2009年 ニュース
日刊自動車新聞5月13日(水)第10面 掲載記事
エコ的観察
欧州バイオDME調査団が来日視察
DME車の世界普及を推進
供給インフラの先進性評価
日欧の取り組み 勉強会で明らかに
欧州バイオDME(ジメチルエーテル)訪日調査団が来日、日本でDME自動車の普及を進めるDME自動車普及推進委員会関係者との意見交換や日本のDMEトラックの試乗、DME供給インフラの見学を行った。訪日調査団はいすゞ自動車が開発したDMEコモンレールディーゼルエンジンを搭載した「エルフ」に強い関心を示した。今後、日・EUのDME関係者により定期的な情報交換を行い、DME自動車の普及を進めることになる。
いすゞエルフに強い関心
DMEは、ディーゼル燃焼に適した合成気体燃料。天然ガスや石炭ガスなどを原料に合成するが、直接合成する方法や一度メタノールを合成し、そこからDMEに転化させる方法もある。日本は後者の方法でDMEを年間8万トン製造するDMEプラントが新潟県に設置され、昨年稼働した。
欧州では非化石燃料であるバイオマスガスを原料にDMEを合成し自動車燃料に利用するプロジェクトがEU、スウェーデン・エネルギー省と民間7社により昨年から始まった。植物由来のバイオマスガスが原料となるため、利用時に排出する二酸化炭素(CO2)は再び森林などで吸収されることで地域ごとのCO2排出量に加えなくてもよいとの各国間での取り決めがある。
訪日調査団はプロジェクトの関係者で、4月22~24日にかけて会議や施設見学を行った。国際DME協会のジャン―アラン・トーピー会長(トタルSAシニアマネージャー)なども加わっている。日本でDME自動車は実証的な走行実験が進んでおり、燃料を供給するインフラも数カ所作られている。
一行は茨城県つくば市、神奈川県川崎市、横浜市のDME充てん施設を見学するとともに、つくば市の産業技術総合研究所では小型トラック「エルフ」のDMEコモンレールディーゼル車を試乗した。
最終日には日・EU間の今後の協力関係について協議、さらに日本DME普及促進センターが主催した「欧州バイオDME勉強会」で、欧州プロジェクトの現状、取り組みを明らかにした。
欧は黒液で安定供給しガス化も
勉強会で講師となったのはボルボパワートレイン社環境対策プロジェクト部長のヘンリック・ランドール氏とケムレック社最高技術責任者のインヴァ・ランドール氏の兄弟で2008年から4年間のプロジェクトを明らかにした。
それによると、欧州バイオDMEプロジェクトはスウェーデンの製紙工場で発生する黒液(こくえき、木材パルプを製造するときに発生する液体)を原料にDME燃料を製造し、スウェーデン内4カ所のスタンドで供給し、大型トラックを走らせることを骨格にしている。12年までのプロジェクトで、ボルボ社製第3世代大型トラック(排気量13リットル)14台を走行させて実証的データを収集する。
黒液に目を向けたのは、供給安定性とガス化のしやすさのためだ。従来、黒液は製紙工場内の熱源用燃料として利用されてきた。それをガス化してDMEを合成、ディーゼル燃料として利用する。一方、工場内部の燃料としては低品質のバイオマスを都市部から回収し、利用するという二重の循環を考えている。
現在が従来の燃料変える時 さまざまな材料で検討
黒液DMEでCO2 10%削減
プロジェクトはプラント工場の詳細設計やDME自動車開発を進め、来年4月に運用を始める。将来的にスウェーデンで消費するディーゼル、ガソリンの20%を黒液由来のDMEに置き換え、CO2排出を最大10%削減することを目指す。
バイオマスはエタノール化や油脂分のエステル化(バイオディーゼル)での利用が進んでいるほか、ガス化したものをFT(フィッシャートロプシュ)合成でディーゼル化することなども考えられている。また、DME合成に関しても、木質系バイオから合成することも可能となっている。
こうしたいくつかのバイオマス利用の中でボルボのランドール部長は、エタノール、合成軽油、DMEの順に評価を高め、中でも黒液からのDMEに高い評価を与えていた。
また、会場からの「FT合成軽油なら現在の燃料供給インフラも利用できて、合理的ではないか」という質問に対するランドール部長の答えが印象的だった。「現在、これまで利用してきた燃料を見直し、変えねばならないという局面に差しかかっている。変えるためにいろいろなものを試して、検討すべきだ」などとした。自動車と自動車燃料との関係についての立ち位置が、明確になっていた。
欧州バイオDMEプロジェクトと日本のDME自動車普及推進委員会は、最終日の勉強会に先立ち、今後の協力関係について協議し、定期的な情報交換と共同してDME供給インフラや燃料品質の基準づくりに取り組み、ISOとして基準化を進めることを確認した。基準化に関わる充てん方法などの個別問題について相互の窓口を明確にしており定期的な情報交換は具体的に進められる模様だ。また、共同キャンペーンにも取り組むことにしており、今後両者の動きがDME自動車普及のカギになると見られる。