪魔になるCO2を除去し、地中に戻したのをきっかけに開発された。CO2を大気中に放出しないので排出抑制技術として技術開発が活発になった。
 欧州では二〇一五年までに十二の実験プラント設置を計画、米国もプラントを計画し、日本でも新潟県長岡市で実験が進んでいる。二〇二〇年に温暖化ガス排出を一九九〇年比で二〇%削減する目標を掲げた欧州連合(EU)は、地中貯留を排出削減の手段に位置づけている。
 だが、この手法は排出されるCO2をとりあえず地中に押し込むだけだから、本当の意味での排出削減にならない。安全確認がおろそかだと閉じ込めたはずのCO2が噴出し、窒息事故を引き起こす危険にも留意すべきだろう。排出削減策に窮した現状での導入はやむを得ないにしても、永続的な排出抑制の手段にはなりえない。

開発促す仕組み作れ

 CO2を極力排出しないのが低炭素社会である。排出抑制では一つの技術が切り札になることはない。太陽光や風力といった自然エネルギー、原子力、省エネなど多様な技術を組み合わせるしかない。あらゆる分野で技術革新を促し、本道を外れぬ新技術がふつふつとわき出すようにする必要がある。
 経済産業省が管轄するエネルギー総合工学研究所は昨年、省資源、省エネ、排出抑制を考え今世紀中に実現すべき技術を列挙した報告書をまとめ、二十分野の技術戦略、開発の行程表を示した。日本は一次エネルギーの約八割を化石燃料に頼る。半減までのハードルは高いが、技術開発の方向ははっきりしている。
 政府は技術革新というと資金のばらまきに走りがちだが、重要なのは技術開発を刺激する仕組みである。バイオ燃料は石油危機、CO2の地中貯留は炭素税、ハイブリッド自動車は燃費改善と、経済的な理由が技術開発を後押しした。CO2排出抑制の技術開発も経済的な動機づけがあれば加速する。排出権取引など排出抑制が経済的価値につながる制度をなおざりにしては、技術革新は起きない。低炭素社会実現に向けまず取り組むべきは制度づくりである。

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主食トルティーヤ急騰で利上げ――景気減速感、中銀悩ます(世界の市場から)

2007/05/10 日経金融新聞
メキシコ、エタノール需要増の余波

 メキシコ中央銀行が四月末、約二年ぶりに金融引き締めに転じた。国民の主食、トルティーヤの値上がりをきっかけにインフレ懸念が強まっているためだ。米景気の減速が同国経済にも影響を及ぼし始めており、中銀は金融政策のかじ取りに頭を悩ませている。
 「予想外だ」(為替ディーラー)。中銀が月末の定例理事会で短期金利の指標である翌日物金利を従来より〇・二五ポイント高い七・二五%に高め誘導することを決めた四月二十七日、市場に衝撃が走った。
 「物価は再び落ち着きを取り戻しており、景気に減速感も見え始めている。金利は据え置き」。これが多くの市場関係者の読みだった。直前に発表された四月前半の消費者物価指数は三・九六%で、三月末時点の四・二一%に比べ〇・二五ポイント下がっていた。
 だがインフレ抑制を至上命題とする中銀の現状認識は違った。中銀のラモス・チーフエコノミストは会見で「現在のインフレ率は中銀の上限目標の四%を上回っており、様々なモノやサービスの価格が上昇する懸念が強まっている」と説明。利上げは「予防措置」であると強調した。

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 中銀は景気過熱に伴うインフレ懸念から、〇四年二月以降〇五年五月まで金利の高め誘導を繰り返し、翌日物金利は九・七五%まで上昇した。〇五年八月以降は物価の落ち着きとともに金融緩和に転じ、金利を七・〇%まで低め誘導した。市場では「〇七年は米景気の減速がメキシコ経済に波及するため、中銀は秋口から再び金融緩和を進める」との見方が支配的。そのシナリオを狂わせたのはトルティーヤ価格の高騰だ。
 トルティーヤの小売価格は昨年末から今年初めにかけて急騰し、一年前の倍以上になった。原料のトウモロコシの国際相場が米国のエタノール需要の拡大を見越して上昇したのが原因といわれているが、便乗値上げとの声も多い。
 トルティーヤ価格は政府が一月に小売業者に販売価格を一キロ八・五ペソ以下に抑えるよう要請したことなどを受け、上昇に歯止めがかかっている模様。だが政府は、四月に再び業者に対し価格の据え置きを要請するなど、警戒を解いていない。
 中銀はインフレを警戒する一方、景気減速にも目配りする必要に迫られている。中銀は四月三十日、今年の経済成長見通しを従来の三・二五―三・七五%から三・〇―三・五%に下方修正した。米景気減速による乗用車などの輸出の落ち込みが理由だ。対米輸出は輸出全体の九割を占める。

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 米景気減速の影響は輸出だけにとどまらない。米国では不法移民を含めた多くのメキシコ人が働き、母国に多額の送金をしている。そうした送金はメキシコにとって石油に次ぐ第二の外貨獲得源。ところが米メディアによると、送金額が最近、減少しているという。米国の住宅市場の冷え込みで建設現場の仕事が減っていることなどが原因だ。
 市場では中銀が追加利上げをするとの観測も出ている。だが景気減速懸念が出始めた中での一段の金融引き締めは、景気が一気に失速する危険性をはらんでいる。中銀はインフレを抑制しつつどう経済成長を維持するかという難題を突きつけられている。(ロサンゼルス=猪瀬聖)

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米ミシガン州立大学、葉や茎もエタノールに(海外ハイテクフラッシュ)

2007/05/09 日経産業新聞

 米ミシガン州立大学は、ガソリン代替燃料であるバイオエタノールの生産に適した新種のトウモロコシの栽培に成功し、特許を取得した。トウモロコシの粒の部分だけでなく、葉や茎からも同様にエタノールが生産できるという。
 葉や茎は繊維のセルロースを糖に分解してエタノールを作り出すのが難しく、コストもかさむため、現在はトウモロコシの粒から生産している。開発した新種は、セルロースなどを糖に分解する酵素を葉のなかに含むという。低コストで効率的にエタノールを生産できるようになると期待している。

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ビール各社に思わぬ敵?(ビジネスPlus)

2007/05/08 日経産業新聞

 世界が高値に注目するトウモロコシ。食糧需給表を見ると、穀物としての国内生産はゼロだ。最大輸出国の米国では全需要の2割弱を占める輸出とエタノール需要が肩を並べた。2017年までにエタノール生産を10倍に増やす政策を仮にトウモロコシで実現すると、エタノール向けで今の全需要を超す計算。輸出3位の中国も「近々輸入に転じ、輸出を増やせる国が見当たらない」(丸紅経済研究所)。
 ビール各社には缶原料のアルミ価格が高い中、コーンスターチや発泡酒・第三のビールに使うトウモロコシ由来の異性化糖の上昇がコスト増要因となる。キリンビールは缶比率が7割超とアサヒビールを11ポイント上回り、ビール類で発泡酒・第三のビールが今年6割弱を占める計画。大麦も1年で5割近く上昇、麦芽が多いビールが7割のアサヒに大きく響く。コスト増が促す販売強化で激突が激しくなる。

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シカゴ大豆の建玉増加――トウモロコシからシフト(データ検分)

2007/05/01 日経金融新聞

 シカゴ商品取引所の大豆で、資金の流入の度合いを示す建玉(未決済残高)が漸増している。十七日時点の建玉は四十八万二千九百五十六枚(枚は最低取引単位)と年初比二一・二%増えた。その間にトウモロコシと小麦がそれぞれ三・四%、一七・四%減少しているのとは対照的だ。
 大豆の建玉増の背景には、トウモロコシ市場からの資金流入がある。昨年秋からトウモロコシはエタノール向け需要拡大を背景に価格が高騰してきた。二月下旬から軟調なものの、なお高値水準にある。一方で大豆は値上がりペースが遅く割安感が強まったため、ファンドなど大口投機筋がトウモロコシから大豆に資金を移している。
 ただ、割安感だけで買い進むのが難しい事情もある。世界最大の生産地域である南米の大幅増産を背景に、世界的に需給が緩和しているためだ。「最近の大豆市場は強弱材料が入り交じっているのが特徴」(穀物商社のユニパックグレイン)という。

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排出量見積もり研究進む――バイオ燃料のCO2量、ガソリン超える場合も。

2007/04/30 日本経済新聞 朝刊
削減効果見極め必要

 温暖化防止に役立つとされるガソリン代替燃料、バイオエタノールの二酸化炭素(CO2)排出量を正確に見積もる研究が進んできた。エタノールの製造から消費までの間に発生するCO2の量は基本的にガソリンより少ない。だが、原料の種類や生産効率によってはガソリンより排出が増える可能性もある。本格導入には排出削減効果を厳密に検証する必要がある。
 各国はバイオエタノールを有力なガソリン代替燃料と位置づけている。エタノールを燃焼したときにはCO2が発生するが、原料となる植物が生育段階で吸収した分をはき出すだけで大気中のCO2は増えも減りもしないと考えることを、京都議定書が認めている。
 実際にエタノールを原料から作って消費するまでの間に発生するCO2の量も、ガソリンに比べ基本的に少ないことが分かってきた。三菱総合研究所はブラジル産エタノールを日本で消費するまでのCO2排出を分析したところ、ガソリンが同じエネルギーを生み出すときの五分の一だった。熱量換算で一ギガ(ギガは十億)ジュール当たり十五・九キログラムのCO2排出となり、同八十キログラム弱のガソリンを大きく下回る。
 環境技術を調査分析するシステム技術研究所の試算では一般的なブラジル産エタノールなら生産や輸送に投入した化石燃料の六・七倍のエネルギーが得られる。これはガソリンとほぼ同値だ。

輸送・製造で排出

 システム技研の稲田雄二エネルギープロジェクト室長は「エタノールもガソリンも輸送や製造の際に化石燃料を消費するのでCO2を排出するが、燃料として消費したときの排出がゼロとなる分、エタノールのCO2削減効果は大きくなる」と指摘する。
 ただ、原料や生産効率によってはCO2の排出が増えかねない。産業技術総合研究所がサトウキビ由来のタイ産エタノールの排出量を分析したところ、古い生産設備を使用した場合などでは増加の可能性があるという。

原料で効率に差

 原料をトウモロコシにした場合、エネルギー効率は大きく落ちる。トウモロコシから作る米国産エタノールは、投入した燃料の一・三倍程度のエネルギーしか得られない。サトウキビに比べ生産工程が複雑で、トウモロコシの粉砕などにエネルギーを消費するからだ。トウモロコシのエタノールはガソリンよりCO2排出が多いとの見方もある。
 CO2削減の有効手段と期待されるバイオエタノールだが、「常にCO2削減につながるわけではない」(産総研の田原聖隆環境効率研究チーム長)。二十七日からは国内でもエタノールを含むガソリンの販売が始まったが、原料や生産効率なども考慮して削減効果を見極めることが大切だ。
 ▼バイオエタノール 植物が原料のガソリン代替燃料。植物を糖に分解し発酵させて作る。ブラジルではサトウキビ、米国ではトウモロコシ、欧州では小麦などを原料に使って実用化している。開発途上だが樹木や雑草を原料とするタイプもある。
 サトウキビは糖を取り出すのが容易なうえ、搾りかすをエタノール生産の際の燃料に使用でき、トウモロコシや小麦に比べエネルギー効率は高い。その分、生産工程でのCO2排出量は少ない。
 国内で販売が始まった「バイオガソリン」は少量のエタノール化合物をガソリンに混ぜたもので、欧州から輸入した。国内でエタノールを量産するのは難しく、当面は輸入に頼る見通し。

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排出量見積もり研究進む――食糧原料での生産に限界、樹木・雑草への転換に期待。

2007/04/30 日本経済新聞 朝刊

 現在、日本では自動車の構造的な対応が不十分なため、ガソリンにバイオエタノールを少量混ぜたタイプしか使えない。環境省によると、国内のガソリンが三%のエタノールを含む「E3」にすべて切り替わった場合、年間二百五十万トン強のCO2排出を削減できる。これは運輸部門の排出量の約一%に相当する。
 二〇〇八年からの五年間で一九九〇年比六%の温暖化ガス削減義務を負う日本にとって、エタノールは有望なCO2削減手段だ。地球温暖化の進展も見据え、政府は積極的に導入する考え。三〇年までに国内生産量をガソリン年間消費量の一割に相当する六百万キロリットルに引き上げる計画だ。
 世界的にも市場拡大は続きそうだ。米国は一七年までにガソリン消費量の二割削減を目指し、エタノールの使用を増やす方針。ただ自動車用燃料の原料にサトウキビのような食糧を使用することに途上国などから批判の声が上がっている。
 鳥取大学の簗瀬英司教授は「食糧を原料にしたエタノールの生産には限界がみえている」と語る。樹木や雑草など食糧以外の植物をエタノールに転換する研究が進んでいる。樹木や雑草なら食糧資源の乏しい日本でも調達できる。
 樹木や雑草はサトウキビやトウモロコシに比べ、生育段階で必要なエネルギーが少なくて済む。生産効率の向上が課題だが、エタノールを作り出す際の燃料も樹木から得られる見通しで、削減効果も高まると期待される。(生川暁)

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米トウモロコシ高騰、食品・農地価格、上昇に波及、エタノール需要増発端。

2007/04/25 日本経済新聞 朝刊
今後も強含みに

 【シカゴ=毛利靖子】米国のエタノール需要拡大に端を発したトウモロコシ価格の高騰が食品、農地価格に波及している。米農務省は今年の食品の消費者物価指数(CPI)の予想を上方修正、トウモロコシ作付面積拡大により米中西部の穀倉地帯の農地価格は二〇〇六年に一九七〇年代以来の上昇幅を記録した。今後も強含みで推移するとみられ、エネルギー政策の影響はなお広がりそうだ。
 トウモロコシ価格上昇のきっかけはブッシュ大統領が昨年打ち出したエネルギー政策。ガソリン消費を減らす狙いで代替燃料のエタノール利用を奨励したところ、エタノール原料のトウモロコシが急騰。シカゴ市場では二月下旬に一ブッシェル=四・三ドル台半ばと十年七カ月ぶりの高値をつけた。
 直接影響を受ける食品価格の上昇は速まっている。米農務省によると、〇七年の食品のCPIは前年比二・五―三・五%上昇する見込み。三月初旬の予想(同二―三%上昇)を一カ月で上方修正した。原料調達コスト増を理由にシリアル大手のケロッグが、コーンフレークや冷凍食品の価格を引き上げた。卵やパンも値上がりしている。

飼料も値上がり

 飼料代の増加の影響は食肉にも及び、牛肉の三月の卸売物価指数は前月比で四・一%上昇した。米畜産調査会社によると、食肉加工会社の原料調達コストは三%上昇する見込み。豚の飼料代増加分を値上げで取り戻すには、一五%減産が必要との試算もある。
 農地価格への影響も表面化している。シカゴ連銀によると、〇六年の米中西部五州(イリノイ、アイオワ、ウィスコンシン、インディアナ、ミシガン)の農地価格は前年比で九%上がった。トウモロコシとエタノール両方の生産が盛んな場所では昨年十―十二月に農地の値上がりが加速し、上げ幅が一三%に達した。

農地購入に融資

 トウモロコシの高値売却で現金収入が増えた農家が、より広い耕作地を求めて農地の購入に動いているため。エタノール生産は急増しているものの、ブッシュ政権の目標を大幅に下回る水準。燃料向けという新しい需要の出現でトウモロコシ価格は当面高値で推移するとみた金融機関は、穀物農家への貸し付けを増やしている。
 米農務省の主任エコノミスト、キース・コリンズ氏は「トウモロコシ高騰の影響が食肉価格などに反映されるのはこれからが本番ではないか」と懸念する。春先の降雪でトウモロコシの作付けが平年より遅れており「天候不順が長引くとさらに値上がりする余地がある」との指摘もある。
 米農家の今年のトウモロコシ作付面積は戦後最大となる見込み。

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バイオ燃料(2)セルロース――活用へ技術開発加速(環境キーワード)

2007/04/20 日経産業新聞

 バイオエタノールの原料にはサトウキビやトウモロコシなどを使うのが一般的だ。こうした作物に多く含まれる糖やデンプンを微生物の働きで発酵させて造る。基本的には酒と同じだ。ブラジルや米国では十分に原料を確保できるが、日本では困難。そこで注目されているのが木や草などの成分「セルロース」だ。
 セルロースは、食品ではないため世界の食糧危機を助長するとの批判を受けず、国内でも調達しやすい。ただセルロースに含まれる糖は自然界に存在する微生物ではうまく発酵させられず、効率的に生産するのが難しい。解決を目指し、技術開発が本格化している。
 地球環境産業技術研究機構と本田技術研究所は草のセルロースから高効率でエタノールを製造する微生物を開発した。大成建設などが出資するバイオエタノール・ジャパン・関西(大阪市)は一月、建築廃木材で生産するプラントを世界で初めて稼働させた。三井造船は四月から岡山県で稲わらやもみ殻など農業廃棄物を使った製造実験を始める。
 政府は二〇三〇年度までにガソリン消費量の一〇%にあたる六百万キロリットルを国産バイオ燃料で賄う方針を示し、二月末には工程表をまとめた。日本で量産するには、セルロースの活用は不可欠。ただ普及に向けては品質や製造コストなど、課題が山積している。

【表】エタノール原料となる主なバイオマス(生物資源)の日本での利用可能量と利用率
食品廃棄物 約2000万トン 肥・飼料への利用約20%、未利用約80%
農作物非食用部 約1400万トン 肥・飼料、家畜敷料への利用約30%、未利用約70%
建設廃木材 約470万トン 製紙原料、家畜敷料への利用約70%、未利用約30%

(注)2006年、バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議の「国産バイオ燃料の大幅な生産拡大」より

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エネルギー産業新時代――「未来の技術」離陸へ、バイオ燃料(マンスリー編集特集)

2007/04/20 日経産業新聞
「国産」拡大へ本腰

政府「2030年度に600万キロリットル」
 国産バイオ燃料の拡大に向け国も本腰を入れ始めた。代表的なのがガソリン代替でトウモロコシやサトウキビなどを原料にした「バイオエタノール」に、軽油代替で廃食油などからつくる「バイオディーゼル」。エネルギー安全保障などの観点から早くから生産に動いている米国やブラジルには及ばないが、国内での取り組みも熱を帯びてきた。
 政府は二月下旬、「国産バイオ燃料の大幅な生産拡大」と題した工程表を公表した。バイオ燃料の年間生産量は二〇〇五年度現在で約三十キロリットルにすぎないが、三〇年度に六百万キロリットルを生産できる可能性があると強調。ブラジルなどからの輸入価格と競合できる安価な燃料の開発・実用を目指す構えだ。
 工程表は技術開発や実証、施設整備にかかる期間を加味。現時点で使えるもの(規格外農産物、サトウキビ、建設廃材)、今後五年で技術開発するもの(稲わら、製材工場残材)、今後十年で技術開発するもの(林地残材、ゲノム情報を利用した新品種)と原料の範囲を広げていくとした。
 国と呼応するように民間の動きも活発になり始めた。行政や大学と連携したプロジェクトなども進んできた。例えばアサヒビールは沖縄県伊江村で地元サトウキビを使ったエタノールの生産に参画している。
 大成建設や丸紅などが出資するバイオエタノール・ジャパン・関西が今年一月に堺市で廃木材を原料にエタノール生産を開始。廃木材からの商用生産は世界初だ。米国やブラジルに比べ大量の資源作物の収穫を期待するのが難しい日本では、廃木材のように穀物以外の原料を活用することは重要な課題だ。
 穀物に比べ生産効率が低いとの見方もあり、様々な業種を巻き込んでの技術開発が欠かせないだろう。三井造船は岡山県真庭市で針葉樹の端材からエタノールを生産し自動車燃料に使う実証実験に参加。今年度からはさらに同県と稲わらやもみ殻などからつくる試験にも乗り出す。新日鉄エンジニアリングは北九州市で食品廃棄物を活用する実験を進行中だ。官民の取り組みがこれから本番となる日本にとって、道のりは決して平たんではない。企業や大学などの技術力をさらに結集するための工夫も欠かせないだろう。

【表】国産バイオ燃料の生産可能量

(単位:キロリットル。農林水産省試算)
2030年度の生産可能量
原料 エタノール換算 原油換算
糖・でんぷん質(食料生産過程の副産物、規格外農産物など) 5万 3万
草本系(稲わらなど) 180万―200万 110万―120万
資源作物 200万―220万 120万―130万
木質系 200万―220万 120万―130万
バイオディーゼル燃料 10万―20万 6万―12万
合計 600万 360万
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登場バイオ燃料(下)直接混合か化合物利用、日本では大半が輸入(Q&A)

2007/04/18 日本経済新聞 朝刊

 Q バイオ燃料を採用する国はどのくらいあるのか。

 A バイオエタノールをガソリンに混ぜた燃料は世界各国で導入が始まっている。消費量が多いのは米国とブラジル。いずれもガソリンに直接エタノールを混ぜて使う。
 ブラジルではエタノール一〇〇%の燃料も普及している。ガソリン専用車では使えないため、ガソリン、エタノール、その混合燃料のどれでも使える「フレックス車」が人気だ。新車登録の半分を占めている。
 中国やインドでも直接混合で利用が始まった。欧州主要国は日本の石油元売りと同じエタノール化合物のETBEをガソリンに混ぜている。ディーゼル車が普及する欧州では菜種油で作るディーゼル燃料もエタノール以上に生産されている。

 Q 国によって規格が違うのはなぜ。

 A ガソリンへの直接混合は製造に手間がかからず、大量のエタノールを混ぜやすい。ドイツやフランスなどがETBEを使っている。利用者は二つの規格を混ぜても使えるが、製造や保存方法が違う二規格の導入は流通業者などの設備負担が増す。直接混合では蒸発で光化学スモッグの原因物質が増え、水分が混入しガソリンと分離すると自動車部品の腐食につながるとの意見がある。一方でETBEは安全性の確認が必要との指摘もある。

 Q 日本はどこからバイオエタノールを調達するのか。

 A 〇五年の国内生産量は三十キロリットルのみ。必要量を全量国内で調達するのは難しい。石油元売りは今回ETBEを欧州から輸入したが、欧州の輸出余力もわずか。現状でエタノールを大量に輸出できるのはブラジルだけだ。七年後をメドにサトウキビの作付け面積を五割増やし、輸出をほぼ倍増する計画だ。

 Q 国内では大量に作れないのか。

 A 政府は北海道や沖縄で、地元産の農作物を使ってエタノールを製造、利用する研究を支援している。ただ、地元で使う量を作る程度。政府は二〇三〇年までに年間ガソリン消費の一割、六百万キロリットルを国産エタノールで賄う目標を掲げるが、国内の農地は限られている。現状ではコストも高く、課題は多い。

【表】海外でのバイオエタノールの利用

  混合率 主な原料
▼直接混合
米国 10%、85% トウモロコシ
ブラジル 20-25%、100% サトウキビ
中国 10% 小麦など
インド 5% サトウキビ
▼ETBE(エタノール化合物)
ドイツ 低率 ライ麦、小麦
スペイン 3―7% 小麦、大麦
フランス 6―7% 小麦、テンサイ
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バイオ燃料本格導入へ(下)生産性高い発酵菌注目(未来プロジェクト動く)

2007/04/18 日経産業新聞

 エタノールの生産性をどれだけ高めるか。鳥取大学の簗瀬英司教授は酵母とは異なる新たな発酵菌「ザイモバクター」に着目した。「セルロース系原料の分解から発酵まで、すべての工程をザイモバクターで処理する」。簗瀬教授はエタノール“一貫生産”プロセスの構築を目指している。
 米国では、ザイモモナスと呼ばれる発酵菌でエタノールを製造する研究が進む。ザイモモナスは酵母に比べ、三―五倍の発酵速度を持つ。ザイモバクターはザイモモナスよりも発酵スピードは劣るが、分解できる糖の種類が多いのが特徴だ。
 生産性を上げるためには少しでも多くの糖を利用することが重要。酵母を使う場合は基本的に木くずから得られる糖のうちグルコースだけを発酵させているが、遺伝子操作技術を用いて簗瀬教授が育種したザイモバクターを利用すれば、キシロースやマンノースといった糖もエタノールに転換できるという。
 簗瀬教授が次に着手したのが、ザイモバクターに、セルロースを糖に分解する能力を加えること。もともとザイモバクターは発酵菌なので、糖に分解する機能は持たない。セルロースを糖にする酵素の遺伝子を取り出し、ザイモバクターに組み込んだ。
 これにより、セルロースを構成するオリゴ糖をグルコースに分解する能力が加わった。「発酵速度を上げるなど、まだ課題はある」(簗瀬教授)が、ザイモバクターを活用したエタノール一貫生産プロセスは一歩ずつ完成に近付いている。分解・発酵を一つの段階で処理することで、一リットル当たりのエタノールの製造コストを四十円以下に抑える算段だ。
 セルロース系原料からエタノールを作り出す手法に、現時点で絶対の解はない。糖への分解から発酵まで様々な研究が進む。資源に恵まれない日本にとっては、技術の蓄積こそが頼みの綱だ。
 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する「バイオマスエネルギー高効率転換技術開発」プロジェクトでは、荒漠地での植林をエタノールの原料供給に結びつける研究も実施した。NEDOの三浦俊泰主任研究員は、「多様なアプローチがいずれエタノールの普及につながる」と期待を込める。
 鳥取大の簗瀬教授がエタノールの研究を始めたのは、今から二十年以上も前。石油危機で世界的に燃料確保への関心が高まっていたころだ。不安定な国際情勢、高止まりする原油価格、世界規模で影響が広がる地球温暖化――。エタノール研究に寄せられる期待はこれまでになく高い。
こう見る
セルロースの分解が課題に
 米国ではエタノール向けに使用するトウモロコシの需要が過去五年で三倍に膨らみ、食糧との競合が懸念され始めた。国際取引の指標となるトウモロコシの価格は昨秋から高騰、十年ぶりの高値をつけた。ブラジルではサトウキビ由来のエタノールの消費が増えるとの観測が強まり、砂糖の価格も二十五年ぶりの高水準に達した。
 食糧を原料にしたエタノール生産には限界が見えている。ブッシュ米大統領は今春のブラジル訪問の際、ルラ大統領と会談し、セルロースをエタノールに転換する技術を共同開発することで合意した。食糧以外の植物からエタノールを作る研究は世界的な流れだ。
 ただ、本格普及には壁も多い。技術的にはセルロースの分解が課題になる。堅いセルロースから、いかに低コストで環境に影響を与えずに糖を取り出すか。技術が確立したとしても、量産体制の構築や自動車燃料として一般的に使用できるまでの環境整備には曲折が予想される。“国産燃料”実現に向け、これからが勝負になる。
(生川暁)

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バイオ燃料本格導入へ(上)発酵の伝統技術を応用(未来プロジェクト動く)

2007/04/17 日経産業新聞

 世界で急速に導入が進むガソリン代替燃料のバイオエタノール。二〇三〇年に六百万キロリットルの生産を計画する日本でも様々な試みが始まっている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は〇一年度に始めた「バイオマスエネルギー高効率転換技術開発」プロジェクトで、エタノール普及のために長期の視野に立った先導的な技術開発に力を入れている。
 「数年内にエタノールを日本に普及させるのは現実的とは言い難い。見据えるのは二〇三〇年」。NEDOの三浦俊泰主任研究員は構想を語る。
 豊富な食糧資源に恵まれる米国やブラジルとは異なり、日本でトウモロコシやサトウキビを原料にエタノールを普及させるのは困難だ。稲わらや木くずなど、セルロース系原料を利用したエタノールの導入を目指すことになる。
 セルロース系エタノールを製造するには、セルロースなどの繊維を糖に分解し、酵母を使って発酵させる行程が必要。だが、堅い組織を持つ木くずから製造する技術は一朝一夕では開発できない。
 「分解から発酵まで、すべての製造工程をバイオで賄う。余分な副産物などは一切出さない」。神戸大学の近藤昭彦教授はNEDOのプロジェクトの一環として京都大学などと共同で、“ゼロエミッション(ごみゼロ)”のエタノール製造プロセスの開発に挑む。
 目をつけたのが、みそや日本酒を造る日本の伝統な発酵技術だ。研究チームには酒造会社の月桂冠も名を連ねる。NEDOのプロジェクトで得られた〇六年度までの成果の目玉といえるのが「スーパー麹(こうじ)菌」と「スーパー酵母」の作製だ。
 みそなどを作るときに使う麹菌は、そのままではセルロースを分解しない。研究チームは遺伝子を操作して特殊な麹菌を作ることに成功した。糖にまで完全に分解するわけではないが、一歩手前のオリゴ糖などに“分断”できる。
 次に、セルロースを分解する酵素をまとったスーパー酵母が、オリゴ糖を取り込んで発酵させ、エタノールを作り出す。従来技術で使用していた硫酸などは一切使わず、廃棄物も出さない。セルロースとともに植物を構成するリグニンも、フェノール化合物に分解して医薬品原料などに使用できるという。
 固体のまま発酵する点も、製造工程で必要とするエネルギーの削減を図るうえで重要だ。従来は糖にした液体を発酵させていた。水分を含むので、エタノールを取り出す際に余分なエネルギーを消費する欠点があった。スーパー麹菌とスーパー酵母を使って固体のまま発酵すれば、省エネにつながるとみている。
 原油高がエタノールへの関心を一気に高めたように、せっかく作ってもガソリンより価格が高くなるようでは普及はおぼつかない。温暖化ガス削減の有効な手段とされるエタノールが、製造工程で大量のエネルギーを消費するわけにはいかない。エタノール製造には環境負荷とコストの低減が不可欠になる。
 近藤教授らが進めるのは、環境にもコストにも配慮したエタノール製造プロセス。だがスーパー酵母とスーパー麹菌は「あくまでまだ原型段階」(近藤教授)。日本の伝統技術を活用した研究は花開くか。二〇三〇年を見据えた挑戦が続く。

【表】NEDOのプロジェクトの概要

名称 バイオマスエネルギー高効率転換技術開発
期間 2001―10年度
参加機関 神戸大学、京都大学、大阪大学、月桂冠、鳥取大学、森林総合研究所など
研究費 10.5億円(06年度)
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特集――キーワード(世界を語る)

2007/04/14 日本経済新聞 朝刊

■エタノールブーム ブッシュ大統領が2006年1月の一般教書演説で「石油依存症からの脱却」を掲げ、ガソリンに代わる燃料としてエタノールの拡大を表明したのがきっかけ。コーンベルトと呼ばれる中西部の穀倉地帯で生産工場の新設が相次ぎ、トウモロコシの作付けは米農務省の07年予想で63年ぶりの高水準に達する=写真はトウモロコシ畑に隣接するエタノール工場、AP。
■食糧安全保障 食糧の安定供給を確保すること。日本の「コメ」のように各国は自国の生産農家を守ろうとするため、食糧安保は自由貿易協定(FTA)の争点になりやすい。輸出国の米国ではトウモロコシの生産の急拡大による他の穀物の縮小や、エタノール向けの需要増に伴うトウモロコシ相場の高騰を問題視する空気が強まっている。
■プラグ式ハイブリッド車 燃料と電気を組み合わせて走るハイブリッド車のうち、外部からの充電機能を強化し、電気のみでの走行を優先する車=写真は説明を受けるブッシュ米大統領(左)、ロイター。コンセントに差し込む方式で家庭用の電源を使う。料金が安い夜間電力の利用を見込む。
■風力発電 風の力によって発電機を回し、二酸化炭素(CO2)などの温暖化ガスの排出を抑える発電方法。夜間でも発電でき、送電コストが少なくて済むため世界的に普及している。一方で時間帯や季節による風速の違いで出力が変わりやすい弱点がある。最近は施設が大型化する傾向にあり、用地の確保や景観への影響を懸念する声もある。
■環境税 温暖化ガスの排出など環境に負荷をかける行為に対しては税の負担を大きくし、逆に環境対策に貢献すれば軽くする税の仕組み。税制を通じて環境保全の取り組みを促す経済政策で、税収を環境対策の事業に回せる効果も見込める。日本ではガソリンやガスなどの化石燃料に課税する方式で環境省が創設を要望してきたが、経済界の反発もあり検討段階にとどまっている。
 生態系の破壊や健康への脅威、急激な人口増への対応も含めたブラウン氏の見解の全容を知るには「プランB2.0」が最適だ。温暖化に警鐘を鳴らす米国の前副大統領アル・ゴアの「不都合な真実」は映画とともにポピュラーな内容。澤昭裕・関総一郎編著の「地球温暖化問題の再検証」はポスト京都議定書の交渉に日本がどう臨むべきかを示す。「環境税とは何か」(石弘光)は環境税のテキストとして読み通せる。

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バイオ燃料、国産化めざす――ガソリン代わり、農業の振興にも(ニュース入門)

2007/04/08 日本経済新聞 朝刊

 地球温暖化対策として、サトウキビなどからつくるバイオ燃料が注目されています。どんな燃料ですか。日本でも生産を増やそうとしているそうですが、なぜ国産化をめざすのですか。

ステップ1・そもそもは

ガソリン代わり
 バイオ(bio)は生物や生命という意味の英語で、バイオ燃料とは生物資源を原料にしてつくる燃料のことです。サトウキビやトウモロコシなどから作るエタノール(アルコールの一種)が代表例です。木材や小麦、稲、家畜のふん尿などからもつくれます。
 石油や石炭などは化石燃料といいます。その名のとおり、太古の植物などが長い年月をかけて地中で化石となったものです。バイオ燃料と化石燃料は自動車などの燃料になる点は同じですが、異なる点も多くあります。
 一つは、二酸化炭素(CO2)の排出についてです。バイオ燃料も、燃えるとCO2を出す点は化石燃料と同じです。しかし、地球温暖化の原因になるCO2などの排出を減らす国際的な取り決め「京都議定書」では「バイオ燃料はCO2排出量はゼロとみなす」と決まっています。というのは、原料である植物は育つ過程でCO2を吸収するので、差し引きゼロと考えられるからです。
 もう一つは、つくりやすさ(再生しやすいか否か)の違いです。化石燃料は人間の手で簡単につくり出せず、近い将来なくなるといわれています。一方のバイオ燃料は原料が植物なので短期間でつくれます。だからバイオ燃料は再生可能エネルギーともいわれます。
 地球温暖化への対策が緊急課題となるなかで、バイオ燃料は原子力と並んで新しいエネルギー源として期待を集めています。

ステップ2・どうして

農業の振興にも
 地球温暖化をくい止めるためにも、化石燃料の利用を抑えてバイオ燃料を普及させる必要があります。
 温暖化対策になるだけではありません。バイオ燃料の普及は資源のリサイクルにもつながります。バイオエタノールは家屋を壊したときなどに出る廃木材からもつくれるからです。
 世界を見わたすと、ブラジルや米国がたくさん生産しており、バイオエタノールをガソリンに混ぜて燃料にする自動車の普及も進んでいます。しかし日本はわずかしか生産しておらず、バイオ燃料に対応した自動車もまだ実験段階です。
 だからといって、日本も普及のためにバイオ燃料を大量に輸入すれば済む、というわけではありません。日本はすでに石油などのエネルギー源のほとんどを輸入に頼っています。このままではバイオ燃料でも「持たざる国」になってしまいます。そこで政府は遅まきながら、輸入に頼らなくてもいいように国産化を進めようとしています。
 国産化は農業の振興にもつながります。食用以外の需要が増えるからです。人口が減って日本の胃袋は縮みつつあるなかで、農業界にとっても朗報といえるでしょう。

ステップ3・これからは

コストが課題に
 バイオエタノールの国内生産量は二〇〇五年時点でわずか三十キロリットルでした。政府は三〇年までに、国内のガソリン消費量の一割に当たる年間六百万キロリットルに増やすことを目指しています。
 農林水産省などは沖縄県伊江島などで生産から消費、流通までどのような問題点があるのか調べる実験を進めています。今年度は八十五億円の予算を計上して、民間による大型生産プラントの建設を助成することにもしています。また、環境省も大阪府堺市で大成建設などと協力して建設廃材からバイオエタノールを生産するプラントを稼働させています。
 ただし普及にはいくつもの課題もあります。一つは生産コストがかかる点です。バイオ燃料が一番効率よくつくれるサトウキビを原料にしても一リットル一四四円になり(農水省調べ)、ガソリン価格を上回ってしまいます。
 またサトウキビは気象の制約などもあって国内で生産を増やすのには限界があります。生産コストが低く日本の気象に合う品種を開発しなければなりません。
 海外では各国政府が普及のためにさまざまな施策を取っています。例えばブラジルではガソリンにバイオ燃料を二〇―二五%混ぜることを義務づけています。欧州などではバイオ燃料の税金を軽減している国もあります。日本も普及を促す制度を整えることが急務になっています。
(川口俊樹)

ここがポイント

日本総合研究所 創発戦略センター所長 井熊均氏
百年先を見据え 税制など整備を
 日本は環境先進国といわれていますが、バイオ燃料の分野では大きく遅れています。バイオエタノール生産の先進国であるブラジルとの競争に日本が勝てる見込みはありません。だから国産はやめろというのではなく、だからこそ税制や生産設備の建設補助といった政策支援が重要です。
 欧州連合(EU)は化石燃料がいずれなくなることを見越してバイオ燃料の導入を産業戦略として位置づけています。一方の日本は石油産業などとの衝突を恐れて将来を見通した戦略を打ち出せていません。
 廃木材などからの生産は、リサイクル技術が発達している日本に向いていると思います。日本は国土の六七%が森林。これまで重視してこなかった森林資源のバイオ燃料活用に、もっと力を入れるべきだと思います。担い手不足が深刻な林業の復活にもつながります。
 バイオ燃料に関する政府の対応は現状の調整に終始しているようです。百年後の姿を想像して五重塔を造った先人に倣い、将来を展望した政策が求められます。

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オレンジジュース、なぜ今値上げ?――原料高転嫁、生産増で遅れ(値段ミステリー)

2007/04/07 日経プラスワン

 小岩井乳業など飲料大手は五月以降、オレンジジュースの希望小売価格を一割ほど引き上げる。原料のオレンジ濃縮果汁が大幅に値上がりし、コストを吸収できなくなったためだ。原料の高騰が始まったのは約二年前で、米国などでは直後からジュースの店頭価格が上がった。日本で値上げへの動きが遅れた理由は、牛乳と関係がある。
 ジュースにするオレンジはブラジルと米フロリダ州が二大産地。ブラジルではエタノールになるサトウキビ生産を優先し、オレンジから転作が相次ぐ。フロリダ州では二〇〇四年のハリケーン以降、かんきつ類の病害が広がり生産は減少傾向にある。
 これに対して需要は中国や東欧などを中心に増えており、需給は世界的に引き締まっている。
 オレンジ濃縮果汁の国内商社卸値(飲料メーカーなどが買う価格)は現在一キロ四百五十―五百円程度と二年前の約二・五倍だ。一〇〇%ジュースは濃縮果汁を約六倍に薄めて作るため、一リットル当たりの原料費は八十円前後になる。容器代や人件費もかかるが、店頭では一本百円や百五十円程度の低価格で売られることが多い。
 ジュースは日本ミルクコミュニティなど乳業会社の生産量も多い。紙パック入りの一〇〇%ジュースは乳業四社でおよそ半分のシェアを握る。少子化などで牛乳の消費量が減るなか、乳業各社は売り上げを維持するためにジュースの生産を増やしている。これが乳業各社が値上げに踏み切りづらかった理由。牛乳の納品を増やそうと「宣伝の意味でジュースを安く納品する乳業メーカーもある」(大手乳業)という。
 スーパーなど小売店が強く抵抗したことも値上げを遅らせた。アサヒ飲料など飲料大手に加え、地方の中小乳業会社もひしめくなか、メーカーには「一社だけ値上げすれば、小売店が他社製品にくら替えする心配があった」(飲料大手)。
 各社は輸送費の削減などでコストを吸収し、リンゴやブドウといったほかの果汁飲料の利益でオレンジジュースの赤字を埋めてきた。だが、吸収余力は限界に近づいている。加えて原料の高値がしばらく続きそうだと判断し、今回値上げを打ち出した。
 原料果汁が過去二年で二・五倍程度に上がったのに対し、今回の値上げは一割前後にとどまる。メーカーにとっては「この程度の上げ幅では不十分」(飲料大手)といい、今後も売れ行きを見ながら値上げの機会を探る公算が大きい。

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バイオ燃料、市販へ発進――米・ブラジルは「安保」に狙い、日本、輸入頼み。

2007/04/05 日本経済新聞 朝刊
CO2削減に活用優先

 バイオ燃料はサトウキビやトウモロコシの生産国であるブラジルと米国で先行する。世界のバイオ燃料の約七割を生産する両国の狙いの第一は、石油代替を進めるエネルギー安全保障だ。日本は導入目標ありきの側面が強く、供給体制は大きく出遅れている。
 環境対策を急ぐ欧州は、菜種油などからつくる軽油代替のバイオディーゼルが普及。海外では原則、自国内の原料をもとにバイオ燃料の促進に取り組む。
 これに対し、石油業界が共同輸入する日本の手法は極めて異例。国内にはバイオ燃料を効率よく生産できるサトウキビなどが乏しい。このため、二〇一〇年度の導入目標五十万キロリットルのうち「国内生産は三・六万―四・六万キロリットルにとどまり、残りは輸入」との見方が多い。国内生産、輸入いずれもコスト高の構造だ。
 バイオエタノールの環境性能を疑問視する声もある。大手自動車メーカーの環境担当者は「発熱量が低いため、ガソリンへの混合量が多くなるにつれ燃費効率が落ちる恐れがある」と話す。海上輸送の際は重油消費によるCO2排出が避けられず、「生産地で消費しなければ環境面の利点は小さい」との指摘もある。
 「世界でバイオ燃料が普及するには、食料生産を圧迫しない(建設廃材などの)原料開発が不可欠」。環境保全研究の財団法人、地球環境産業技術研究機構の湯川英明・微生物研究グループリーダーはこう指摘する。

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バイオ燃料、抜本策にあらず?(環境力)

2007/04/03 日本経済新聞 朝刊

 地球温暖化を背景にバイオ燃料の争奪戦が激しくなってきた。米国はサトウキビを使ったエタノール利用で先行するブラジルに接近。欧州で普及するバイオディーゼル燃料の原料となるパーム油の産地インドネシアのユドヨノ大統領は「バイオ燃料を石油・ガスに次ぐ戦略産業に育成したい」と表明した。
 バイオ燃料の需要が温暖化を受けて増えているのは、原料となる植物が育つときに大気の二酸化炭素(CO2)を吸収し、一般的に燃焼時にCO2が出ても温室効果はゼロとみなされるためだ。一時急騰していた原油相場も、化石燃料の代替品に対する関心を高めた。
 ただ、原料の耕地を広げるため焼き畑や森林伐採が活発になり、全体としてCO2の削減につながらない懸念がある。また、本来の食料としての供給が足りなくなる可能性も否定できない。すでに穀物相場は上昇。バイオ燃料は過渡的なエネルギーとみられ、本格的な技術革新が求められている。(1面参照)

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トウモロコシ、国際価格が急落――米、作付意向面積、63年ぶり水準。

2007/04/03 日本経済新聞 朝刊

 トウモロコシの国際価格が急落している。指標のシカゴ商品取引所の相場(期近)は日本時間二日の時間外取引で一時一ブッシェル三・五四五ドルと一月九日以来の安値に落ち込んだ。
 米農務省が三月三十日、二〇〇七年の同国内での作付意向面積を前年比一五%増の九千四十五万エーカーと発表したことが下げ材料。一九四四年以来六十三年ぶりの高水準だ。同日のシカゴ相場は前日比〇・二ドルのストップ安を付けて三・七四五ドルで引けた。
 米国は世界最大のトウモロコシ生産国。エタノール向け需要が増えているため、作付面積の拡大を見込む声はあったものの、今回の発表は市場の予想を上回っていた。

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キューバ、バイオ燃料拡大で米批判(ダイジェスト)

2007/03/31 日本経済新聞 朝刊

 【サンパウロ=岩城聡】二十九日付のキューバ共産党機関紙「グランマ」は、バイオ燃料の利用拡大を推進する米国政府を批判するカストロ国家評議会議長(80)の論評を掲載した。昨年七月に腸内出血で手術を受け、弟のラウル氏(75)に一時的に権限を委譲後、議長の論評が掲載されるのは初めて。
 論評では「トウモロコシなどを使ったバイオ燃料の生産計画によって飢餓などが発生し、世界で三十億人以上の死者が出るだろう」などと指摘。エタノールやバイオディーゼルなどの燃料を使った自動車の利点を強調したブッシュ大統領の二十六日の演説について、米国の経済方針は食料を燃料に変えてしまうと批判した。

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木くずや雑草の繊維、全成分、エタノールに――ガソリン代替、食料流用回避へ。

2007/03/30 日本経済新聞 朝刊
セルロースの分解カギ

 バイオエタノールを巡っては、米ブッシュ大統領が一月、二〇一七年までにガソリン消費量の二割を代替する方針を打ち出した。日本政府も生産量を二〇三〇年に六百万キロリットルまで拡大する目標を掲げている。年間ガソリン消費量の一割に相当する量だ。温暖化対策の切り札として世界各国で利用の動きが広まっている。
 現在、世界のバイオエタノール生産はブラジルと米国が中心。両国とも年間約千五百万キロリットル超を生産しているが、原料にサトウキビやトウモロコシから得られるデンプンや糖を使う。自動車用燃料の原料に食料を使うことに、途上国などから疑問の声が上がっている。
 今後、バイオエタノールは食料にならない木くずや雑草、稲ワラや麦ワラなどが主流になることが確実。ただ、これらの植物は分解しにくいセルロースなどの繊維質が主成分で、ガソリン並みに生産コストを下げるには、この繊維成分をどれだけ効率良く分解してエタノールに変える技術開発が求められている。
 RITEと本田技研以外でも、三井造船が岡山県で複数種の糖を順番にえさとして食べる酵母を利用、木くずを原料にエタノールをつくる試みを進めている。

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米のガソリン消費削減目標、ビッグスリー協力表明、首脳が集まり大統領と会談。

2007/03/27 日本経済新聞 夕刊

 ブッシュ米大統領は二十六日、米自動車大手の三社(ビッグスリー)首脳とホワイトハウスで四十五分間会談した。大統領は今後十年で米国のガソリン消費を二割減らす目標に理解を求めたのに対し、三社首脳はそろって協力を表明。米国内で生産する自動車の半数を二〇一二年までに代替燃料で走る車にする考えを改めて示した。
 会談にはゼネラル・モーターズ(GM)のワゴナー会長、フォード・モーターのムラーリー社長兼最高経営責任者(CEO)、ダイムラークライスラーの北米部門、クライスラーのラソーダ社長が出席した。大統領は先週、カンザス州のGMとフォードの工場を訪れたばかり。会談では経営再建策や為替政策の突っ込んだやりとりはなかったとみられる。ただ、ホワイトハウスは従来よりも政府とビッグスリーの緊密な関係を積極的に印象づけようとしている。大統領は、現在米国で主流となっているトウモロコシ原料のエタノールだけでなく、木くずや草などを用いたバイオ燃料の研究開発を後押しする考えを強調した。
(ワシントン=藤井一明)

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ブラジル企業に三菱商事が出資、エタノール30年購入契約。

2007/03/27 日本経済新聞 朝刊

 三菱商事はサトウキビからエタノールを製造しているブラジルのサン・マルチーニョの子会社に一〇%出資し、同子会社が製造するエタノールを三十年間購入する長期契約を結んだ。契約年間購入量は、日本の年間エタノール総需要の約一五%に匹敵する規模。三菱商事は国内での需要増を見込み、大半を輸入に振り向ける。三菱商事が出資するのは、サンパウロ証券取引所に上場するサン社の子会社であるウジナ・ボア・ビスタ。出資額は約四億円。
 同子会社はブラジル中南部に、サトウキビを発酵させて最大時で年間二十八万六千キロリットルのエタノールを製造できる工場を二〇〇八年に稼働させる。三菱商事は生産量の三〇%を、焼酎など酒類用、食酢など食品用、医薬品など化学品用として購入する。三菱商事はサトウキビの生産農家まで把握した高品質のエタノールを安定的に調達できるようになる。
 米国と並ぶエタノール生産大国であるブラジルのエタノール製造会社に日本企業が出資するのは初めてという。

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シカゴ・トウモロコシ――エタノール需要で強基調(サーベイ)

2007/03/26 日経金融新聞

 シカゴ商品取引所のトウモロコシ相場が調整局面に入った。二月二十二日に期近が一ブッシェル四・三四五ドルと一九九六年七月以来ほぼ十年八カ月ぶりの高値を付けると反落、足元は四ドル前後の水準だ。ただ最大の生産国である米国で自動車燃料に使うエタノール向け需要が拡大している。市場には「相場は再び上昇局面に入る」(穀物商社)との見方が多い。
 米国ではトウモロコシの増産意欲が強く、供給は潤沢だ。米農務省が今月初めに発表した予想では、今年の作付面積は前年の一一%増となる八千七百万エーカーと「過去最大規模」(穀物商社)に達する。作付面積の拡大で生産量も一六%増える。
 供給が増えるにもかかわらず、市場には需給逼迫(ひっぱく)感が広がっている。エタノール向け需要が急拡大すると見られているためだ。
 米政府は石油資源の使用抑制を目指してエタノールの増産を奨励している。その原料がトウモロコシだ。二〇〇六―〇七穀物年度(〇六年九月―〇七年八月)にエタノール向けに消費されるトウモロコシは前年度比三四%増の二十一億五千万ブッシェル。拡大ペースは一段と速まり、〇七―〇八穀物年度は四九%増の三十二億ブッシ